嘘を吐くと爪が伸びる
野蛮人Q
遺書
夕陽がさす山の一角の木に一人の男が吊るされている。
足元には小さな脚立がコケていて、その横に男のものと思われるリュックが置かれている。吊るされた男は風に靡いている。
それをたまたま見かけた犬の散歩をしていた老人は腰を抜かすほど驚いたが、すぐさま警察と救急車を呼び吊るされた男をたまたまもうひとり来た若い男性と共に引きずり降ろす。
引きずり下ろした男性を、若い男と老人で心肺蘇生を試みている最中に救急車と警察が到着する。
そして、そのまま吊るされた男は救急車で搬送されていった。
警察の現場検証が行われ男のものと思われるリュックの中には財布と小さな紙が入っていた。
『初めまして、この紙を読んでいるということは警察の方でしょうか?自殺の後処理などというご迷惑をおかけして大変申し訳ございません。この件に関わってしまったことを大変残念だと思っていますが、ついでなのでもう一つ仕事していただけないでしょうか?
死人に口も耳もないのでお返事は聞けませんが、遺書を書いていますがここに持ってきておりません。その遺書を見つけていただきたい。そこに私が自殺した理由、私の半生を記したものがあります。
もし、遺書を取りに行ってくださるなら免許証の住所の2階に私の部屋があります。パソコンが置いてある机の右側にある引き出しの一番下にプラスチックの箱に4桁のナンバーロックが付いた南京錠があるともいますので、8931に合わせてもらうと鍵が開きます。
お手数ですがお願いします。
首吊り死体より 』
この紙を読んだ警官はすぐに遺書を取りに行った。
免許証に書かれた住所は山から10分ほどのところにあった。
チャイムを押すと50過ぎの男が出てきた。
警官は事情を説明すると男は非常に驚いた顔をして力が抜けたかのようにその場にへたり込んでしまった。
玄関先であったため、警官はへたりこんだ男を支え家の中に上がらせて貰い事情を改めて事情を説明し、自殺をはかった男の部屋に行き遺書を探した。
自殺をはかった男のリュックから出てきた紙に書いてあったように机の引き出しからプラスチックの箱があり、その中に遺書と書かれた封筒との1冊のノートが出てきた。
はじめまして
この遺書を読んでるのはどなたでしょうか?
私、野上 浩太と申します。
初めての遺書ですので、拙い事もあるでしょうがお許しください。
私は24歳で、大学4回生です。
私には秘密があります。
死体を見た方はお気づきでしょうが私の右人差し指の爪が長い事にお気づきだったと思います。
私は嘘を吐くと人差し指の爪が伸びるてしまいます。
ずっと隠して生きてきましたがさすがに限界でした。
初めて気づいた時は小学生の頃だったともいます。
小さい頃から人差し指の爪が長いなと思っていました。
ある日、宿題をせず先生に怒られた時に宿題をなくしたと嘘をついた時手を触っていた時に少し爪が伸びたようなことがきっかけで気が付きました。
色々条件を子供なりに調べてみて嘘を吐くと爪が伸びると気が付きました。
では、なんで嘘を吐いて爪が伸びるくらいで自殺までしているのかというのはこの遺書の下に置いているノートを読んでください。
できる限り詳しく書いたつもりです。
誰かに説明しても理解してもらえないだろうと思いますがノートに書いてあることは嘘偽りがないはずです。
だからと言って、誰かに信じてもらえる内容ではないと思います。
長々と書いていましたがすべてはノートに記しています。』
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