643話 貴族たちとの交流
食事会は和やかに進んでいく。
新郎の俺に、新婦のニム、ユナ、マリア、サリエ、リーゼロッテ。
それぞれが楽しんでいる。
もちろん俺たちだけじゃなくて、参加者の王侯貴族も楽しんでくれている様子だ。
この機会に話し掛け、親睦を深めておくか。
「どうです? 楽しんでいただけていますか?」
俺はそう切り出す。
「これはハイブリッジ騎士爵。改めてご結婚おめでとうございます。楽しませていただいておりますよ」
「私もだ。それにしてもめでたい。君の活躍により、サザリアナ王国はさらなる発展を遂げるだろう」
「我が領地にも君の恩恵が及んでおるぞ。民草の生活が少し豊かになったと聞いておる」
貴族たちがそう答える。
一口に貴族とはいっても、俺との上下関係はまちまちだ。
俺は騎士爵なので、貴族家の当主本人としてはシュタインと並んで最下層ではある。
ただし、この場には当主の名代として来ている者もいる。
例えば男爵家の息子との比較であれば、騎士爵の当主本人である俺の方が偉い。
まあ実際にはそれほど厳密なものでもないようだが、サリエに叩き込まれたおかげで最低限の序列は把握しつつある。
「いえいえ。先ほども紹介させていただきました通り、優秀な配下たちの功績も大きいです」
俺はそう謙遜しておく。
「何を言う。彼らを見出して登用し、その適性を見抜いて力を発揮させた功績は君のものだろう?」
「その通り。正直に言えば、平民や奴隷を重宝しているのはどうかと思っていたが……。あれほどの人材揃いであれば納得だ」
「まことに素晴らしい! 君、あんな人材をどこで?」
ビズr……。
じゃなくて。
「いやあ、ははは。たまたまめぐり合わせが良かっただけですよ」
俺はそう言葉を濁す。
加護付与スキルを適用することを考え、俺に対して当初から忠義度が高めの者を中心に登用してきた。
無事に加護が付けば、彼らの能力は強化される。
そしてそもそもの忠義度が高めなので、基本的にはマジメに働いてくれるというわけだ。
世界滅亡の危機に立ち向かうためには、いずれ彼らサザリアナ王国の貴族たちと協力する必要もあるだろう。
その際、加護付与スキルの存在を明かすかもしれない。
しかし、さすがにまだ時期尚早だ。
俺は貴族になったとはいえ、その中では最下層の騎士爵。
下手に公開すれば、悪いように利用されるリスクがある。
「ささ、そんなことより、飲み進めましょう。この領で自慢の飲み物を揃えていますよ」
「おお、ありがたい」
「いただこう。ここの酒はうまいものばかりで、心地よい」
「いい感じに気分が高揚してきたぞ」
俺は茶色の飲み物が入った瓶を傾け、貴族たちのグラスに注いでいく。
最後に俺のグラスにも注ぐ。
「「「ワーッハッハッハッハ!!」」」
俺たちは笑い合いながら、グラスを突き合わせる。
ガチンという心地よい音が響く。
グビグビ……。
豪快にグラスを傾け、喉を潤す。
うまい!
が、これは……。
ダンッ!
俺たちは中身が空になったグラスをテーブルに勢いよく置く。
「「「麦茶だこれ」」」
……とまあそんなハプニングはありつつも、参加者たちはごきげんな様子だ。
出来上がった彼らの視線は、5人の花嫁たちに改めて向けられている。
彼女たちは仲良く食事会を楽しんでいる。
「見ろ……。あの花嫁たちの仲睦まじさを……」
「ああ……。美しい光景だ……」
「ハイブリッジ騎士爵の度量の大きさのなせる技か?」
「一夫多妻だと、どうしても妻同士の争いが勃発しやすいものだが、そういう気配がない」
「あれが真の愛というものだ」
「私の第一夫人と第二夫人は冷戦状態でね……。コツを教えていただきたいな」
参加者たちからそんな声が漏れる。
確かに、俺の妻たちは今のところ仲がいい。
ハーレムをつくると、やはり一般的にはギスギスしやすいのだが、俺の嫁はみんないい子ばかりだからなぁ。
それに、俺のチートにより稼ぎが非常に安定して高いことも一因だろう。
女性がいくら増えようとも、各人やその子どもを養っていくのに十分な収入がある。
他の者を蹴落とす必要がない。
「ハイブリッジ騎士爵の奥方といえば、本日の合同結婚式は第四夫人から第八夫人のものだったな?」
「ああ。第一夫人から第三夫人までとは、既にご結婚されておられる」
「今日の結婚式では見掛けていないな……。やはり、奥方同士で不仲なのかね」
「さて……。まぁ、あまり詮索するのは無粋というものだろう」
「あの有名な方々には会ってみたかったがな」
「確かに。ミティ殿、アイリス殿、モニカ殿……。それぞれが特定分野で一流の腕を持つとの話だ」
参加者たちが、小声で噂話をしている。
ミティ、アイリス、モニカについては、今日の結婚式には隅っこでひっそりと出席していた。
妊娠中の彼女たちに負担を掛けないためだ。
大っぴらに彼女たちを紹介したわけではないので、参加者たちからすれば不参加と思ってしまっても仕方がない。
だが……。
「皆様。お食事の方は楽しんでいただけておられますでしょうか? 本日は私の第四夫人から第八夫人の合同結婚式ですが、この場を借りて第一夫人から第三夫人の紹介もさせていただこうと思います」
俺は壇上に上がり、そう宣言した。
「「「おおぉーーーーーー!」」」
会場内が沸き上がる。
やはり、みんな気にしていたんだな。
負担のない範囲で、俺の愛しい妻たちを紹介させてもらうことにしよう。
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