第三章 恋する季節
第27話 不思議な高鳴り♪
「ふぁぁ……よく寝た……」
――わたしが目を覚ますと、そこは全く見覚えのない真っ白な部屋だった。
「あれ……? ここはどこ……? わたしはだあれ……? うん、わたしはミレイユ・アプリコット、18歳。元・聖女」
どうもベッドに寝かされていて、見えているのは主に天井みたい。
うーんと、わたしの部屋じゃないよね……フインキ的に病院か医療ルームかな……?
えっと、なんでわたしは、こんなところで寝てるんだっけ?
「あれ……? 誰かがわたしの右手を握ってるような――って、ジェイクじゃない、こんなところで何してんのよ? んん……? はっ!? ちょ、ちょっと! なにわたしが寝てるのをいいことに、こっそり手を握ってるのよこのエロガッパ変態王子!」
わたしの言葉に、うつらうつらしていたジェイクがハッと顔を上げた。
「ミレイユ……? ミレイユ――っ! 良かった、目が覚めたんだな! 3日も眠ったままだったから心配したんだぞ!」
「え? ああはい……良かったですね? ちなみに何の話? 3日も眠ってた? わたしが? ──って、そんなんで騙されないわよ。このセクハラ王子!」
わたしの右手は、まだジェイクに包まれるように握られたままだった。
わたしが引っこ抜こうとしても、ジェイクは大切そうにわたしの右手を抱えたまま、ちっとも離そうとしないのだ。
ま、まぁ別に、嫌じゃないんだけど?
でもそれとこれとは話が別って言うか?
わたしは、優しくて素直で一生懸命でいつも国民のことを真剣に考えてるイケメンなポンコツ王子様に手を握られたからって、キャピキャピ喜ぶような、そんな安い女じゃないんだからねっ!
「うんうん、ミレイユは相変わらずミレイユだな。元気そうでなによりだ。オレはそういうミレイユがいいなって思うぞ」
えっと、
でもなんだろう?
褒められたはずなのに、あまり褒められてる気がしないような……?
「そんなことより、なんでジェイクがわたしが寝てる部屋にいるのよ? わたし一応女の子なんですけど?」
いつまで経っても手を離してくれないので、仕方なくわたしはジェイクに右手を預けたままで、そう尋ねた。
わたしは女の子で、そしてジェイクは男だ。
つまりその、ジェイクに無防備なすっぴんの寝顔を見られてたってことだよね?
それはその、とても恥ずかしいっていうか、それ以前に女の子の部屋に勝手に入るとか、例え王子さまでも許されないし!
ま、まあ?
ジェイクはなんか心配してくれてたみたいだから、今だけは特別におまけして、許してあげなくもないけど!
「なに言ってるんだミレイユ。『アルティメット・リジェネレーション』でオレを助けた後にぶっ倒れて。それからミレイユはずっと寝たままで。一時は生死の境をさまよってたんだぞ?」
「……あっ!」
『アルティメット・リジェネレーション』という単語を聞いた瞬間、わたしは全てを思い出していた。
「そうだ……わたし、無理して『アルティメット・リジェネレーション』を使ってそのまま倒れちゃったんだ――」
「ようやっと思いだしたみたいだな。うん、でもその様子だと記憶障害とかもなさそうで良かった……ほんと良かったよ……」
感極まったようにそう言うと、ジェイクはわたしの右手を離して、だけど代わりにわたしの上半身をぎゅっと力強く抱きしめてきた。
「ちょっと、今度はいきなり抱きついてくるとか!? 親しき仲にも礼儀ありって言うでしょ! いい加減ひっぱたくわよ!?」
「ひっぱたかれたっていいさ。だからもうしばらくだけこうさせてほしい。ミレイユが無事に意識を取り戻して、オレは本当に、本当に……うぅっ……」
「もう、ジェイクってば……なに泣いてんのよ……相変わらずのポンコツ王子なんだから……まったく、しょうがないわね」
わたしはそう言うと、ジェイクの背中にそっと両手を回して、その身体を抱き返してあげた。
ジェイクの男らしく引き締まった身体を抱くと、なんだかちょっと胸とか顔が熱くなってきたような――。
ええっと、その、まぁジェイクとこういうことするのは嫌じゃない、と、思う……います。
いやいや、わたしってば何を考えてるの?
いやほんと、えっ、なにこの感情……。
意味わかんないんだけど……。
わたしが何とも言えない胸の高鳴りに、自分のことながら動揺していると、
「ミレイユ様、お目覚めになられたんですね!」
わずかに心配の色を含んだ──だけど元気な声とともに、ドアが開いてアンナが入ってきた。
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