⑦水浅木音恩・参戦
コックローチが、コバエに言った。
「コバエ、分身増殖だ」
「おおっ!」
コバエがチェス盤の法則のように増えていく、一人から二人へ、二人から四人へ、四人から八人へ、八人から十六人へ……ワラワラと増えていく黒装束の忍者、背中にハエの羽を生やした忍者も空に群れる。
ザ・ステンに変身した狂介が、増殖したコバエを指差して叫ぶ。
「増えすぎだろう!!」
大量のコバエ発生に困惑している、緋色たちに背後から声をかけてきた者がいた。
「大量発生した忍者は、あたしたちに任せて」
振り返ると、そこに格闘アイドルの音恩と一色が立っていた。
マイクを握った音恩が言った。
「この間、路上ライブを邪魔されたから、ジャアクマンは放っておくと実害が出る」
白衣コートの百々目一色が、片手をプラナリアのハンドパペット化させて言った。
「恒河沙が憩いの場にしている神社を、潰させはしない」
そして、河骨は緋色たちを、仲間になりたそうな目で見ている。
河骨の後方をよく見ると、いつの間にかジャアクマン側についた、メッキが棒を剣のように構えて桜菓を威嚇していた。
コックローチが、正義のヒーローとは思えない言葉を発する。
「邪魔者を、抹殺しろ!」
激突するヒーローたち。
逆立ちした音恩が、足を広げて回転しながら増殖したコバエを蹴散らす。
「おっぴろげ竜巻脚!! 口角あげていこう!」
空中に舞い上がる、増殖コバエ。
恒河沙に接近した本体コバエが、ドライバーを手に恒河沙に襲いかかる。
「バラバラにしてやる!」
咄嗟にグリップカルテボードで、コバエをひっぱたき弾き飛ばす一色。
「恒河沙は、亜区野組織の大事な一員、手出しはさせない」
一色の腕に目が並ぶ。
「邪眼、厄災……金ダライ連続落下」
コバエの頭に落ちてきた金ダライが、金属音を響かせる。
次々と落下してくる金ダライの山に、コバエは埋もれた。
蛾の羽根を背中から生やして空中に浮かぶ、ドクガが痺れ燐粉を、地上の緋色と桜菓に向かって飛ばす。
太モモのガンホルスターから宇宙銃を引き抜いた、緋色がかすむ目でドクガに向けて宇宙銃を連射する、発射された光弾は燐粉に乱反射させられる。
膝を地面についた緋色が言った。
「宇宙銃を撃たせたら、緋色におまかせて……って、昔言われていたのに。銃の腕も落ちた……あのドクガをどうすれば」
桜菓が言った。
「あたしに、考えがある……無限の魔法円に落とす」
ドクガの頭上に直径二メートルほどの魔法円が現れる。同時にドクガの足下にも同じ直径の魔法円が現れ、ドクガは魔法円に挟まれた。
身動きができなくなったドクガが言った。
「なに? これ? げふっ!」
上の魔法円から出てきた、女の両足がドクガの頭を踏みつけて下の魔法円に落として、ドクガを沈める。
同時にドクガを足で沈め上の魔法円から現れたドクガが、キョトンとした顔で言った。
「な、なにいったいどうなっ……げふっ」
また、上からドクガが踏みつけて、ドクガを下の魔法円に沈める。
「自分で自分の頭を踏みつけ……げふっ」
桜菓の魔法でドクガは、自分の頭を踏みつけ、自分に踏まれる無限を繰り返した。
ゴクドーブレードを構える、ザ・ステンの前に土下座をして詫びているモスキートの姿があった。
「見逃してくれ、オレが悪かった」
必死に頭を下げているモスキートに狂介は。
「とっとと、失せろ」
そう言ってモスキートに背を向ける。
その途端、土下座から豹変した表情のモスキートが立ち上がり、念動力で空中に浮かせたビリヤードの珠を。
ビリヤードで珠を弾く棒──キューで背中を向けた狂介に向かって珠を弾き飛ばした。
「戦闘中に相手に背を向ける愚か者がぁ! その愚かさを地獄で悔いるがいい!」
キューで突かれた球は狂介のメタルスーツに当たって弾かれる。
ザ・ステンが横目で、モスキートを睨む。
「あんっ? 今、オレになにをやった」
再び土下座するモスキート。
「事故だ、不幸な事故だ! 寛大な心で許してくれ!」
「ふざけるな!」
銀河探偵ザ・ステンは、ゴクドーブレードの背でモスキートをボコッボコッにした。
「ぎゃあぁぁ! 悪かった、本当にオレが悪かった! だからもう一度、背を向けてくれ、ぎゃあぁぁぁ!」
マダニのネジ巻き爆弾が、カッパーロボたちを取り囲む。
マダニが嘲笑する。
「オンボロロボットどもが、ははははっ」
三体のカッパーロボは、肩を組んで何やら会話をしていた。
「あれ、やるか」
「そうだな、リニューアルしてからは、初めてになるな」
「三体なら確実だな……ダニ野郎に見せてやろうぜ『転位回路』発動」
肩を組んだカッパーロボの体が光り輝き、爆弾群の外にいたマダニと位置が入れ替わる。
マダニに向かって、小さな足でチョコチョコ歩き迫る、ネジ巻き爆弾群。
動揺するマダニ。
「な、なんでオレが自分が放ったネジ巻き爆弾に囲まれて? ひいぃぃ!」
誘爆するコショウ爆弾の白い煙の中で、マダニは悶絶した。
仲間が次々と倒されていくのを河骨の頭に座って、特大ハンバーガーを食べながら傍観していたコックローチが言った。
「チッ、役に立たねぇ連中だ……オレ一人じゃあ、河骨を操って走らせるコトはできねぇ、こうなったら河骨を自爆させて、町全体を吹っ飛ばすか」
戦隊ヒーローのとんでもない呟きに、集まったヒーローたちは同時に。
「ふざけるなぁぁ!!」
と、怒鳴る。
河骨の頭から飛び降りてきたコックローチは、近くにいたメッキの足をつかんで振り回す。
悲鳴をあげる老勇者。
「ち、ちょっと待て! オレ味方! ぐげぇ!」
河骨の側面にブチ当てられ、意識を失ったメッキの体がコックローチの打撃武器と化す。
コックローチの武器は現地調達だった、モノでも人でもその場にあったモノを利用する。
ぐったりとしたメッキの体を、ヌンチャクのように振り回しながらコックローチが言った。
「止められるもんなら、止めてみろ。河骨の起爆スイッチはオレの腹の中にある」
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