第10話 妖精族の村 リムラ

ラックと葵は 一瞬異次元の世界に

吸い込まれそうな・・・

不思議な感覚に陥っていた


「この遺跡は・・何だ・・・」


(僕は 今 とても大切な・・出会いをしたような・・)

ラックは しばらく震えが止まらなかった・・

しかし胸の内なる魂が優しく包まれ

これまで感じた事がない

勇気が湧いてくるような感覚があった


「葵ちゃん!

リムラ村は、初代巫女様によって

作られた村なんだね!」


「そうよ・・・今でこそ

寂れてしまい・・

廃村化が進んでしまったけれど・・


由緒正しい 妖精族の村なのよ!

今でこそ 妖精族の守護者はいなくなったけれど

昔はたくさん いたらしいのよ!


だから・・それだけに

この村で 起きた悲劇を思うと 

とても悲しくなってしまう・・

それに・・・」


葵は 何かを言いかけたが・・・

涙を拭いて 笑顔になった!


「ラック!私ね

いつか!この村に人々が戻ってきて 

以前のような活気あふれた村になる日が来る事を 

心から 願っているのよ!」



「葵ちゃん・・・

いつかそういう日が来るといいね!」


「ええ!!ラックも

神様に お祈りしてくれる?」


「祈るよ! 

約束するよ!葵ちゃん!

君の夢が叶うといいね!」


「ありがとう!ラック!」


ふたりは 笑顔で 頷きあった


□◆□◇◆


「葵ちゃん!

お腹空いてないかい?


君の為に母さんが

サンドイッチを作ってくれたんだよ!」


ラックは 葵の前に

手作りサンドイッチを差し出した


「えっ?サンドイッチ?

とても美味しそうね!

でも貰えないわ・・・」


葵は細身の体で 

12歳の女の子の成長段階より

ひとまわり小さいように思える


「どうして?」


「わたしの食事は朝と夕 

デムの実1個と決まっているの・・・」


「えっ!?

たったそれだけ?」

ラックはとても驚き身体を震わせた・・・


「そんなの あんまりだよ・・・」


ラックは毎食ご馳走とはいえないけど 

十分な食事が与えられており

葵がデムの実だけなんて信じられなかった・・・


「ラック 

せっかくのサンドイッチだけど 

気持ちだけで十分よ! 

本当にありがとう!」


葵の笑顔に

ラックは胸が締め付けられる・・思いになった


「葵ちゃん!そんなこと言わないで・・・

君の為にもってきたサンドイッチなんだ!

お願いだから食べてよ!」


ラックは必死だった!

自分の好意を受け取らない

葵に対しては同情しかないが・・・

そのような生活環境にいる葵 

親としての責任能力に欠くダンに対して

激しい怒りをおぼえて 仕方がなかった


はじめて葵にあった 

その日、作業小屋前で倒れ 

意識を失っていた葵・・・


エリーおばさんと父さんが

葵を必死に守ろうとしたが 

葵の意志は固く 


ダンとの生活を続けたいと願った

ラックはそのことがとても不思議であり 

理解ができなかった・・・


「葵ちゃん 

どうしてダンさんと 

生活を続けたいの?」


「えっ!?

どうしてって?

そんなの当たり前じゃない!

私の父さんなのよ!

一緒にいたいに決まってるじゃない!」


葵は真っ赤な顔をし 

どこかしら悲し気であった・・・

(何か事情があるような・・

やめよう・・これ以上葵を追い詰めたくない・・・)


ラックは、葵とダンの関係性は親子といより

雇人と奴隷のような

下働きという関係にしか・・・思えなかった


葵がダンとの関係を切ることを

拒む理由が 理解できなかった

(あの二人の間に何があったのだろうか?)


「ラック!

あなたが持ってきてくれたサンドイッチ 

半分づつなら・・・もらってもいい?」


「もちろんだよ!

君の為に 持ってきたものだから・・・」


葵がラックからサンドイッチを

受け取ろうした瞬間 

何と!ダンに発見されてしまった!


「葵 お前何やってんだ!

こっちへ 来い!!」


ラックから受け取ろうとした

サンドイッチは地に落ち 

ダンは無理やり葵の腕を掴むと

小屋の方へ 連れていかれてしまった・・・

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