第6話 私のことが見えるんですか!?

朝比奈の口からまさかの人物名が出てくる


「な、なんで上野のこと知ってんの!?」


「上野先輩、うちのバスケサークルの元メンバーですからね

急に休学になって、最近サークルをやめたって噂を聞いて、気になってたんですよ〜」


この時、俺は勘付いてしまった

朝比奈が話している"上野かな"は俺の考える上野ではない

"生きている頃の上野かな"だと





「す、すまん 軽く会ったことあるくらいだな

ってか上野って大学同じだったんだな」


「そうですよ、上野先輩は私のこといつも可愛がってくれてましたよ」


「そ、そうなんだ」


「あ、もう時間も遅いので、帰りますね!

今日楽しかったです!」


「こっちも楽しかった ありがとうな」








先輩は、きっと気づいていない


「先輩、一つ良いですか」


もう先輩には彼女はいないんだ

だから今日ここで絶対告白すると決めていたんだ


「えっと...な、何???」


でも、私には一つだけ気になっていたことがある

私がお土産コーナーから出てくる時、先輩はたしかに上野かな先輩と一緒にいたことだ

少しの間ではあったけど、先輩はとても幸せそうだった

って、何考えてんの私! 告白しなきゃ


「上野かな先輩って知ってますか?」


何聞いてんだろう、私








○○○


大学生活の夏休みはクソほど長く、友達の少ない俺としては

毎日が"暇"

潰せないほどの"暇"

だったのが去年までの俺


「じゃ、じゃあ 次はここです」


「ちょ、上野 一回休ませてくれ!」


上野の生前については聞くほどの暇もないくらい忙しかった

なぜならとりあえず霊能力者に片っ端から相談しに行くことになったからだ




「いや、幽霊ここにいないじゃんか」


「ナニイッテルノカワカリマセン」




全てふざけてると思われて軽くあしらわれた...

霊能力者なんて全部詐欺師かよ!


「や、やっぱり私はこのまま...」


「つ、次行こ! 次!」


ここで15軒目



「幽霊が取り憑いたんですけど、助けてあげられませんか?」なんて言って信じる奴がいるわけ〜


「そうじゃのう、ちょっと待っとってくれ

あ、名刺をどうぞ」


15軒目にして初めてそれっぽい反応をもらえた

ちょっと希望が見えてきたような

相当年いってるみたいだけど、おじさんボケてないよな





「なんで一輝がここにいんの」




「さ、桜!?」




事務所の裏から紛れもなく桜が現れた

まさかこのおじさんって


「おじいちゃん! なんでこの人がここにいるわけ?」


「あぁ このお二人さんが相談に来てな〜」


「さ、桜のおじいさんだったんだ〜

って二人さんが相談って!」


「私のことが見えてるんですか!?」


上野は目をキラキラさせていた


「奥から道具を取ってくるから

桜、二人に茶を」


か、確実に見えてる...

この人絶対本物だ!



「は、はい ちょっと待ってて」



ってか、めちゃくちゃ気まずいことになったなぁ...

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