第2話 悲劇の先にあるもの

悲劇が起こったあの日...何もかもが真っ白になった

あまりにも衝撃的なことだったため、ディフォルトでついていた耐性も限界を超えて破られてしまった。まさかこんなことになるなんて考えてもいなかったのだから。


(ちょっと待ってくれ!何が起こっているんだ??これは夢なのか???...いや違う...どうなってるんだ俺の人生!!!!!親同士の仲がいいとか昔に会ったことあるとかそんな次元の話じゃなかった!!同居?いやむりむりむりむり!!相手はあの学園一の美少女だぞ!?そんなの心臓持たないだろ!!ただでさえ女性となんかまともに話したことなんてないんだぞ!?そんな状態でさらに学園一の美少女と命名されている人と屋根の下で暮らすとかシャレになんないだろーーーー!!!!!!!それに学校の人達にバレたら何されるかわからない!!!だいたいなんで朝宮さんも承諾しているんだ...男と二人で暮らすんだよ!?し・か・もついさっき学校で初めて話したばっかの人だよ...???少しは女の子として警戒したほうがいいと思うんだけど...)


「はぁ......これからどうすればいいんだ......」


僕はこれでもかといわんばかりのため息を吐いた。


「これからのことは二人で話し合って決めていけばいいよ!もう夕方だし夕ご飯作らないとっ!一ノ瀬くんは何か食べたいものとかある?」


華のある爽やかな口調で聞いてきたんので驚いた。

この人はポジティブ思考100%なのか?なんでこんなに元気でいられるんだ... まぁ元気ならそれでいいんだけどさ。


「何でもいいよ」


「あ~~!何でもいいは一番困る返答なんだよ~~~!!」


僕の返した言葉に彼女は少し頬を膨らませて言ってきた。


「ごめん、じゃ、じゃあカレーはどう?すぐできるしこれからのことは早く決めといたほうがいいし!」


「それもそうだね!じゃあ今日はカレーにしよっか!」


こんな会話をしたとき本当に同居生活が始まるんだなと改めて実感した。



今日の夕ご飯が決まり、早速取り掛かろうとしたらカレールーがないということに気づき僕たちは近くのスーパーに行く羽目になった。


「カレーに決まったのはいいけど肝心のカレールーがなかったとはね~(笑)」


「ま、まぁスーパー近いしすぐ買って帰ろう」


「そうだね!」


いつもは一人で行っているスーパーに美少女と一緒に行くということが凄く新鮮だ。誰かと行くと少し新しく感じる気がしてくる。


「あった!これを買ってと。あと何か買いたいものとかある?」


「果物とか買ってく?」


「果物!!買う~~~~!!」


急に子供のように嬉しそうに目を輝かせた。きっと果物が好きなのだろう

僕たちは果物を買うことにした。

「何にする~?たくさんあるよ~~!」


「朝宮さんの好きなものでいいよ、僕はなんでもいいから」


「いいの!!じゃあイチゴ!!イチゴ食べたい!!」


「ならイチゴも買って帰ろうか」


「うん!」


満面な笑みを浮かべる彼女に少しドキッとしてしまった。

100%僕に対して打ち解けていることはないだろうが、そう思えるほど彼女は僕に歩み寄ってきてくれていると思った。緊張しているのがばれているのかと疑うくらいに。


僕たちは会計を終えスーパーからでようとした。 しかし、またスーパーに入った。


「ヤバいヤバいヤバいヤバい!!!なんで久遠がここにいるんだよ!?こんなとこ見られたらなんて冷やかされるか...」


「何を冷やかされるの?何か理由でもあるの??」


「大ありだよ!!二人きりのとこなんか見られたら同居もバレるかもしれないんだよ!?僕と久遠は一応友達の設定だし、家が近いから周りに住んでる人ぐらいわかってる。だから嘘ついたところで確実にバレる!!」


「同居がバレちゃうのはマズそうだね...けど友達なら言いふらすことはないんじゃないかな?」


「かといってバラすのもリスクあるよ!ちゃんとした友達じゃないし!!友達っていう設定だからさっ!」


「そんなひどいこと言っちゃだめだよ、久遠くん泣いちゃうよ?」


「あんな奴は勝手に泣いててくれ!!」


「雷斗君、俺悲しいよ~泣」


男の声がした。聞き覚えのある声。嫌な予感がした。


「は?はああああああああああああああ!!!」


しまった!!!話しているのに精一杯で奴を見ていなかった!!なんてことをしてしまったんだ...一番バレてはいけないやつに一番最初にバレるなんて...

しかも朝宮さん僕の気を引いてたし...この人達は心が通じ合ってるのか?

陽の固有スキルなのかこれは...なんて人たちだ...


「雷斗さては知り合いということを隠していたな?どうも初めまして雷斗の友人で同じクラスの久遠 颯です。よろしく!」


「久遠くんよろしくね~!」


挨拶しただけで仲がよさそうに見えるのは気のせいだろうか。これもまた陽キャラの固有スキルなのだろうか。本当に陽の人達はすごいなと思う。僕には到底不可能だ。

「二人はどうしてここに?」


「た、たまたま会って少し話をしていたんだ...」


「たまたま会って話す?そんなことお前がするわけないだろ」


「ひでーなおい!そういう時だってあるんだよ!」


「言い訳はよしてくれよ...見苦しいぞ」


「言ってくれるじゃねーか!!!」


「ふふっ(笑)」


僕らがくだらない言い争いをしていると不意に彼女が微笑した


「仲がいいんだね!!お二人は」


「なんでこの光景みてそんなことが言えるんだ...」


「だろ?俺たちは永遠の心友だからな!!(笑)」


「なんで友達から心友に代わってんだよ!!!」


くだらないことをまたしている僕らに彼女もまたクスッと笑っていた。

「じゃあ俺行くわ!また明日学校でな!」


「じゃあな」「また明日!」


そんなこんなでようやくスーパーから出たのだった。


夕ご飯とお風呂を済ませ僕は自分の部屋に戻った。


「あーーーーーーー落ち着くなー自分の部屋は、今日はいろいろありすぎて疲れたなー、久遠にもとりあえずは同居してることはバレてないしよかった。あとはこれからどうするかだなー、結局今後のこと話せなかったし、まぁ急ぐものでもないからいいけど...早く決めといたほうがいいに越したことはないけどな~」


今までは親が仕事で忙しく一人でほとんど生活してきた。だから自分のやりたいようにやっていたけど今後は家庭内のルールとかも決めないといけなくなるだろう。その他もろもろ決めるとしても少しでも早く決めておいたほうがいい。

僕は彼女のもとへ向かうことにした。


「朝宮さんちょっといいかな?...返事がない」


僕はゆっくりとドアを開けた。


「寝ている、疲れているのは僕だけじゃないからな。朝宮さんも生活が急に変わって、使わなくていい体力を使うことになったんだ。疲れないはずがないか...また明日決めればいいしね、おやすみ」


僕は言葉を付け加えてドアをそっと閉じ、自分も眠りについた。



翌日の朝 僕はいつも通りの時間に起きた。リビングに行くとそこには見慣れない姿があった。


「おはよう~もう少しでご飯できるから座ってて~」


「おはよう、そんな朝早くに起きてわざわざ作らなくていいのに、大変だよ」


「朝ごはんは大事だよ!おなかが空いたら勉強内容も頭に入らないよ~?あと大変じゃないよ、お母さんが家に来れないときとか自分で作ってたから!一ノ瀬くんは気にせず食べてください!」


そんなことを言いながら僕にできた朝食をもってきてくれた。

「まぁ朝宮さんがいいならいいけど...いただきます...うん、おいしいよ」


「ほんと!?初めて作ったから不安だったけどよかったー!...うん!おいし~」


朝ごはんを誰かと食べるのは新鮮だ。しかもまさか朝宮さんと食べているなんてもっと新鮮だ。なんかすごいな、本当に人生何が起こるかわからない。それをいま常に感じている。 それに朝宮さんだと普通に会話ができている。これに関してはよくわからないけど何か安心するところがある。とりあえずはうまくやっていけそうな気がする。

「ごちそうさまでした。」


「ごちそうさまでした。」


いつもとは違う新鮮な朝ごはんは二人の言葉で幕を閉じた。






登校する時間になった。


「朝宮さんがでてから少したったらでるよ」


「わかった。じゃあお先に~」


時間差で登校することになった。学校の人達にこんなことがバレたら大変なことになる。それをさけるための対策というわけだ。久遠や朝宮さんの友達にもバレるのは避けたい。

これからはただ適当に学校生活を送ることは難しくなるだろう。頭の隅には今ある現状をしまっておかなくちゃいけない。ぼろが出てしまったら朝宮さんに迷惑がかかってしまう。そんなことは絶対に避けないといけないことだ。

僕は気持ちを引き締めて家を後にした。




朝宮咲奈



思いもしない出来事だった。

お母さんに雷斗くんと一緒に住むことになったといわれたときにびっくりしてしまった。けど不思議といやな気持ちにはならなかった。だって雷斗くんだもん...!

雷斗くんとは幼い頃、一緒に遊んでいたことがある。彼はきっと覚えていないとおもう。だから話しているときは名前ではなく名字で話している。ほんとは名前で呼びたい。けどなかなか勇気が出せない。昔みたいに楽しく話したり遊びたい。雷斗くんは昔と違って静かで不愛想になっていたことに少し驚いてしまったけどきっと距離を縮めることができたらまたあの頃のように...


あの時の約束を...!!


頑張る...!!


学校も終わってみんなが下校し始めた。

「ねぇ咲奈~今日隣の一ノ瀬くんだっけ?とたくさん話してたけど知り合いなの??」


「まぁそんなとこかな~」


「なにそれ~そんな曖昧な関係なの?」


「昔、一緒に遊んでたことがあるんだ~、けど一ノ瀬くんのほうは覚えていないみたいだけど」


「そういうことか~」


「また仲良くなって付き合いたいと?青春してるね~!!」


「なんでそうなるのっっ!!」


「慌て過ぎだってー(笑)冗談だよ」


「もぉからかわないでよ~~!!」


からかうことが好きな私の友達 雪野 紅葉は中学校からの付き合い。たくさんからかってくるけど私が悩んでいるときや落ち込んでいるときは真剣に向き合ってくれる優しい人だ。


「からかいたくなっちゃうんだもーん!それに引っかかる咲奈がいけないっ」


「うぅ...」


「頑張ってね!ぐいぐい行くんだよ!!私こっちだからまた明日ね!!」


彼女の元気さにはいつも驚く。どんなことでも明るくみんなに接している。逆に元気じゃないときは見たことがない。そんな彼女の元気さに何回か救われた時がある。それが彼女 紅葉の良いところなのだ。


「う、うん!また明日」


紅葉の笑顔を前に私も笑って返した。


一ノ瀬雷斗

とりあえず何事もなく学校を終えることができた。朝宮さんがやけにたくさんしゃべりかけてきて周りの男子たちからの視線に威圧を感じたが何とかなった。これが毎日続くとなると身が持たない気がするが仕方がない。こんな陰キャと学園の美少女が話しているのだから。


「ばれないようにしないとな~」


くどいようだが頭から離れない。ぼろが出たらほんとにおわりだ。僕の高校生活終わりとおもっていいくらいだ。

ピンポーン

家のインターホンが鳴った。

僕は階段をおり玄関に向かった。ドアを開けると久遠が立っていた。


「お前か、何か用か?」


「わりー、お前今日の課題やったか?やってねーならコピーしてくれないか?学校に忘れてきちまってよー」


「わかった。玄関で待っていてくれ」


「サンキュー!」



「ほれ。借りな」


「わかってるよ...ところでこの靴なんだ?車ないし親ではないだろ?高校生っぽいかわいい靴だしな 誰か来てんのか?」


しまった!!!!!!!!!

最大のやらかしを今ここでしでかしてしまった!!!家に上がらせるのはまずいと思って玄関にいてもらったが靴まで配慮していなかった!

バレないようにとか数分前まで考えていたんのに余裕でやらかしちゃってるんですけど!?!? 何とか言わないと!!

「えっと......俺の靴?」


「なわけねーだろ!!!こんな女もんの靴履いてたら俺がとっくに捨ててるわ!もう白状しとけ?なんも言わねーからよ」


息を呑んだ 

ごめん!!朝宮さん!あとから怒られよう...


「どうしたの?一ノ瀬くん?って久遠くん!?」


「あ」「あ」

同時にこの一文字の言葉が口に出た。


「えええええええええええ!!!!......どうなってんの...?なんで朝宮さんが雷斗の家に?」


「えーっと......私たち最近同居することになったの」


久遠が唖然としている。

それは無理もない。関わることのないであろう真逆の二人が同居しているのだから。


「親同士が家に帰ってこれないからこうなりました......頼む!!誰にも言わないでくれ!こんなのが学校で広まったら取り返しのつかないことになる!コピーした借りはこれでチャラでいい!!ほんとに頼む!!」


「状況は分かった。だがコピーの借りだけでは釣り合わないだろ?だから今週の土日泊まりに来るわ!君らに拒否権はないだろ?」


「......わかった。」


「よし!決まりだな!ってことでまた明日な~」


陽気な声を出して笑って帰っていった。


「ごめん朝宮さん!!僕の意識の甘さでこんなことになってしまった!!」


「仕方がないよ!久遠くんもあの感じじゃ言わないと思うし!知られたのが友達でよかったって考えたほうがいいよ!ほかの人にバレるよりかは全然いいよ!」


なんて優しい人なんだろう。もうこの人は怒ったこと一回もないんじゃないか?僕らにとっては一番やってはいけないことだったのに。それを怒りもせずにポジティブに返してきてくれた。


「そうだね。ありがとう、もっと気を付けるよ」


「お泊りか~、久しぶりだな~~、あ!久遠くんが止まりに来る日どっか遊びに行こうよ!」


「いいけど、朝宮さん女子一人だけどいいの?僕のせいでバレてしまったんだ。朝宮さんの友達一人にこのことを言って一緒に泊まるっていうのもいいよ。女の子一人ってのはいろいろ気まずいところあるだろうし」


「そうだね~じゃあ私も一人誘ってみるね!」


「了解」


「さあごはんにしよっか!」


こうして早くも同居がバレてしまった。そんな思いがけない悲劇がおきても僕らは切り抜けないといけない。そんなことを胸に抱き夕飯の支度にとりかかったのだった。

                                つづく




あとがき

ここまで読んでくださった読者の皆様に感謝申し上げます。

ここからもっと盛り上げていこうとおもっておりますので応援のほどよろしくお願いいたします。では3話で会えることを楽しみにしています!

9月9日  立花レイ

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