第13話 新キャラ参入ってなんですか?
様々な事が起きても、世界は何食わぬ顔で回るし、ぼくが初めての経験や体験を得ても、何も変わらない。
端的に言えば、学校がある。月曜日の朝、少し早めに家を出た僕はゆっくりと歩きながら、自分の教室のドアを開けた。
そこには数人の生徒と副委員長、それに桜雅くん。
「おう、日向おはよう。早いな今日は」
「おはよう、桜雅くん。桜雅くんこそ早くない?」
「おう、今度の視察の日程確認したくてな」
「視察?」
僕は席に鞄を置いて、桜雅くん達の方へと足を動かす。副委員長の橘恵さんはそれはもう呆れたように、それでも僕になんの事かを説明してくれる。
橘さんの面倒みの良さには頭が上がらない。
「先生が説明していたでしょう?来週二年生の教室に様子を見に行くのよ授業中。二年生と一緒に受けれる授業もあるし、どれにするか決めるってお話してたでしょう?」
あー僕には完全に関係ないと思ってスルーしてたけど、確かにそんな話し合ったかも。というかそのために紙回収しないといけないんだった。
我が王将院学園では、二年生と同じ授業を取れるっていう制度がある。もちろん数学や国語など重要な科目はないが、二年生の雰囲気を知る為や他に勉学やスポーツを伸ばしたいという意図もあるらしい。
それを体験して、自身の学校の授業を組みかえることも出来る。大学に進む人がほとんどのうちの学園の味とも言えると思う。
僕は指定された授業でいいや、とも思ってたけど美空先輩が取っている授業は是非とも取りたい。
「それで、日向はどうしたんだよ?」
「へ?」
「いやこんな朝早くに。しかも嬉しそうな顔して」
え、僕気が付かないうちにそんな顔してたのかな?
僕は得意げにポケットからスマホを取り出すと、桜雅くんの目の前に突き出した。
「僕もついにスマホデビューしたんだよ!」
「「「え!?」」」
僕の行動に少なからず桜雅くんは驚くと思ってたけど、橘さんもそれ以外の生徒も驚きに顔を染めていた。え、なんで?
「ど、どうしたの?」
「あ、あの日向が......」
「文明から1番と多いと思っていた日向くんが......」
「あの花影が......」
「み、みんな?」
プルプルと震えながら、みんな僕を見つめる。え、僕そんな立ち位置にいたの?驚くのもつかの間。
「やっとスマホデビューか!よかっ―おrrrrrrrrr」
「桜雅くんが吐いたー!?」
「良かったわね......日向く―オロロロロロロロロロロロ」
「橘さんまで!?」
「花影―オロロロロロオロロロロロロオロロ」
「ちょっちょっと!?」
「俺は普通に貰いゲロな―オロロロロロロロロ」
突然みんなして吐いてしまった。その後、続々と現れるクラスメイトが僕のスマホを見つけ吐き、吐いている人を見て吐き、またスマホを見て吐きの大惨事だった。
挙句の果てには担任に何かの感染病が流行ったのかと心配されたが、僕が事情を説明するとトイレに駆け込んで行った。
僕がスマホデビューしただけでなんでこうなるんだよ!!!
その後朝のホームルームは教室の掃除へと代わり、休み時間に僕の周りには人だかりができていた。
「なぁなぁ日向、Limeの追加してくれよ!」
「私も私も!」
「というかグループ作らね?」
「それいいね!」
瞬く間に話が進み、初めてグループというものに入れさせてもらった。
そのわいわいとしている中、桜雅くんからピコンメッセージが届いてくる。
『スマホ、おめ!これ気持ちな!』
その後に届いたプレゼントのようなもの。タップすると、何やらスタンプというものを手に入れた。
「え、桜雅くん申し訳ないよ!」
「いいんだ、受け取っとけ」
「え、でも高価なものなんじゃ......」
「ガキンチョの小遣いで全然買えるわ......」
そ、そうなんだ。一応試しにスタンプを押して送ってみると、桜雅くんは満足したみたいで僕の背中を叩く。
「え、何桜雅くんプレゼント送ったの?あたしもあたしもー」
「僕も」
「俺も」
「おいどんも送るでごわす」
え、最後の誰!?
「え、ちょ、え、みんな!」
続々に送られてくるプレゼントで僕のトーク画面は埋まっていく。あ、ありがたいんだけどいいのかなこんなに貰っても......。
「貰っとけって。みんなお前にスマホないこと結構気にしてたから。」
「そ、そうなんだ。みんなありが―オロロロロロロロロ」
「うわああああああ日向が感謝のキャパオーバーで吐いたああああああ」
いつにも増してうるさい僕達の教室からは、いつまでも笑い声が絶えなかった。
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今日の授業が終わり、僕は部室の前に足を運ぶ。色々なことがあったけれど、部室に入るのはこれで三度目だ。先輩にはきちんと連絡して、先に部室で待っているとの返信を受けた。
深呼吸を置いてから、胃液臭くないかなと、心配して自身の匂いを嗅いでからゆっくりと、部室のドアを開けようと僕は手を掛けた。
だが。
「?」
まるで鍵でも掛かっているように、ビクともしない扉にはてなマークを浮かべる。先輩先に待ってるって、言っていたけど何かの手違いかな?
そう考えていると、ドアの向こう側から声が聞こえた。
「ごめんごめん〜今開けるわー!」
甘くとろけるような可愛らしい高音の声色が響き、ガチャっと鍵が開けられる。そしてドアの向こうに居たのは、お人形のような半裸の少女の姿だった。
僕は無罪ですよ?
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