第26話 パック

旅はノープラン。

リビングに置いてあった付近にある施設のパンフレットをみんなで覗く。


ユキ「あと3時間でご飯だけど…。どうしよう。」


タカ「微妙な時間だね。宿でゴロゴロする?」


久寿「飲み比べの酒は食事の時ってお願いしてるからな…。」


ペラペラとパンフレットを見ながら相談していく。


ユキ「あ!梅酒、置いてあるじゃん!」


もう一つのパンフレットを見始めたユキ。

それは、ルームサービスのメニュー表だった。


タカ「これあれば、外行かなくてもいいじゃん!」


と、タカヒロはユキが持っているパンフレットに目移りをした。


これは、どこにもいかないパターンだなと思い、施設が載っているパンフレットを閉じようとした時、ふと気になるものを見つけた。


『氷菓子』という名前のお菓子屋さんだ。


その店は一年中フルーツのアイスや、昔懐かしの水飴を氷に乗っけて売ってたりしているらしい。

お菓子屋メインではあるが、外で食べれるイートインスペースもあるみたいだった。


明日はここを提案してみよう。


自分が見ていたパンフレットを閉じて、2人が見ているメニュー表を一緒に見る。


2人はご飯前なのに大量につまみを頼もうとしていたので、無理やり止めてこの後、酒をたらふく飲むのなら大浴場に行ってさっぱりしてからがいいんじゃないかと提案した。


それは、自分の栄養補給のためにも。


ユキ「そうだね!浴衣になった方が気分が上がるし、そうしよう。」


タカ「鍵は?誰持つ?」


久寿「俺が持ってく。先に出ていいよ。」


タカ「一緒に行こうよー。」


久寿「じゃあ外で待っててくれ、すぐに行くから。」


タカ「はーい。」


2人がクローゼットを漁り、浴衣を準備して先に外に出るのを見てから自分の部屋に行き、血を補給する。


この行動さえなければ、人間っぽいんだけれどな…。


指で口をぬぐい、飲み終わったパックをジップロックに入れてバッグにしまい、2人が待ってる玄関に向かう。


ユキ「なんか血色よくなった?」


久寿「そう?」


タカ「うん。確かに!いつも青白いよね。白湯でも飲んだ?」


久寿「そんなとこ。風呂入る前のルーティンってやつ。」


嘘はついていない。


でもこの行為がこの2人とは違うと改めて感じさせられる。

人となるべく深く関わってこなかったからこそ、今こうやって痛感させられる。


俺はこの時代には生きていなかった命だったのに、あの子どものお陰で自分は今この2人に出会えた。


これが俺にとって良かったのか、悪かったのかは分からないが、良い時の過ごし方だと自分で思っている。


1人で過ごして色々学んだ時間も有意義な時間であったが、こうやって人と対話している時の方が知識を得るよりも幸せに感じるのはなんでなんだろうな。


あらゆるものを読んできたがこのことは、載っていなかったと思う。


まだまだ知識不足なんだろう。

そんな知識不足の俺は、この二人のことを今は知りたい気持ちでいっぱいだ。


この2人が死ぬ時くらいには、今より知っていることが多くありますように。

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