第四章 王宮のミレイユ
第42話 問題発生
『破邪の結界』でヴァルスを封じ込め、さらにはジェイクのご両親への顔見せなどなど、やらなければいけなかったことを全て解決&やりおえて。
気分も晴れやかに、新たな1日を始めようとしてすぐに、わたしは大変なことに気が付いてしまった。
「まずいわ……これって、すごくまずいわ……」
とてもヤバい状況だった。
わたしのこれからにも深く関わってくる、シャレになってない問題だった。
それはいったい何なのかっていうと――、
「わたし、することがないんだけど……(;´・ω・)」
ということだった。
『破邪の聖女』の仕事というのはもちろん、『破邪の結界』を維持・管理することだ。
セラフィム王国にいた頃は、毎日のようにあちこちを修正して手直しして補修してと、それこそ朝から晩までかかりっきりだった。
だけど自己修復機能がある『迷いの森』の『人払いの結界』に上乗せしてある『破邪の結界ver.エルフィーナ』は、同様に自己修復機能があって、日々のメンテナンスは不要なのだ。
少々の不具合なら自動で治ってしまう自己完結型の結界、それが『破邪の結界ver.エルフィーナ』だった。
と言うことはつまり――、
「もしかして今のわたしってば、ニートなのでは……?」
厳しすぎる現実だった。
しかし認めたくないものの、認めざるを得なかった。
事実、今もすることが何もなくて、部屋に置いてあった本を目的もなく一人で読んでいるのだから。
ちなみに読んでいるのは――、
『神龍の巫女 ~聖女としてがんばってた私が突然、追放されました~ 嫌がらせでリストラ → でも隣国でステキな王子様と出会ったんだ』
――という、龍と会話できる特別な力を持った少女のお話だった。
主人公の『神龍の巫女』クレアちゃんと、隣国の王子ライオネルの恋物語だ。
主人公のクレアちゃんがすごく可愛いの。
そんな可愛いクレアちゃんをイジメる嫌味ったらしい悪役令嬢やバーバラ、ワガママなパワハラ神龍には、これ以上ない「ざまぁ」をしてやって欲しいものね!
閑話休題、話を戻そう。
わたしのエルフィーナ王国でのお給金は、月に金貨10枚ということになっている。
これは4人家族が、3、4か月は楽に生活することができる大金だ。
しかもここでは衣・食・住が完全保証されているので、出費もほとんどない。
差し引きすれば、下手な中流貴族よりも多くもらっているんじゃないかな?
そうである以上、何もしないというのはまずかった。
しかし、である。
自慢じゃないけれど、わたしは12才の時にたまたま偶然、聖女としての能力を見出されて『破邪の聖女』になって以来、この仕事しかしたことがなかったのだ。
だからいきなり他の仕事をしろって言われても、無理なんだよね……。
もちろん『破邪の結界』を作った以上、わたしの功績はかなりのものがあると思う。
でもだからと言って、これから先、何もしないままずっと毎月金貨10枚をもらい続けるというのは、さすがにちょっと体面が悪いというか……。
「まずいわね……今のわたしって完全なタダ飯喰らいじゃない……」
わたしは読みかけの本の切りのいいところで栞を挟むと、
「とりあえず少し歩いてこようかな? 王宮のどこに何があるかを把握するのは、いざという時にも大事なことよね」
火事とか地震とか起こるかもしれないし、避難経路を確認しておいても損はないはずだ、うん、多分。
無理やり自分を納得させると、わたしは部屋を出て、エルフィーナの王宮を散策してみることにした。
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