756話 ネスターとシェリーへの加護(小)付与

 ネスターとシェリーを奴隷身分から解放した日の夜。

 俺は宿屋の自室で、今日の出来事を整理していた。


(ふふふ……。2人に喜んでもらえてよかった。返還金を彼らに渡すまでは当然のこととして、その後の臨時ボーナス、祝い金、結婚式の諸経費の負担はさすがに無視できない額だったが……。結果的には無理した甲斐があった)


 俺は満足していた。

 今日、ネスターとシェリーの忠誠度はかなり上昇したのだ。

 結婚式の本番はまだだが、それを待たずして加護(小)の条件を満たした。

 彼らの簡易ステータスを確認しておこう。



レベル?、ネスター=アーガレイ

種族:ヒューマン

身分:平民

役割:主任警備兵

職業:槌士

ランク:C


HP:??

MP:??

腕力:高め

脚力:??

体力:??

器用:??

魔力:低め


残りスキルポイント:???

スキル:

剣術レベル3

槌術レベル3(2+1)

闘気術レベル2(1+1)

??



 ネスターの身分はついさっき、奴隷から平民になった。

 俺が正規の手続きで解放したからだ。

 ステータス上もしっかりそれが反映されている。


 彼のハイブリッジ家における役割は主任警備兵だ。

 これは以前と同様である。


(ネスターは安定した能力を持つし、頼りになる存在だよな)


 彼の立場は筆頭警備兵キリヤの下。

 主任警備兵クリスティと同格にあたる。

 一般警備兵ヴィルナ、ヒナ、シェリー、あるいは後追いで雇用したその他の警備兵たちをしっかりとまとめてくれることだろう。


 キリヤとクリスティは統率力や管理力ではなく、純粋に戦闘能力を評価してその地位が与えられている。

 総合的な能力が高く何でもそれなりにこなすネスターは、今後もハイブリッジ家のためになくてはならない存在だ。


(職業は槌士……。以前は剣も使っていたようだが、ハイブリッジ家の元で訓練していくうちに槌の才能が見出されたのだったな)


 彼は警備兵として働いている。

 だが、ハイブリッジ家の警備シフトにはそれなりの余裕を持たせてある。

 ずっと働き詰めになるわけではなく、十分な休養や余暇時間、それに自分を高めるための時間も確保することも可能だ。


 俺を含めミリオンズには多種多様な魔法・武器の使い手がいる。

 それまでの経歴に拘らずに、各自に合った戦い方を見つめ直すには最適の場所である。


(ステータス上も腕力が高いみたいだし、ハンマーは十分に使いこなせるだろう。スキルは剣術レベル3に対して槌術レベル2だったようだが、加護の恩恵で槌術はレベル3に上がっている。やはり今後は、ハンマーをメインにしてもらうのが良さそうだ)


 俺はそんなことを考えつつ、次にシェリーのステータスに目を通す。



レベル?、シェリー=アーガレイ(旧姓:メイネ)

種族:ヒューマン

身分:平民

役割:警備兵

職業:水魔法使い

ランク:C


HP:??

MP:高め

腕力:低め

脚力:??

体力:??

器用:??

魔力:??


残りスキルポイント:???

スキル:

剣術レベル2(1+1)

弓術レベル3

水魔法レベル3(2+1)

??



 シェリーの身分もネスターと同様で、ついさっき奴隷から平民になった。

 彼女の旧姓はメイネだったそうだが、結婚を機にネスターの姓であるアーガレイを名乗ることになる。

 まだ結婚式は挙げていないが、籍を入れる際に姓の変更手続きは済ませている。


 彼女のハイブリッジ家配下としての役割は、一般の警備兵だ。

 今や、ハイブリッジ家の専属警備兵は10人を軽く超える。

 その内の6人は、俺が騎士爵を授かった直後から警備兵を務めている。


(カッコよく言えば、『原初の六人』というわけか……。まぁ、たった今適当に考えただけだが)


 筆頭警備兵キリヤ。

 卓越した双剣使いで、雷魔法も操る。


 主任警備兵クリスティ。

 赤猫族として抜群の身体能力を誇り、アイリスの指導の元で技術面もメキメキ向上中。

 自分で言うのもなんだが、俺に対して淡い恋心のようなものを抱いている様子だ。


 主任警備兵ネスター。

 6人の中では最も年上であり、落ち着いた佇まいから臨機応変に戦局に対処できる。


 一般警備兵ヴィルナ。

 キリヤの妻であり、そのコンビネーションは抜群。

 兎獣人としての聴力を活かした索敵能力に加え、細剣や光魔法による戦闘能力もそこそこ高い。


 一般警備兵ヒナ。

 文官トリスタの妻であり、遠い先祖にハーピィがいる先祖返りの元気っ娘。

 『天眼』という空から俯瞰し見下ろすような技を持っており、戦局把握能力は非常に高い。


 最後に、一般警備兵シェリー。

 この度、ネスターの妻となった。

 元々は特殊な技能を持っておらず、Dランク上位の実力を持つネスターのサポート役のようなポジションだったらしい。

 だが、今の彼女は水魔法の使い手だ。

 ミリオンズにて様々な魔法や武器のテストを受け、水魔法の適性を見出されたのだ。


(ふむ……。なかなかバランスの良いメンバーになったのではないか?)


 俺は満足していた。

 この『原初の六人』を突破できる曲者など、そうはいないだろう。

 後追いで雇った警備兵は他にもいるしな。

 これからもどんどん戦力を増やしていき、より強固な集団に育て上げていきたいものだ。


(これで、『原初の六人』は全員が加護持ちか。長い道のりだったが、その見返りは大きいな。そして……)


 今回の掃討作戦を通して、加護(小)を満たしそうな者が他に2人いる。

 明日は、その片方にアプローチしてみることにしよう。

 ノノンはまだ事後処理が落ち着いていないだろうから、まずは……。

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