犬の唄

ハネ

第1話

「おい、…おい、大丈夫だいじょうぶか。」

「う、うう、此処ここは?……何処どこだ?。」


ひらくと、そこにはくろシャツのおとこおれつめていた。

黒シャツの男は、すこしホッとしたかおで、


黒シャツの男

がついたか。どれ、きずを見せてみろ。フムフム…

傷はたいしたことないな…

出血しゅっけつまってるし、大丈夫みたいだな。


まったく、一時いちじはどうしようかとおもったけどよー…とりあえず、大事だいじさそうだな…フッ笑。」


だが俺は、状況じょうきょうまったくわからない。

 

何故なぜ俺は此処にいる…

それに、コイツらはだれだ!

黒シャツの男、銀縁ぎんぶちメガネの男、白タンクトップの男…

なにがなんだかわからない…


…あれっ…俺は誰だ…

なにも思いせない…一体いったいどうなってるんだ…


コイツらは誰だ!

俺は誰なんだ!!


俺はこころなかさけんでいた。


すると不意ふいに、頭部とうぶいたみがはしった!

ズキッ!

、イタッ…ぐぅ。」

あたまかかえて痛みにえてる俺に、銀縁メガネの男がはなしかける。


銀縁メガネの男

「おいおいおい、本当ほんとうに大丈夫なのか?お前。」

 

俺は矢継やつばやう。


「あー大丈夫だ!大したこと…ない!。」


激痛げきつうで、本当のところ大丈夫ではなかったが、

俺の中の本能ほんのうが、ここはうそでも大丈夫だと言えと言っていた。


銀縁メガネの男が黒シャツの男に、

小声こごえ質問しつもんする。


銀縁メガネの男

「なぁ、ヤバイんじゃないのか?あの痛がりかたは…始末しまつするか?なぁ!。」


黒シャツの男が返答へんとうする。


黒シャツの男

問題もんだいないと思うが…たぶん一時的いちじてきなもんだろう。

頭を結構けっこうつよめにけたからな…。

ただコブもできてるし、脳内のうないに出血は無いと思うがな。

とにかく、様子ようすをみよう。」


黒シャツの男は、俺をじぃーと見つめながらちかづいてくる。

そして俺のまえ片膝かたひざをつき、人差ひとさゆびを立て、左右さゆううごかした。


黒シャツの男

「おい、顔を動かさず俺の指先ゆびさきを目でってみろ!。」


俺は黒シャツの男の言うとおり、目で指先を追う。


右、左、右、左。

すると黒シャツの男が俺のにぎってきた。


黒シャツの男

「よし、じゃあ両手りょうてで、俺の手をちから一杯いっぱい握ってみろ。」

 

俺は言われた通り、

黒シャツの男の両手を握りかえした。


黒シャツの男

「左右の手で、力がはいりづらいとかはあるか?

しびれは無いか?。」


俺はくびを左右にった。


「大丈夫だ。」


黒シャツの男

あしの痺れはあるか?。」

 

俺はまた首を左右に振った。


「無い、大丈夫だ。」


黒シャツの男


「頭の痛みは…まだ痛むか?。」

 

俺はかるうなずいた。


「ああ、まだ少し痛むが、だいぶマシになった。」


黒シャツの男


「そうか、多分一時的たぶんいちじてきに、強い痛みが走っただけだろう。

…キズをひややせるものがあればいいんだが…。」


銀縁メガネの男

「此処にはそんな物無ものないだろう。」


少し痛みが引いてきた俺は、


「本当、何ともない。痛みも引いてきたし…

 ハハ八。」とわらってみせた。

 

すると、銀縁メガネの男と白タンクトップの男が俺の笑いにつられるように笑った。


銀縁メガネの男

「ふんッ。」


白タンクトップの男

「ハンッ。」


わらいながら、此方こちらをじっと見ていた。

何故なのか…黒シャツの男とちがって、銀縁メガネの男と白タンクトップの男は、俺にたいして冷たい態度たいどをとっている…。


そして白タンクトップの男が黒シャツの男に言う。


白タンクトップの男

「なぁなぁ、ところでいつまで此処にかくれていればいい?。

何だかジメジメしてカビくさいし、

それに何だかはらったしよー。なぁーなぁー。」


黒シャツの男

「んー、まぁ~最低さいていでもひとつきうごかない方が、安全あんぜんだろうな。」


 すると、白タンクトップの男がこえあらげて言う。


白タンクトップの男

「おいおいおいおい!

こんなところに1ヶ月いっかげつってさー…

気がくるっちゃうよ!……ホント勘弁かんべんしてよー。」


白タンクトップの男は、両手で頭を抱えている。


銀縁メガネの男も、人差し指でメガネをげながら、


銀縁メガネの男

正気しょうきかよ!本当にこんな所に1ヶ月もいる気か?冗談じょうだんだろ?。」


黒シャツの男

「おいおい、お前らこそ正気か?

此処までの苦労くろうみずあわにする気なのか?

…いいか、ここまでどれだけの時間じかんけて計画けいかくり、どれだけの時間を使つかって、

どれだけ細心さいしん注意ちゅういはらって……

ここまでたと思ってるんだ!!


チッ、ったく、此処で動けば

THE ENDだぞ!

少なくてもほとぼりが冷めるのに、

1ヶ月は必要ひつようだ。

出来できればもう少しほしいところだ…


いいか?!組織そしきやつらは今頃いまごろ

目ぇ血走ちばらせてかね行方ゆくえを追ってるだろうよ!

それに、俺たち4にんかかわってる事にも、じき気付く…

そんなに時間は掛からないだろうな…

 

奴らの情報網じょうほうもう観察力かんさつりょく推理力すいりりょくあなどるな!

それに、はなく奴がいるからな…


ここまで石橋いしばしたたいて

叩いてわたって来たんだ!

こんな所で下手打へたうってどうする!?。」



銀縁メガネの男

わるい悪い、そんなおこるなよ。

時間をたっぷり掛けてきたのはってるよ。

俺達おれたちだって、下手なんか打ちたくねぇよ!

…ただこんな所にずっとたら気が狂うぜ!。」


黒シャツの男

「誰がずっと居ると言った。

少しの間、たったのひと月だぞ。」


片手かたてで頭をグシャッとしながら、黒シャツの男は言葉ことばつづける。


黒シャツの男

「それになぁ、まで仕事しごとだぞ!

逃げ切ってこそ、この仕事は完結かんけつするんだ!

つかまればけ、逃げ切れば勝ちだ!

…そう、単純たんじゅんかんがえればいいんだ……単純に…くそッ!。」


黒シャツの男は、そう言って今度こんどは両手でかみを、グシャグシャにした。


白タンクトップの男が、バツの悪そうな顔で言う。


白タンクトップの男

「ごめん…気持きもちはわかったよ…。俺達が悪かったよ…。」


白タンクトップの男は、片手で坊主頭ぼうずあたまでながら、


白タンクトップの男

「俺は…頭悪りぃからからよ…あんたの言う通りにするよ。

半年はんとし此処に居ろって言われりゃそうするし、

ねん居ろって言われりゃそうするからよ。」


そう言いながら白タンクトップの男は黒シャツの男を見つめた。


黒シャツの男

「…いや、俺の方こそ…ちょっと興奮こうふんぎた。すまん… … 

だから全員ぜんいんで逃げ切ろうぜ。

少しのあいだ辛抱しんぼうしてくれ、ジッと…とにかくジッとしてるんだ。

これまでの行動こうどうを考えたら、1ばんらくな仕事だろ。

なぁ、そうだろう?。」


そう言って黒シャツの男は3人を見つめた。


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