04.状況説明
白いドレスとでもいうのだろうか。ひらひらとした服を着ていた女性は、今まで見たこともないほど美人で、色気があった。
いやいや、そうじゃない。
「お前誰だ?どうやって入ってきた?」
俺は少しあとずさって、ソファーの女に問いかけた。
「混乱しているところ申し訳ございませんが、少し私の話を聞いてください。」
女性は俺に左手をかざすと、何やら俺の気分が落ち着いてきた。
なんか手から光が出てる気がするけど…。
俺は取り乱していた気分が落ち着き、とりあえず話を聞こうと、泥棒かもしれない、ストーカーかもしれない相手と向き合うために、テーブルをはさんで対面にあるソファーに腰を掛けた。
ん?
おかしい。
なんで俺はこいつを追い出したりせずに話を聞こうとしてるんだ?
今朝からおかしなことが多すぎて、混乱を通り越して頭の中が『無』になってる。
「まずは自己紹介から。私の名前はアリーシャ。あなた方が地球と呼んでいるこの星から遠く離れたところにあるエスペランダー帝国の外交官です。」
「は?」
間抜けな話だが、すでに俺の頭では理解が及ばず、こんな言葉しか出てこなかった。
「実は昨日、私どもの星間戦ドルーア星第125次戦闘において、あなたが巻き込まれました。ご記憶はおありでしょうか?」
「は?」
俺は間抜けな言葉を吐き続けた。
「巻き込まれたのは地球時間で1分足らずなのですが。私どもの戦艦から発射するはずの質量弾が、発射直前の被曝により艦載コンピューターが暴走して、ありえない座標から、打ち出すはずの質量を抽出し、発射されることになってしまいました。ありえない座標つまり、この地球のあなた柏木努(かしわぎつとむ)様です。」
「は?」
「おかげさまで、敵首領である現地呼称『魔王』は撃破され戦争は終結いたしました。ありがとうございます。」
「はぁ?」
「その際、柏木様の身体は木っ端みじんとなり、ドルーア星に直径20㎞に及ぶクレーターが発生しました。すぐに現地捜索班が回収を行いましたが、元の身体は魔王の体内に激突の際付着した細胞だけを残して、燃え尽きてしまいました。」
「ハァァ?」
「そこですぐさま、細胞を培養機にかけ、現在の姿を取り戻して、今朝ほどベッドまでお送りした次第です。」
「…」
「また、培養する際に魔王の細胞も若干付着していたらしく併せて培養されてしまい、現在の柏木様の身体には元の柏木様と魔王のハイブリッドと申しますか、混在しているような状況です。」
「…」
「あぁ、御心配には及びません。その体に定着しているのはあくまでも柏木様の意識、魂であり、魔王は細胞採取後、現地にて焼却・浄化して殲滅を確認していますので、その身体が乗っ取られたりすることはございません。」
「…」
「ですが、以前の身体に比べると少々力が強くなっているというか…。そういう状況ですので、お詫びと説明を兼ねまして私が説明に伺いました。」
「ちょっ…、ちょっと待って。今理解するから。」
俺は右手を相手に向け制止し、左手で頭を押さえながら、今の話を頭で反芻した。
え~っと。
まずどっかの星の戦争で、俺が弾丸として発射されて、木っ端みじんになって、魔王を撃破。細胞から培養して今の身体を作ったけども、魔王の細胞も混じっちゃったみたい。
ってこと?
「はぁぁぁぁ??」
「御理解いただけたようで恐縮です。つきましては今回の不慮の事故に対しての補償を…」
「ちょっ、ちょっと待って。」
「はい?何か?」
「はい何かじゃねえよ。そうすると俺って、昨日の時点で一度死んでるってことなのか?」
「いえいえ。正確には死んではおりません。元の有機体に立派に意識と記憶が定着しておりますので。あえてゆうならば、仮死?状態にはなっておりました。」
「仮死じゃねーよ。細胞が残ってても死んでるには違いないだろうよ。」
「そこは何とも…。星間文化の相違と申しましょうか…。」
俺は大きくため息をついた。ため息をよくここまで我慢した。自分で自分をほめてやりたい。
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