06.えーっと…どういうことだ?

「フー…」


 ビールを飲みながら、状況を整理しようと試みた。

 しかしダメだった。

 今この部屋で起こったこと、話されたことに、疑問しか浮かんでこない。


 いったい何だったんだろう。


 …考えてもわからない。

 キーワードだけ浮かべても…魔王、弾丸の代わりに発射された俺、細胞から培養された俺、宇宙艦、メディカルポッド……そして、消えた女。


「確かあの女、外交官とか言ってたな。」

 と、俺が独り言ちると

「その通りです、マスター。」

 と、タブレットから音声が出た。


 ん?


 このタブレット、俺の独り言に答えた?


 俺はテーブルの上のタブレットを拾い上げて、画面をタップしてみた。

 タップしたとたん、画面が光りだし、先ほどの音声と同じ文字が画面に表示されていた。


「こいつ対話できるのか?」

 俺はそうつぶやいた。

「はい、マスター。本機タブレット型情報端末は、マスターの会話、思考から求められた答えを導き出し、返答する機能が備えられています。」

 と、音声と文字で返してきた。

「会話と…思考?」

「はい、マスター。本機はマスターの左腕に装着されている腕時計と、通信端末であるスマートフォンとすでに連動されており、腕時計が装着されているか、スマートフォンが身近にある場合にのみ思考による操作も可能です。」


 俺は左腕にはまっている時計を見たが、今までと変わった様子はない。

 カバンからスマホを取り出してみても、変わった様子はない。


「マスターが疑問に思われていることにお答えいたします。腕時計、スマホともに今まで持っておられたものと形状については変化がございません。しかし、魔王討伐の際、マスターのビジネスバッグもともに燃え尽きており、マスターの記憶をさかのぼることで型番その他を把握し、カタログスペック通りに復元したものでございます。しかし、そこは帝国製、若干のスペックアップははかられております。ちなみにマスターが着用されているスーツ、靴、下着に至るまで同様です。」


「な…なるほど。」


 俺は皺にならないスーツの理由をようやく知ることができた。

 そりゃそうだわな。燃え尽きたんだもの。同じわけはないか。

 俺の身体も新品なんだもんな。


「ハハハ…」


 俺の口から乾いた笑いが出た。

 俺は面倒くさくなり、一切合切を放り出して寝ることにした。





 …いやいや、寝れるわけないだろ。


 少なくとも現在の身の安全と、俺の身体がどうなったかは理解しとかないと。


 それから俺はタブレットと一問一答で、自分の身体のことを聞いていったが、そのほとんどが現時点ではまだわからないということだった。

 そもそもが、魔王の身体と融合して構築されたってことが、前代未聞のことらしいからな。

 いきなり化け物になったりしなければ、まあいいか。


 考えるのが面倒になってる。


 これってひょっとして、あの女の手から出てた光が原因なんじゃないのか?

 なんか思考誘導されてるというか、深く考えられなくなってるというか…。


「それについてはその通りです。外交官であるアリーシャが補償問題をスムーズに進めるために向精神魔法を使って混乱していたマスターをなだめたため、少し思考が低下しています。」


 やっぱりそうか。

 つまり、帝国が有利なように思考操作されたってことなんだろうな。

 これが解けるまでは考えもまとまらないだろうな。


「すぐに寝る方法ってなんかある?」

 俺はダメもとで聞いてみた。すると

「睡眠魔法でよろしければ私が掛けることができますが、いかがいたしましょうか?」

 と、答えた。

「じゃあお願いするよ。」

 と俺が言うと

「はい、承りました。」

 とタブレットが答え、俺の意識はその時点で落ちた。


 …ところで、魔法ってなんだ?

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