第3話 デミグラスオムライス
PM20:00 開店
開店早々、お客さんが来たことはない。
大体ご飯を食べれる所に行った後や、遊んだ後に来る人がたまたま見つけて入ってくる。
だから開店準備しながら今日の夜ご飯を用意する。
今日はオムライス。
デミグラスソース作っちゃったよ。
食べるの楽しみだなー。
そして音楽はドリームスターの女の子。
声・音感がいつも好き。
しかも英語が聞き取りやすい発音してくれる。
コラボレーションしている曲も聞いてしまう。
一番好きなのは、We Don't Talk Anymore。
切ない感じがなんともいい。
その曲を聴き、鼻歌をしながらオムライスの盛り付け。
今日の出来は120点!
卵も割けずに、ソースもいい感じ。
カウンターの椅子に座り、
「いただきまーす♡」
トロトロ半熟玉子で、大豆で出来たひき肉を入れて塩コショウで炒めたケチャップライス。
特製のデミグラスソースがまろやかで美味しい...♡
[チリリーン]
え、お客さん来ちゃった?
頬張ったままの口で扉に目を向ける。
…昨日の男の人だ。
・
・
・
・
・
カウンター席に座って、ご飯を食べていたみたいだ。
とてもびっくりした表情をしている。
俺もまさか食事をしているとは思っていなかったので驚いた。
「すみません!片づけます!」
「あっ、待って!」
これはもしや一緒に食事できるチャンス!
「こちらこそお食事中にすみません。もしよければもう一つ作っていいただけますか?」
「え...あ、はい!作りますね。」
白い透き通るような白い頬が今はさくら色になっていた。
クールな感じに惹かれたが、少し焦っている姿も可愛らしかった。
そんな彼女がぱっと顔を上げ、
「先に何か飲みますか?」
と、聞いてきた。
「じゃあ、赤ワインを。」
「はい。」
シャーっと炒めている米が具材と混ざり合っていい匂いがしてきた。
久しぶりに家庭的な食事をするな。
最後の食事はあの人に作ってもらった、さんまの塩焼きだったな。
秋になるたび思い出す。
「お待たせしました。オムライスです。」
「ありがとう。一緒に食べよう。」
「...はい。」
やはりちょっと気まずいか。
けれど、女は俺の隣に来て一緒に食べてくれる様子。
「いただきます。」
「...いただきます。」
ソースを絡めて口に運ぶ。
え... 「うまい...。」
美味すぎて、思わず声に出た。
「ありがとうございます。」
久しぶりに食べた優しい味。
少し涙腺が緩む。
味わいたいが美味しくて、どんどん入れてしまう。
どんどん口に入れてしまったから、10分もたたずに食べ終わってしまった。
喉を潤す為にワインを一口ふくむ。
「美味しかった。ありがとう。」
「お口にあって良かったです。」
女は少し微笑んで、残りのオムライスを頬張っている。
可愛いな。
「いつも料理も出しているのか?」
「いいえ。私の夜ごはんです。」
「そうなのか。わざわざ作ってくれてありがとうな。」
「いえいえ。久しぶりに人に食べてもらったので、ちょっと緊張しました。」
「またこの時間に来てもいいか?君の手料理が食べたい。」
「んー…、いいですよ。でもその分飲んでくださいね。」
「もちろん。また来るのが楽しみになった。」
意外と馴染みやすい子なんだな。
話をするたびに好感が上がってしまって怖いよ。
ただ落とすためだけに来たというのに。
その後、ボトル2本目を開ける頃には女もだいぶ打ち解けてきた。
彼女は、ユキさん。
東北から出てきたそう。だから肌が白いのか。
そして今はオープンしたばかりのお店の経営に集中しているようだ。
プライベートのことで聞けたのは、映画と本が好きなことくらい。
聞きたいことは多いがまたにしないとしつこいよな。
「次は金曜にくるよ。今日と同じくらいの時間かな。」
「わかりました。お待ちしてますね。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます