第28話 好き

私たちが友達として付き合うようになり、8年経った。


タカヒロは30半ばになり、今日は結婚式を挙げる。

相手はヒカルさんという人で、お互いの欠点を支え合うようなカップルだった。


タカヒロはふわふわしてるところがあるけれど、ヒカルさんは地に足しっかりついている人でしっかりしている感じ。


2人は知り合いは多いけど友達のみの式にしたいと言って、20人以下の少数の披露宴になった。

挙式は2人だけで静かに挙げたらしく、今はその映像を見ている真っ最中。


昔はこんなに大それたことをせず、一緒に屋根の下で暮らすだけだったけど時代の変化はすごいなとしみじみ感じる。


2人とも真っ白な正装だけれど、かっちりしすぎずラフな感じに仕上がってるところがイマドキっぽい。


久寿「俺はユキとタカヒロが付き合うんだと思ってた。」


映像を見て食事をしながら、久寿が私だけに聞こえる声で言った。


ユキ「なんで?」


久寿「二人とも仲良いから。」


ユキ「え?私たちは?」


久寿「…。」


なんでここで無言になってしまうんだろう。


ユキ「私はタカヒロと友達として付き合ってる。初めて会った時は懐かしい人に似ていて心惹かれた時があったけど、タカヒロはタカヒロだって気付かされた時に恋愛とかどうとかじゃなくて、一緒にいたいなって思ったの。」


久寿「俺のことは?」


ユキ「好きよ。」


久寿「友達として?」


ユキ「ううん。人として。」


久寿が優しく笑う。

こんな顔初めて見たかも。


少し心臓の脈がおかしくなる。


久寿「俺もユキのこと好きだ。」


ユキ「ありがとう。」


こんな風に気兼ねなく相手に対して好きと言える関係はいつぶりだろう。

私の全ての素性も知らないのに、好意を表してくれる2人がとても好き。

これは友達とか恋人とか言葉にならない感情の好きなんだと思う。


この2人に出会えてよかったな。


式も終盤になってみんなで写真撮影することになり、私の横に久寿とタカヒロがいる。


タカ「なんで二人ともシワ出来ないの?」


久寿「食事は気を使ってるからからな。」


ユキ「ケアは怠らないようにしてる。」


タカ「うーん、僕の日々の過ごし方に原因があるってこと?」


「「そうかも。」」


二人で口が揃う。

この頃一緒に良すぎたせいか、口が揃うようになってしまった。


ヒカル「ちゃんと前見て。カメラマン困ってる。」


タカ「あ、ごめん。」


みんなでカメラに目線を合わせて、写真を取ってもらう。


これが最初で最後の私の写真。

長く生きていくには相応の年齢を演じないといけないから。


だから生きた証拠は最小限に。


二人のとの思い出はこの1枚と胸にちゃんとしまっておこう。

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