第4話 良いんじゃないですかね

「上野さんいたら...話づらいな...」





「桜は彼氏できたって、拓馬から聞いたんだけど」


復縁できるのはすごい嬉しい

だってずっとずーっと好きだったんだから

でも、絶対おかしいよな...


「知ってたんだ」


桜は目だけ笑っていたが、口は一切動いていなかった事に疑問を抱く

いつもの天使スマイルとは全然違う

不自然すぎる...いや、考えすぎ?


「もう別れたんだよね〜」


「で、でも俺たち別れたのも1週間くらい前だったよね」


桜の事は好きだし、だからこそここでうやむやにするのは〜


「ちょっと怖いよ 一輝〜」


声のトーンが少し変わる

ダメだ、俺

何言ってんだ!

復縁ができればどうだって良いだろ


「ご、ごめん! もう聞かないから!」


俺は馬鹿だから、大好きな桜のことを信じたくなってしまう

普通、疑うよな


「あ、やば〜 もうこんな時間だ〜

もう帰るから、また今度話そ? 二人で」


「う、うん! わかった! またね!」


あの桜とまたイチャラブライフが始まる!

それにしてもさっきから上野は静かで


「ちょっと待ってください、桜さん」


上野がこんなに大きな声で話したのは初めてだった


「私、この後用事あるから〜」


「何か隠してますよね、あなた」


ん、んんん!?


「ちょっと、困るよ上野さん 私は本当に一輝と復縁したくて...」


「私、ずっと桜さんを見てたので、わかります」


上野のストーカー気質が見え隠れしているような...


「え〜ちょっと何言ってるのかよくわから〜」


「だったらしっかり理由を教えてください

"知り合い"と手を繋いでた理由を

ちなみに、昨日私は"キス"するとこも見てますよ」


き、キスってどういうこと!?


「い、市川さんは本気であなたが好きなんです!

好きじゃないなら、失礼だからしっかり言った方が良いと思いますよ!!」


「ちょ、上野落ち着いて」


「市川さんは、なんとも思わないの?」


思う、思うさ

どうせ俺に復縁話を持ちかけたのも、きっともう俺のことを好きじゃないなんてことも


「いや、俺は怒りなんてしないかな

ごめんな、桜 上野ちょっとやばい奴でさ〜」


上野が俺を思って言ってくれてるのはわかってる...でもごめん上野、俺は桜を信じたい


「じゃ、邪魔してごめんなさい」


こう言って上野はカフェを後にした

表情から見るに、『私はあれだけ言ったのに何がやばい奴よ、最低』と言いたいのだろう


「ご、ごめんな桜〜」


俺は本当に馬鹿だ

上野が言ってた"キス"も二人の反応を見たら本当なんだろうってなんとなく察しがついていた

でも...でも...俺はどうすれば〜


「何あれ、怖」



何考えてんだ、俺

桜と復縁できるかもって時になって急に冷静になって


「ごめん、俺いかなきゃ」


○○○

「ガチャ」


勢いよくドアを開けるとカーペットに背を向けて上野が座っていた


「上野、すまん! あんなこと言って...

お前あれだけ言ってくれたのに、否定するようなこと言って」


俺は半泣きでそう言った

なぜなら、上野の発言を受け止めたら桜が俺に一切気はないと認めるようなものだからだ


「よ、良いんじゃないんですかね」


思ったより優しい声に目を丸くする


「さ、桜さんのことが好きだからこそ、あそこまで信じてあげられたわけですよね」


いわゆる恋は盲目ってやつだろうか

彼女はそれからこちらを向いて言った


「市川さんの彼女は、さぞ幸せになれるんでしょうね」


心臓の音が全身で感じられるほどドキドキしていた


「で、では幽霊について調べるの助けてください」


「あれ、これってもしかして...」


「市川さんの面倒を早く終わらせて、早く私をなんとかしてくれませんか...」


あ、そ、そうだよね!

別に俺のことを思ってとかじゃなくて、上野自身の手伝いを早くして欲しかったってことだよな

何考えてんだか俺は


「ってヤバっ」


足元に置いてあった投げ捨てたバックに足を引っ掛け、ぶっ倒れる


「ちょ、まじごめ、」


上野の顔はもはやゼロ距離

俺は上野にのしかかるような体勢になった


「ど、どいてください」


「ご、ごめんごめん」




こんなにドキドキしたのは初めてだった




〜その後、カフェにて〜


「やっぱ無理か〜

ま、他の男で良いか...」


ブーブー(LINEの通知音)


[明後日、家にお父さんと行くから、彼氏連れてきといてね]


「はぁ〜 めんどくさ...」


この時、俺は知る由もない

ここからがもっともっと複雑なことになることを

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