1121話 噴火
俺は人生で最も酷い裏切りにあった。
変態であることを自白したにもかかわらず、エレナがおっぱいを見せてくれなかったのだ。
(おのれ……!!)
俺は激怒した。
必ず、かの邪智暴虐のエレナの胸を覗かねばならぬと決意した。
俺には女心がわからぬ。
俺は、ただの元無職である。
チートに頼り切り、ぬくぬくと冒険者生活を楽しんできた。
けれども女体に対しては、人一倍に敏感であった。
(マズイぞ……! 大きな期待をしていたせいで、俺の股間がエベレストの如く盛り上がってしまった……!)
モニカとニムなんて、既に俺の異変に気付いている。
このままでは、エレナやサーニャちゃんが気付いてしまうのも時間の問題だ。
特にエレナにバレるのはマズイ。
ここぞとばかりに、俺を変態扱いするだろう。
(落ち着け……。落ち着いて対処するんだ……! ひっひっふー……)
俺は必死に心を鎮めて、平常心を保つ。
まず、最優先すべきは俺のエベレストを平地にすることだ。
「だから、何をモゾモゾしているのよ?」
エレナが不機嫌そうに問う。
何とか誤魔化さないと……!
「い、いえ……。ちょっとかゆいなーと思いまして」
「ふーん。あんた、私に隠し事をするんだ? へぇ~? 変態のくせに、生意気ねぇ……」
エレナが鋭い視線を向けながら、ゆっくりと俺の方に歩み寄る。
このままじゃマズイ。
近づかれると、股間の隆起がバレてしまう……!
「あ、あの……。エレナさん? それ以上、こっちに来ない方がいいと思いますよ? ほら、俺は変態ではありませんが、男ですから」
「は? 何言ってんの? 砂に埋まっているんだから、あんたは動けないでしょ」
エレナが呆れた様子で言う。
その通りだ。
俺は、身動きが取れず、逃げることもできない。
だからこそ、彼女も俺に近づいてくるのだろう。
「ふふっ……。本当にバカな奴ね。大人しく自白を――って、あら?」
「えっ?」
エレナが俺の目の前に立ち止まる。
彼女は不思議そうな表情を浮かべて、俺の股間あたりを凝視し始めた。
「な、なんですか……?」
「砂が……変な崩れ方をしているような……?」
エレナは首を傾げつつ呟いた後、しゃがみ込んで俺の股間あたりに手を伸ばす。
俺は、なかなかの量の砂に埋められている。
股間部だけがやや崩れていたが、それでも俺の水着や体が見えるほどには崩れていない。
「埋め方が甘かったのかしら……? それとも、風で……?」
エレナが再び首を傾げる。
まさか、砂の下で俺のモノが隆起しているとは想像もしていないようだ。
「うーん……。よくわからないわね。まぁ、いっか。とりあえず、もう少し固めておこうかしら」
「!?」
エレナはそう言うと、再び俺の股間部あたりの砂をポンポンと叩いた。
俺の上には大量の砂があるとはいえ、股間部の砂はやや崩れている。
つまり、エレナの手で叩かれた感触が少なからず伝わってきたのだ。
「おほぉ……!」
俺は情けない声を出してしまった。
今の衝撃で、俺のエベレストにさらなる刺激が与えられたからだ。
(ヤバイ……。このままじゃ、俺のエベレストが噴火してしまう……!)
俺は焦燥する。
このままだと、エレナやサーニャちゃんが見守る中で醜態を晒すことになる。
それだけは避けなければならない。
「な、何よ……。砂ごしに、少し叩いただけじゃない。そんなに大きな声を出して……。Dランクとはいえ、一応は冒険者でしょ。この程度の痛みで叫ぶんじゃないわよ」
「い、いや……。痛かったというか、気持ち良かったというか……」
「は?」
「いえ、何でもありません……」
俺は慌てて取り繕った。
こんな状況で、さらに変態扱いされたら堪らない。
「ふんっ……。まぁ、いいわ。これで、だいぶ固まったでしょう。さてと……。じゃあ、私はそろそろ行こうかしら」
「えっ? 俺は……?」
「しばらくはそうしていなさい。私たち『三日月の舞』が、このビーチにいる間はね。変態が自由な状態だと、安心して楽しめないもの」
「……」
俺は反論できない。
いや、する必要もないか……。
変態扱いを撤回させられなかったのは残念だが、今はこの場を穏便に乗り切ることが優先だ。
エレナたちが去れば、しれっと生き埋め状態から脱出しておけばいい。
何も、彼女たちが海水浴を終えるまで律儀に埋まっている必要はないだろう。
「じゃあね」
エレナがそう言って、しゃがんだ状態から立ち上がる。
その時、彼女の尻がちょうど俺の視界に入った。
(なっ……!? く、食い込んでいるだとぉ……!!)
俺の視線の先では、水着のボトムがかなりきつめにエレナの秘所へと喰い込んでいた。
おそらく、先ほどしゃがんでいた際に食い込んでしまったのだろう。
「す、素晴らしい光景だ……! 桃源郷は、ここにあったんだ……!!」
「は?」
俺の感動の言葉に対し、エレナが振り返って怪しむように眉根を寄せた。
その瞬間――
ドゴーン!!
まるで噴火したかのような勢いと共に、俺の股間部を埋めていた砂が盛大に飛び散ったのだった。
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