第16話 携帯ゲーム機ってなんですか? 2
「そして、時は動き出す......」
また何やら美空先輩は変な言葉を履いた瞬間、杠先輩がハッとした表情で意識を戻した。
「ハッ!?」
そして美空先輩は自分の手柄のように、語り始めた。
「ふふふふひ、何を隠そう日向くんは、タイムスリップした人みたいにオタク知識が欠如しています!」
「な....なんですってーーーー!!」
え、なんかすごい息がぴったりな気がする。正直、着いていけない。
「さすがのこの学園でも、モヌハンやったこと、もしくは知ってる子の方が多いわよ!?」
「なので、教えてるんです〜」
「あ、ありえないわ......。あんた今まで何を楽しみに生きてきたのよ!?」
すごい言われようだと思う。でもまぁ、確かにゲームとかラノベとか僕の知らない楽しそうなことが多いのは、確かだ。
「なので、ここで色々と教えて頂けたらなぁと思ってます。」
「は、はぁ?」
ぴくぴくと瞳を動かしながら杠先輩が、僕を見つめる。呆れ半分怒り半分と言った所だろうか。
「まぁまぁ華蓮ちゃん。逆に言えば初めて楽しいと思ったことを体験できるって素晴らしいことじゃないですか?」
「い、一理あるわね......。」
「それで、今日はどうしますか?日向くん」
美空先輩の助け舟で、やっと本題に入った気がする。そう、僕は色々と学びながら楽しいあの世界に入りたいから来たのだ。
でもなぁ。何がなにやらで分からないから、決めようが無い。何せこの部屋はありとあらゆる娯楽が詰め込まれた宝石箱だ。
「色々なものがありすぎて、どう決めたらいいかと思って......」
「それでは、ゲームなんてどうでしょう?」
「ゲームですか?」
そう言いながら美空先輩はゴソゴソと箱を物色しだした。そして何かを見つけたようで、テーブルの上に三つ出てきた。
「これは?」
「これはPAPっていうゲーム機ですね。」
「テレビに付けないタイプのゲームもあるんですね......!」
僕の言葉に杠先輩はまた何か言いたげだったけど、うん、ひとまずスルーしよう。
僕はテーブルの上のゲーム機に、細長いPAPと呼ばれたものを手に取る。少しスマホより重い感じがするけど、確かに色々なものボタンが付いてて、デパートでやったコントローラーみたい。
「なんで三つ出してるのよ」
「え、私と日向くん、それに華蓮ちゃんの分ですよ?」
「え、なんであたしまで」
「華蓮ちゃんがやってるネトゲ、いまアプデ中で出来ないですし」
「うぐっ。そういえば楓花も少しやってたわね......まぁいいわ。モヌハンの面白さを叩き込んであげる」
そう言いながら慣れた手つきで充電器を取り出し、手元のPAPを起動する杠先輩。僕も見習って充電器を付けて起動した。
ウィーンと音を鳴らして、ピコピコとした音の後、英語の文字が現れる。そのあと水が溜まったような映像の後、色々なアイコンが立ち並ぶ画面になった。
「な、なんかワクワクしてきますね」
「なかなかいい線してるじゃないあんた。あたしも初めてPAPを起動した時の感動は忘れられないわ」
「たまに聞きたくなりますよねぇ〜」
上機嫌な先輩達二人。そのまま後ろをパカッと開いてソフトを取り出すとモンスターと戦う戦士のパッケージから違うソフトを取り出した。
「はい、これあんたの分」
「あ、ありがとうございます。」
受け取り、先輩達と同じようにソフトを入れると、そこには『モヌハン2G』と書かれていた。
「2作品目からなんですか?」
「ややこしいからあれだけど、これはポータブル版では3作品目よ」
「え、そうなんですか?途中からやって大丈夫かな......」
「大丈夫よ。シリーズを通しての物語性はあまり気にしなくていいわ。あたしも2Gから入ったから」
そう言われ、僕は画面に目を落とす。オープニングが始まったようで、テントからピッケルで穴を掘ってるような映像が流れる。
僕は目を奪われていた。初めて見るような大自然の中を颯爽と走る主人公、可愛らしい犬のようなもの。
仲間と協力し、おどろおどろしい龍を討伐し、BGMが盛り上がりを見せたところで完成する鎧。
「うわぁ......すごい......」
正直に言って鳥肌が止まらなかった。今からこの世界を冒険するなんて、ワクワクが止まらない!
目を輝かせる僕に対して、杠先輩が優しく言葉をかけてくれる。
「鳥肌ものよね。ゲームって色々言われてるけど、その感動は全部自分のモノなのよ」
「ゲーム屋に行くわけが分かりました!」
「さっさと始めるわよー」
「えーと.....」
「丸ボタンがはい、バツボタンがいいえっていう感じですね。そのほかは実際に触って確かめていきましょう〜」
美空先輩が教えてくれた通り、僕はたどたどしく操作しながら、ゆっくりとボタンを押していく。
そのまま、何やらキャラクター画面に飛んだ。
男性と女性を選んでください?僕は迷わず男性にすると、今度はインナーの色を選べるらしい。
う〜ん。オレンジ色でいいや。あとはっと......。名前......か。うーん、あれローマ字しか打てないや。ピコピコピコ。
『Hinata』でよろしいですか?という文字が出てきたので、迷わず決定ボタンを押すと、何やら映像が流れ出した。
なんか雪山すんごく寒そう〜。そんな感想を考えていたら何やら大きな獣に襲われ、僕のキャラクターは雪山から崩れ落ちるように転落していった......。
「ってえええええええ!?!?!?!?!?」
「な、何よ?どうしたのよ!?」
「ど、どうしました!?日向くん!?」
「ぼ、僕のキャラが始まる前に死んじゃったんですが......?」
そんな泣きそうな僕のセリフに、杠先輩はあほらしいものを見る目を向けてきた。
「いや続きあるから......というかあんたまだそこ!?」
「私達は先に集会場で待ってますねぇ〜」
僕は再びゲームに目を落とすと、メッセージを読み進めていく。ふむ、雪山の下の村でお世話になっていて、そのお返しでクエストっていうお願い事をこなしていく感じか。
「とりあえず、自由に動けるようになりました......けど」
「じゃあ、お婆さんの後ろ辺りにある大きな建物に入ってきてくださいね。あ、部屋は1でお願いしますねー」
僕は言われた通りにすると、ロードの文字が表れ、酒場のような所に出てきた。
すると何やら女の人と男の人のキャラクターが、僕に手を振っていた。
『HUUKA』
『ORETUEEEEEEE!!!』
え、なんか怖いんですけど。
「あ、あの...この手振ってるの......って?」
「もちろん私と楓花よ」
「え、でも男ですよ?」
『HUUKA』は多分美空先輩だと思うんだけど、もう一人すごい強そうな名前の人は杠先輩...だよね?
「いやゲームじゃよくある話よ。いちいち驚いていたら身が持たないわよ?」
「は、はぁ」
「じゃあ適当にクエスト回すわよ」
色々と分からない事が多いけれど、今はゲームを全力で楽しもうと思う。
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