ワンエピソード・地
奇ハ虫類将軍【レディ・ラミア】と土雲金華の母親
人類と機神軍との最終決戦が近づいていた頃。
【機神天國】奇ハ虫類将軍レディ・ラミアがいる巨大洞窟の巣窟──コブラ型の巨大機神、レディ・ラミアは全身が映る鏡面壁の前で、映る自分の機体に不満を感じていた。
洞窟内には壁や天井や床にレディ・ラミアの従者。
等身でトカゲ人間形態の機神【リザードマン】たちが群がっている。
鏡面壁に映る自分の姿を見ていた、ラミアが呟く。
「気に入らないわね」
鏡面にはラミアがアクセサリーとして機体に装着している本物の人体。
培養液で巨大化させた、金属の肩輪や腕輪で装飾された女の肩から先の両腕と。
肩から先の腕を外科処置で外され。両肩に肩当てのような金属加工をされ、さらに下腹部から先の両腿も外科処置され腰鎧を付けられ。
船首のフィギュアのようにラミアの頭部に装着されて飾られた女の体があった。
ラミアの機体に装着されている女の両腕は、生気を失い力無く垂れ下がり。
女の胴体も生気を失っていた。
「そろそろ、新しい装身具に交換の時期かしら」
ラミアは、巨大な処理機械がある場所に移動する。
機械アームが取り付けられた処理機械には、ラミアの人体腕が押し込める位置に二つの穴が開いていた。
ラミアは、まだ少しだけ動く方の腕で片方の腕を取り外すと、穴の中に放り込んだ。穴の中にある処理装置は生体だけを酵素で分解処理して。
金具は洗浄と消毒処理んをされて、またラミアがコレクションしている、人体装身具に装着されて再利用される。
「もう、この腕は生命活動限界ね……リザードマン」
従者のリザードマンが、処理機械の機械アームを操作して生体活動を停止した片腕と人体をレディ・ラミアの機体から、取り外して処理機械のボックスに放り込む。
蛇体になったレディ・ラミアは、コレクションルームに移動する。
コレクションルームには通路の両側に、ライトアップされた、ラミアの装身具コレクションが飾られていた。
ラミアは、あるコレクションの前で止まる。
「これがいいわね」
生命維持装着のケースの中には、巨大化培養された人間女性の両腕と、眠らされている女性の胴体があった。
リザードマンたちが機械アームを操作して、ラミアが気に入った。
新しい生体装身具を、蛇体に取りつける。
ラミアは新しい人間の腕を動かして、感触を確かめた。
「悪くない……さて、鏡面壁の前に移動して。絶望や狂乱する人間の姿を眺めるとしますか」
鏡面壁の前に移動したレディ・ラミアは静かに、新しい装身具の人間が目覚めるのを待った。
金属の防具を装着させられ
レディ・ラミアは装身具扱いされた人間が、自分の変貌した姿を見た時の反応を楽しむのが大好きだった。
(さあ、この人間はどんな反応を見せてくれる……絶望か、発狂か?)
装身具として目覚めた人間の女性──金華と岩斗の母親は、少しぼんやりしている頭で鏡面壁に映る、巨大な蛇体機神の姿を眺める。
金華と岩斗の母親の呟きが聞こえた。
「ここは? あたし、いったい?」
ラミアが、アクセサリー化した金華と岩斗の母親に言った。
「おまえは、一度死んだ……リザードマンが『機神天國』に運んできて、わたしのアクセサリーに作り替えた」
現状を理解できていない金華と岩斗の母親の、表情の変化を期待する奇ハ虫類将軍。
(さあ、恐怖と絶望に泣き叫べ)
だが、金華と岩斗の母親の反応は、レディ・ラミアも想定していなかった反応だった。
微笑んだ母親が言った。
「命を助けてくださったのですね……また、子供たちに会えます。ありがとうございます」
想定外の反応に困惑するレディ・ラミア。
(なんだ、この人間は? こんな反応をする人間は初めてだ?)
困惑するのと同時に、レディ・ラミアは金華と岩斗の母親に強い興味を覚えた。
こうして、他の機神たちには秘密の人間と機神の奇妙な共生がはじまった。
最初は、金華と岩斗の母親から少しでも人間社会の情報を入手する。程度の興味だったが──会話を重ねていくうちに、レディ・ラミアは人間の母性というものへ強い興味を抱くように変わってきた。
いつも、嬉しそうに我が子のコトを話す母親の表情に、ラミアは不思議な安らぎを覚えた。
「そうか、子供というのは。母親のおまえにとって、そんなに愛しく大切なモノか?」
「はい、事情があって子供とは別居別姓になってしまいましたが……元気でいるのなら、いつの日か抱き締めてあげたいです……なにもしてあげられなかった母親ですから」
「そうか、いつの日か金華と岩斗に会えるといいな」
そしてついに、人類と機神の最終決戦の日がやってきた。
奇ハ虫類将軍は、集結したリザードマンたちや。ハ虫類型機神の前で人間の片腕を挙げて機神軍の士気を鼓舞する。
「我ら機神に勝利を!」
「機神に勝利を!」
機神たちは次々と戦場『ハル・メギドの丘』を目指して出撃して行った。
~おわり~
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