ワンエピソード・人

伏義龍之介①

 これは、機神絡みの人間失踪事件が巷を騒がしていた頃のお話し。


 十四歳の、その少女は病み落ちしていた。

(みんな嫌いだ……学校も家族も何もかも嫌いだ……すべて消えてしまえばいい)

 夏休みが終わり、新学期がはじまったって、一ヶ月後に少女の不登校がはじまった。


 切っ掛けは些細な誤解からのイジメだった、小さな小グループから発生した少女に対する、嫌がらせは日を追って過激さを増していき。

 やがて、それはクラス中に広がった。

(どうして、誰も助けてくれないの? どうして……)

 池に落ちた小石から水の波紋が広がるように。

 まるで日頃のストレスを発散するゲームのように、気がつくと少女は 鬱憤うっぷんばらしの生け贄にさせられていた。

 嫌がらせを、やめてくれと頼んでもイジメの中心グループは、薄笑いを浮かべるだけで。

 更なる嫌がらせに発展していく。


 担任の教師も『この学校ではイジメはない』の学校の体面を気にして、取り合ってくれない。

 一度だけ、軽度のイジメ段階の時にクラスの委員長が、少女をかばってくれて『イジメ問題をホームルームで』と提案してくれたコトがあった。

 でも、その委員長も次の日から学校に来なくなった。インターネットの裏学校SNSへの助けてくれた委員長に対する陰険な書き込み。

 少女は思った。

(学校で、自分を助けてくれる者は誰もいない……表でも裏でも)


 少女が不登校になる決定打は、朝投稿して自分の机の中に手を入れた時だった──机の中に入っていた異物に触れて、引っ張り出した時に少女は悲鳴を発した。

「きゃあぁっ!?」

 それは、干からびてミイラ化した子猫の死骸だった。

 それを見た瞬間、少女は教室を飛び出して──そのまま不登校になった。


 自分の部屋に、こもるようになって半年を過ぎた頃には、家族の少女に対する態度も変貌してきた。

 最初は心配もしてくれた家族も、やがて少女を厄介者として扱うようになった。

(どこにも、あたしの居場所はない……学校にも、家にも)

 引きこもった部屋の中で、朝から晩までインターネットの世界に没頭する少女──少女にとって今や電脳の世界が、現実だった。

(これが、あたしの現実……この狭い部屋が、あたしの世界)

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