第二十一話 裏切りは蜜の味がする-3

『COMBの幹部だと!?』


 ハサミとフモウは思わず身構える。


「あらやだ。アタシは別にあなたたちと敵対するつもりはないのよ」


 しかし、ブレイドは両手を上げ、敵対の意思がないことを示す。

「どういうつもりだ?」

「話はあとにしましょう。またすぐにあのライオンが追ってくるわ」


 ブレイドはハサミたちに背を向けて歩き出した。


『どうするハサミ』

「どうするもこうするも、取り敢えずあの男についていくしかないな」


 ハサミとフモウはブレイドを追って生い茂る植物の中に飛び込んだ。


          × × ×


 ハサミとフモウは茂みを掻き分けて進んでいると、柵で囲まれた建物を見つける。


「ここに隠れましょう」


 ブレイドがそう言って開いている柵の扉から建物の内部に足を踏み入れる。

 電気の点いていない屋内には書類が乱雑に撒き散らされており、何かの研究施設であるということはハサミたちにも理解出来た。


「この建物は一体どういう研究をしていたんだ?」

「生物実験よ」


 ブレイドは後ろからついてくるハサミたちに振り返らず答える。


「さっきのライオンはこの研究施設でDURAを鬣に植え付けられて生まれたの」

「……つまり、ここで実験をしていたのはWIGか」

「ええ。WIGは動植物園を経営する裏で、動物のエクステンド化などを研究していたみたいよ。稀に人間の子供も実験台にしていたようだけどね」

「ふん。テロリストの言葉なんぞ簡単に信じると思うのか?」


 ハサミとブレイドが話していると、フモウは鼻を鳴らしてそっぽを向く。


「まあ、アタシは信じてもらいたいなんて思っていないけど、真実はそこにあるのよ?」


 ブレイドが指差した先には沢山のカブセルが並んでいた。

 カプセル内には様々な動物が浮かんでいる。


「…………何故、貴様らCOMBはこの動植物園を占拠した」

「COMBの悪事の証拠を世間に知らせるためよ。博物館に行ったローゲンも同じ理由だったわ。握り潰されない決定的な事実が必要だったのよ。でも、アタシはしくじったわ」

「何があったんだ?」

「アタシたちが動植物園を占拠したと同時にWIGの連中はアタシたちをこの動植物園に閉じ込めて、例のライオンを解き放ったのよ。そのせいでアタシ以外のCOMBは全滅して、アタシは動植物園から逃げられずにいたの」


 ハサミが足元に目を向けると、COMBの下っ端たちが無残な姿になって倒れていた。


『うっ……酷い有様だな……』

「ところで、あなたたちはこれからどうするつもり?」

「お前を捕まえてここから脱出するつもりだ」

「だとしたら、アタシと一時的に共闘しない? ここから出たいという目的は同じなのだから、単純な戦力の増強と思えばアタシを味方にする価値は充分にあると思うけど?」

「誰がテロリストなどと手を組むか!」

「フモウ、ここは手を組もう」


 フモウを遮ってハサミがブレイドの手を握る。

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