第十三話 百戦錬磨の悪鬼が如く-3
『うおっ、危ねえな!』
「くっ、バレていたのか……」
ハサミは間一髪で攻撃を避けてラセンたちに姿を現す。
「現れましたわね右左原ハサミ! 飛んで火にいる悪い虫ですわ!」
人差し指を立てて下っ端たちにハサミを包囲させるラセン。
「それを言うなら夏の虫だろ」
「間違ってはおりませんわ! だって、あなたはカミキリ様に付き纏う悪い虫ですもの!」
『「…………は?」』
ハサミと傾狼は同時に素っ頓狂な声を上げる。
「カミキリ様の特別はワタクシ一人だけでいいのですわ!」
「待て、お前は何を言っているんだ」
「カミキリ様、見ていてくださいませ! ワタクシがこの不良崩れからあなたを守て差し上げますわ!」
「こいつ、とんでもなくやべー奴だ」
『ハサミ! 俺様を投げろ!』
「……ああ」
ハサミが傾狼を投げると下っ端たちはアサルトライフルの引き金を引こうとする。
しかし、傾狼は円を描くようにハサミの周囲を飛んで、回転しながらの体当たりで下っ端たちを一掃する。
「DEATH! DEATH! DEATH! くたばるDEATHわ!」
そこへラセンが縦ロールをドリルに変化させて飛び掛かってくる。
「アニキ、シールドフォーム」
『ドリルだかなんだか知らないが、俺様を貫けると思うなよ!』
三度笠に変形した傾狼がドリル化した縦ロールを喰い止める。
「まずは逃げよう。今の状況は危険だ」
ハサミと傾狼は線路に飛び降りてトンネル内に逃げ込む。
「あっ、お待ちなさい! 敵前逃亡なんて許しませんわ!」
ハサミは駅の暗いトンネルの中を走っていたが、突如、トンネル内に地響きがして足を止めた。
『な、なんだァ?』
「地震か?」
「いいえ! ワタクシですわ!」
次の瞬間、トンネルの天井が崩壊してそこからラセンが飛び出してくる。
ハサミは三度笠を頭に被ってセニングダガーを構える。
「ワタクシのEXスタイルは【スパイラルホーン】! 縦ロールを硬化させて、どんな壁にも大きな風穴を開けてやりますわ!」
壁や天井から飛び出してくるラセンの突進をハサミは避け続けるが、ついに、彼はラセンに押し倒され、馬乗りになったラセンが二つの縦ロールドリルの先端をハサミの首に突き刺そうとする。
「あなたはワタクシとカミキリ様の間に立ちふさがる壁! でしたら、ワタクシは真実の愛を証明するためにあなたを貫いて見せるのですわ!」
ハサミは二本のセニングダガーでドリルを受け止めるが、セニングダガーでは抑えきることが出来ない。
「セニングダガーは硬化系のEXスタイルには弱い。せめて、メッシュブレードさえあればどうにかなるかもしれないが……」
「EXスタイルを失ったあなたではこれ以上、何も抵抗することは出来ないですわ!」
「……いや、抵抗だったら出来るさ。なあ、アニキ」
『応ッ!』
傾狼は三度笠から探検帽に姿を変える。
『喰らいやがれ! ストロボフラッシュ!』
ヘッドライトから瞬いた強烈な光が暗闇に慣れたラセンの目を焼く。
「ひぎいいいいいいいいいっ!」
ラセンは両目を手で覆って線路上に蹲る。
「地下鉄を占拠したのは暗闇による攻められにくさも理由の一つだったのだろうが裏目に出たな。ラセン・スパイラル、お前を逮捕する」
ハサミは動けないラセンに手錠を掛けた。
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