眩暈
Y.
第1話 眺望
日々生きていく中でふと将来を想像してぼうっとすることがある
自分の進路とか、いつ死ぬかとか、結婚はできるかとか、くだらないな。
高校二年の夏が終わった、気づいたら始まっていて気づいたら終わっていたのだ、
友達という友達はいないから必然的に外に出る理由はなく家に引きこもっていた
ひきこもりなりに何かしようといろいろなことに挑戦した、ブログ、小説、プログラミング、株、全部挫折した、成功している人はほんと一握りで自分がその一握りに入れる自信がなかった。
自分は生涯なにも残せずに、何となく進学し、何となく就活し、仕事終わりのビールを生きがいに生きていくのかと思うと虚しさで今にも死んでしまいたくなった、そんなことを考えながら今日も学校からの帰り道を歩いている。
移動するときはいつも米津玄師の音楽を聴いている、今日は「再上映」を聴く気分だった、彼の音楽は聴いていると不思議とその曲の主人公になった気分になれる、それがよかった、自分は何にもなれないから
帰り道の途中にあるいつもの交差点で信号待ちをしていると対岸に知的障害者らしき人がいた、最近外を出るとよく見かける姿だったからたまたま覚えていた
「あぁ、今日も見かけた」そう思って信号を渡り始めると自分の隣を歩いていたスーツの男がその人にすれ違い様に唾を吐きかけ「ぶつぶつ言いながら歩いてんじゃねえよ!」と怒鳴った
びっくりした、人の大きな声はずいぶん久しぶりに聞いたからだ
でもそれだけで何もできなかった、イライラしたサラリーマンはそのまま歩いてどこかへ消えてしまったしその人もうつむいたまま自分と反対向きに歩いて行った
私もそのまま歩いて進んだ、「何もできなかった。」あまりの虚しさに声が出た
あんな理不尽なことが目の前で起こったのに怖気づいて何もできなかった自分がひどく哀れに思えた、そんな一日だった。
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