第16話

 小生意気な金髪美少女の名前はブランシュ・ハシュウェル。現在7歳。火の精霊との絆を持つ。そして、兄のジャック・ハシュウェルは9歳。同じく火の精霊との絆がある。

 テール王国王国騎士団の団長ジャン=ジャック・ハシュウェル騎士団長の子供たちだ。


 ブランシュはアウルム王子が10歳の時に婚約を結ぶとキャラクター設定に書いてあった。

 性格はプライドが高く傲慢。まぁ、悪役令嬢を絵にかいたような性格で、ゲームではもちろん主人公のライバルである。


 ジャックは騎士団長の息子というだけあってか、明るく活動的な性格。考えるより即行動なところがあるが、妹や友達想いの一面も持つ。

 こちらも攻略対象キャラクター。ジャックとの恋路を邪魔するのは妹のブランシュだ。


 サーラ・マリベデス。7歳。水の精霊との絆があり、7年後、精霊省政務官になる父を持つ艶やかな黒髪とぱっちりとした黒目のお人形のような美少女。

 性格はおっとりしていて温厚。空想好きで綺麗なものや可愛いものが好き。運動は苦手だが、精霊の扱いに長けており、セバスチャンの婚約者という設定。


 二人はこのパーティーで初顔合わせだから、婚姻を結ぶのはもう少し先の話だろうけど、一体どんな流れで婚約することになるのか気になる。

 そして、勿論セバスチャン攻略の際にはサーラは主人公のライバルとなる。


 ちなみに、主人公は光の精霊との絆を持つ平民出身の女の子で、健康的な容姿の可愛らしい少女としてキャラクターデザインされている。


そして、テール王国第一王子のアルゲンタム殿下と第二王子のアウルム殿下。

 アルゲンタムは9歳。闇の精霊との絆を持ち『月闇の王子』と呼ばれ、アウルムは光の精霊との絆を持ち『陽光の王子』と呼ばれている。

 アルゲンタムはゲーム設定では、常に沈着冷静で物静か。余計な事は喋らず、知略に長け、剣の腕も立つが、物事にあまり興味を示さず人付き合いは希薄でアルゲンタムと交流を持つ者は少ない、と確か書いてあったはず。

 なので、アルゲンタム攻略の場合、特定のライバルは居ないが親密度は上げにくく難易度が高い、とめんちゃんがグチってたっけ。


 だからか。さっき、アルゲンタムが1ついただこうと言ったときのアウルムたちの驚きの意味は。

 説教しているレニーから顔を背けているアルゲンタムを見つめた。

 

(…………っていうか、レニー。やっぱ良い! 私の目に狂いはなかった! まだ子供だけど、動いてる本物がこんなに尊いなんてっ!!)


 1人静かに心で感涙に咽いでいると、クイクイと袖が引っ張られる感覚に、引っ張られている方を向いた。

 私の袖を掴み、セバスチャンが心配そうに見上げている。


「どうしたの? セバスチャン」

「ん……兄さん、大丈夫かなって思って」

「大丈夫だよ。ありがとう」


 セバスチャンの肩に腕を回し、軽く力を込めて引き寄せながら頭を撫でた。


「それより、お菓子を食べよう。折角、セバスチャンたちが取ってきてくれたんだしね。………よろしければ、殿下たちもご一緒にいかがですか?」


ここは社交辞令でお誘いしておくのが無難な場面と思い言った台詞にアウルムたちはじゃあ、折角だからと入ってきた。

 アルゲンタムのお目付け役のレニーも加わり、総勢8人。


 これでは取ってきた分じゃ足りないということで、もう一度お菓子を取りに行き、大地のテーブルの大きさを広げ、飲み物やナプキン、カトラリー等も準備がされてすっかり会場のメインテーブルと変わらない状況になってしまっていた。


 おまけに、目の前の子供たちは乙女ゲームに出てくる主要な登場人物たち。


(というか、ゲームの主要キャラクターのほぼ全員ココにいるんですけど…………そして、唯一、モブどころか学園に通っていたかすら不明の私が混ざってるんですけど!? これって、良いの??)


 顔には微笑みを浮かべたまま、心の中でウンウン唸るが何も良い考えが浮かばない。

 もうここは秘技壁の花を発動して、私はここに居ないものとしてやり過ごすしか―――


「兄さん、何食べたい?」

「フェリックス様、お飲み物はいかがですか?」


 そんな事を思っている側から、未来の黒髪美男美女カップルが私に構ってくる。


「なぁなぁ、今度はコレでやってくれよ。フェリックス。アルとレニーにも見せてやってよ!」


 にまにまと笑いながらカヌレをつまみ上げて言うジャック。


「何かあるんですか?」

「………………………」


 キョトンとしているレニーと相変わらずの無表情で視線を向けてくるアルゲンタム王子。


「お兄様はただ笑いたいだけじゃなくて?」 

「あぁ、でも僕ももう一度見たいな」


 呆れ顔のブランシュとは対照的に爽やかな笑顔でアウルム王子は微笑んで言う。

 

 思いとは裏腹に私は話題の中心になっていた。

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