第10話 二葉島宇宙センター


東北の民間ロケット施設の見学から四日後。


二度目の社会科見学、二葉島宇宙センター行く日を迎えた。


「東北の次は鹿児島……行ったり来たりで季節感が狂うな」


双葉島宇宙センターの規模はこの前の施設とは桁違いに広い。博物館と言えるほどに展示物も充実している。


「8月に打ち上げ予定のロケットについて、説明したいと思います。このロケットは宇宙ステーションに物資を運搬するためのロケットです。重さは6トン。その内訳は水に実験機器に衣類など様々ですが…ある特別なものを積んでいます。それはオレンジやパプリカといった生鮮食品です」


特集展示を前にガイドの説明が入る。


「通常の場合、打ち上げの四か月前に物資を積み込むので生鮮食品を運ぶのは不可能ですが……このロケットはレイトアクセスという一週間前の積み込みを可能とするシステムを実用化しているのです」


(…予習通りだな)


この情報は事前に掴んでいた。


『前にも話したが…その打ち上げ直前に乗せる生鮮食品にお前を紛れ込ませるっていう手筈で行くぞ』


『うむ。それが最善の方法だと私も判断する』


その後もガイドの通り、施設を順々に廻った。


事前に予習し過ぎたこともあってか、既に知っている事柄も多い見学ツアーだったが、目的は見学ではない。電波をばら撒いて操れる人間を増やすことだ。


見学ツアーが終わっても隼人にはまだやるべきことがある。


「このまま二葉島に滞在して…あらゆる人間を操れるようにしないとな…」


この宇宙センターに勤める職員は二葉島に住んでいる。今日出社していない人物を操るという意味でも、島全体に電波を巡らせるべきだ。


『予定は三日。ずっと電波を出しっぱなしにするのは負担がかかるだろうが…ここが勝負どころだ。頑張ってくれ』


『ああ。俺はこれでも未来の金メダル候補だったんだぞ。体力には自信がある』


二人は三日間かけて種子島全体を電波で覆った。


そして東北の民間ロケット会社と同様に詳細なスケジュール表を手に入れ、物資の搬入日の情報を手に入れた。これでカグヤをロケットに乗せる準備は出来たことになる。


『一番の大仕事を終えたな。それでは帰るぞ』


『ああ』


隼人はフェリーに乗った。カグヤが金属探知機に引っかかるので空路は使えない。


『にしても…本当にきれいな島だな。世界一美しい射出場って言われるのもわかる』


船の上から島を眺めて隼人は呟いた。


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