第22話 アイ

「事務所は全焼だな。あれじゃ、契約書を金庫に入れてたとしてもダメだろう」


闇金らしき男が号泣しているのが映る

契約書が焼失したんだ。あの男をこれ以上どうこうする必要はない


「あとは真凜の叔父か」

どんな理由があるにしろ、真凜から騙し取ったのはゆるせんな


「シュウ、確認がまだだよー?」

「んー?確認って?」

「真凜ちゃんのワキガだよー」

「そうですね。ちゃんと確認しないといけません」

フーコand沙織が確認、確認とうるさい


「確認っつてもなー。もう臭いがしないから大丈夫だろ」

あんだけ汗かいたのに、今臭ってこないんだ。治ったと考えて良いはず


「ちゃんと嗅げ〜っ」

「きゃっ?!」

フーコが真凜の背後に周り、両腕を持ち上げる

「ぷるん…か」

フーコに比べて、やや小ぶりの形の良いおっぱいが揺れた

「修様、ドコのチェックをされてます?」

沙織の視線が痛い


「修さん、…恥ずかしいので早くしてもらえますか?」

「すまん。ちゃっちゃとするよ」

確かに恥ずかしい格好だ。真凜が足をモジモジさせて恥ずかしがるのも分かる


"スンスン…"


「鼻息がくすぐったい…です」

「あ、ごめんごめん。だけど真凜、全然臭わないよ」

「本当ですかっ?!」

「ああ。本当だ。もうワキガじゃない」

「…ふぇぇぇん…」

泣いちゃったか。とても嬉しいんだろう


"スンスン…スンスン…スーハースーハー"


「みなさんの匂いが入り混じって…凄いことになってますよマスター」

しゃがんで俺の股間を嗅ぐ蜜葉


「「「………」」」


「そこは今まったく関係無いな! ほら見てみろ、3人とも赤面してるじゃないかっ」

あのフーコですら真っ赤になってんぞ


「おや。これは大変失礼しました」

3人にペコッと礼をする蜜葉。俺にはないの?


「蜜葉が謝るのは珍し…

          …何をしている?」

「マスターの大事な…いえ、私たちのとっても大事な所をお拭きしてるんですが?」

誰だって見れば拭いてるのが分かるよ!


「パンツで?」

「足元にありましたから。ちなみに私のですよ」

「普通はタオルだよな?」

「マスターですからね」


なに『貴方は特別よ❤︎』みたいな顔して言ってんの?!


「…シャワー浴びてくる」

拭いている手を掴んで離し、それでも食いついてくる蜜葉を躱し風呂へ向かう


「お伴します」

「いらん!」

「まあまあ、そう言わずに。みなさんも一緒にいかがですか?」

「狭くなるだろ!」

そりゃあ5人で入れないこともないが…


「じゃあ頭を洗ったげるー」

「私は背中を」

「でしたら私は腕と…胸かな?」

「当然私はチンコ一点…

「蜜葉、そこは俺がやる!」

お前には触らせん


「…なら足ですね」

「それならいいだろう」

特に問題は起きない…起こしようがないだろ。足なら大丈夫なはずだ



〜〜〜


「はい、目を瞑る〜」

「んー」

座らされた俺はフーコの言葉に従って目を瞑った


"ワシワシ、ワシワシ…ぷるんぷるん"


「なあ、近すぎないか?おっぱいが顔に当たってるんだけど」

近いというよりゼロ距離じゃないか?


「いかがですかお客さん?」

「…気持ちいいけどよー、シャンプーよりおっぱいを当てる方に力が入ってない?」

洗顔も兼ねてんの?

「サービス、サービス〜」

サービスねえ…


「気持ちいいなあ…」

フーコが頭を絶妙な指使いで洗う

「はいオッケー、流すよー」

シャワーで流される。うん、さっぱりしたな


「次は私ですね」

「あ、私も一緒に洗います」

沙織と真凜がスポンジを手に、自分の担当する場所を洗い始める


「背中って自分じゃしっかり洗えんからな。沙織とってもいいよ」

「ふふふ。そうですか」

「ああ。真凜はもう少し力を入れて。それじゃあ撫でてるだけだな」

「これくらいですか?」

「うん。上手い上手い」

挟まれて前と後ろを洗われる。ここは極楽と言っても良いかもしれない


「「流しますね」」


「ありがとう。気持ち良かったよ」


特に背中。垢がしっかり洗い落とされた感じがする。自分で洗うとこんな感じにはならないな。と、最後の1人と目が合った


「最後は私ですね」

「…きたか」

起こしようがないはず、起こしようが…


「待て待て待て待て! なんで足に跨ってんだお前?!」

右足に跨った蜜葉がゆっくり動く


「毛がないから、たわし洗いとは呼べませんね」

「それを聞いたんじゃない! なぜスポンジを使わないのかって聞いたんだよっ」

アホかテメーは!洗い方の名前を聞いたんじゃねーよ


「あら、気持ち良くないのですか?」

「ぐっ! …そりゃあ、気持ちいいけどよ」


「なら問題ないですね。でもマスター以上に私の方が気持ちいいと思ふぁぁ…❤︎」

ゆっくり動いていた蜜葉がビクッとした


「よーし、チェンジだ」


左足は真凜が洗ってくれた



☆☆☆



「じゃあ、一度戻って荷物を…と言っても、今日は着替えと貴重品ぐらいかな?それ持って事務所に行くよ」

「一旦解散ですね」

「私は終わってるから、真凜ちゃんを手伝うよー」

「早いなフーコ」

「もち。さおりんたちもね、殆ど済んでるよー」

「当然です」

「先走りすぎだろ」


「沙織様、迎えが来たようです」

「分かりました。では修様、また後で」

沙織にカギを手渡された。いい金属を使っているのか、ズッシリと重い

「ああ。また後でな」


沙織と蜜葉が真っ黒なセダンに乗り、帰っていった


「シュウ、またね」

「私も荷物持ったら、直ぐ向かいますから」

「おー。先に行って待ってるよ」

蜜葉が運転してきたワンボックスを、フーコの運転で真凜とマンションに向かう


「1人になったら静かだなあ…」


さっきまであんなに騒がしかったのが嘘の様に、部屋の中はシーンと静かになった


「そういや俺、アシが無いんですけど…」


タクシーを呼んで帰るか…



☆☆☆



「やっぱり俺が1番乗りになったな」

準備が殆ど済んでる沙織たちや、真凜を手伝いに行ったフーコたちより早く着いた

そこは男の俺とは違うのだろう。女性はいろいろと時間が掛かるもんだ


「えーと、カギを挿して…と」


やはりカギはこの差し込むタイプがいいな

最近はカードタイプやパネルタイプと近代的なモノもあるが…風情がない。


『もっと深く挿して下さい』


おおっ?! マジか?こりゃ凄い機能だ!

奥まで挿さないと注意されるのか。AI搭載型…かっちょいいぜ


「ごめんごめん。これでいいかな?」

きっちりと奥まで突っ込んで、AIに謝る。


『ふぐぅ…奥に当たってるぅー。気持ちいいけど、少し痛いです…』


「……なんで?」


ちょっとAIさん、意味が分かんないんだけど?


『…ダメねえ。これだから童貞ちゃんは。いくら奥までって言ってもね、限度があるのよ? 穴って敏感なんだから!』


「えーと…すみませんでした」


『分かればいいの。次からは気をつけてちょうだい』


「はい…」


次なんかあるわけないだろ! どうせフーコか蜜葉の悪戯だろ。沙織に言って外してもらうからな



「一階は吹き抜けのフロアか」

三階ぐらいまでくりぬいてるな。天井が高い


「あとはこれといってねーな」

左右にあるエレベーター。たぶん着く階が違うのだろう

どっちを使えば良いのか分からんし、俺の部屋が何階なのかも分からない。

いま乗る必要はないな


「んー。俺の部屋は何階か聞いとけばよかったな」

とは言ったものの、せっかくだ。探検がてら一階、二階と上にあがってみるのも悪くない


『10階ですよ』

「あっ、こりゃどーも」

……

「さっきのAIかっ?!」

周りに人の姿は無い。玄関で聞いた声が聞こえてきたので間違いないはずだ


『お久しぶりね』

「ついさっきだよな?」


『貴方たちとは時間の概念が違うのですよ』

「そっか。そりゃすまんな」

生物はそれぞれ時間が異なる。鳥の時間と魚の時間が違うように…

だとすると、機械も時間が人間の感覚と違うのだろう。


『5分も経ってませんね』

「同じじゃねーか!」

少しだけ、しんみりしちゃったじゃん


『奥のエレベーターに乗ってちょうだい』

「奥?」

エレベーターは2箇所じゃないの?と思ったが、言われるまま奥に行ってみる


その奥に来ると、壁で死角になるようにエレベーターがあった


「こりゃ…ここまで来んと気付かんぞ」

『プライベートゾーンに繋がるのですから、目立つ必要はありません』


なるほどな。住人以外は知る必要がないということか


『はやく、はやくー』

「はいはい、急かすなよ。乗るからさ

        …あれ?ボタンがないぞ」

『私がご案内しますので、ボタンの様な邪道なものはないですね』

「邪道じゃないだろ?」

『何階に行きますか?』

「さっき10階って言ったよな?」

『お願いの仕方がなってないわね』

「……」


『あら、恥ずかしいのボク?』

「10階でよろしく」

『気持ちが入ってないよ?』

「…10階に連れて行ってくれないか」


『いっちゃう、私…いっちゃうのー!』


……。コイツ、馬鹿じゃないのか?


"あーん❤︎"


そこは "チーン" だろーが!


『着きましたよ』

「……。スッキリしたのかお前?」

『お前じゃないの。アイと呼びなさい』

「態度がころっと変わるな…」

『私を造るとき、2人の女性をモデルにしましたからね』

その2人が誰か、すぐ分かるんだが…



『はやく降りてちょうだい。いつまでも私に乗っかってるんじゃないわよ!』

「やった後みたいに言うんじゃねーよ!」



エレベーターを出ると、目の前に豪華な扉があった





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