お合いこよ!

紀之介

遠慮なくしても良いからね♪

「これ、クソ面白くないな」


 日曜日の午後。


 景冬君が、自室のソファーで呟きます。


「何でこんな映画、わざわざ借りてきたんだ?」


 隣に座っていた明夏さんは、目を合わせません。


「ちょっと、思う所があってね。」


「は!?」


「私だって 辛いんだから、お合いこよ!」


「─ 意味が解んないぞ」


----------


「ふぁ~」


 あまりの映画の退屈さに、欠伸を漏らす明夏さん。


 隣に座る景冬君が、横目で見ます。


「せめて手で隠せ」


「ねぇ」


「ん?」


「欠伸って、伝染るって言うじゃない?」


「まあな」


 明夏さんは、景冬君に顔を近づけました。


「したくなったら、あんたも遠慮なくしても良いからね♪」


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「ふぁぁああぁぁ~」


 ついに、大欠伸をする景冬君。


 間髪入れず 正面に回った明夏さんは、大きく開いた口に 自分の人差し指を突っ込みました。


 気配を感じた景冬君が、薄目を開けます。


(─ こいつは、何をしてるんだ?) 


 閉じそうになるのを口を、頑張って開けたままで保持。


(早く、指を引っ込めろ!)


 ニヤニヤするだけの明夏さんは、一向に指を引っ込める気配がありません。


(何でこいつは、指を引っ込めないんだ!!)


----------


「うー」


 暫く続いたにらみ合いで 根負けした明夏さんは、渋々 指を引っ込めました。


「─ 何で、口を閉じないかな」


 顔の下部の強張りをどうにかしようと、指で揉み始める景冬君。


「どうして、お前の汚い指を、俺が咥えないといけないんだ?」


「私の指より、あんたの口の中の方が汚いと思うけど」


「じゃあ、そんな所に 指なんか突っ込むなよ」


 明夏さんが、頬を膨らまします。


「次は、不意を付いて咥えさせてやる。」


「咥えて欲しがる指は、自分の口にいれろよ」


「それだと、『何で人の指を噛むのよ!』って 文句が言えないでしょ!?」


 膨らまされた明夏さんの頬を、景冬君が指でつつきます。


「今度口の中に指が入って来たら、容赦なく噛み切るからな」


「や・ば・ん・じ・ん。」


「人の口に勝手に指を入れる奴に、言われたくない!」

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