エンドロールは流さない

テイ

「そういえばしょうちゃん、私、彼氏できたから。もうこれまでみたいに二人で遊んだりできないと思う」

 三橋みつはし瑠香るかは、俺のベッドに寝転びながらそう言った。なんでもないことのように言うので、少し反応が遅れる。かれし、カレシって、なんだっけ? たっぷり十秒は考えたところで、ようやく頭の中に『彼氏』の二文字が浮かんだ。

 彼氏? 瑠香に? なんで?

「……え、マジ?」

 俺はベッドを背にして座っていたので、振り返りながらそう言う。瑠香は足をぱたぱたさせながらスマホを見ていた。肩より少し長く伸ばされた髪の毛が邪魔して、その表情は伺えない。

「うん。マジだよ」

「……そうか。いや、でもおかしくないか。お前に彼氏ができたってのは、俺たちが遊ばなくなる理由にはならないだろ」

 なるべく冷静に言ったつもりだったけど、焦りが伝わってしまったかもしれない。ベッドのシーツを握りしめ、俺は縋るように言った。どうかさっきの言葉を取り消してほしいと願いながら。

「なるよ。だって私は女で、正ちゃんは男の子なんだから」

 俺に目線さえ向けずに瑠香は言う。

 突き放すみたいな言い方が思いの外ショックで、俺はそれ以上何も言えなかった。

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