572話 レインの秘め事再び
透明マントを羽織ったままトイレに行ったところ、クリスティと遭遇した。
覗きの誘惑に負けた俺はそのままクリスティのプライベートなシーンを見てしまう。
その結果、クリスティに蹴られ、吹っ飛ばされてしまった。
幸いにもケガはなかったが、彼女もさすがにやり過ぎたと思ったらしい。
「わ、悪かったよ、ご主人。つい力が入りすぎた」
「いやいや、俺が悪い。すまん……」
俺とクリスティは互いに謝っていた。
もちろん、悪いのは俺だ。
「それにしても、なんでそんな魔道具を羽織ってトイレに来たんだよ?」
クリスティが尋ねてきた。
「あー、ちょっと考えごとがあってな。脱ぐのを忘れていたんだ」
直前まで、透明マントの試運転中だった。
その後考えごとをしながら歩いていた結果、透明マントを羽織ったままトイレに突撃してしまったというわけだ。
「ま、いいや。今度から気をつけろよ。次に覗いていたら本気でぶっ飛ばすからな」
先ほどの蹴りは、本気ではなかったらしい。
かなりの威力だったのだが。
「そうだな。今後は気をつけるようにする。今回は本当にすまなかった」
俺は改めて謝罪する。
そして、クリスティと別れ俺はトイレに入る。
そもそもここに来たのは、用を足すためなのだ。
「ふう……。たくさん出そうだな……」
俺はそう呟きつつ、あそこに力を入れる。
水音と共に放出が始まった、そのとき。
「はん! これがご主人のあれかよ」
俺の隣から、あそこを覗き込む女性がいた。
先ほど別れたはずの、クリスティだ。
「おまっ!? なんでここにいるんだ!?」
俺がそう尋ねると、彼女は勝ち誇ったように言う。
「はん! もちろんさっきの仕返しだぜ! ご主人の恥ずかしいところを見てやるよ!!」
「こいつ……!」
俺は怒りを覚える。
まさか、またこんなことをされる日が来るとは思わなかった。
犯罪奴隷のクリスティが、騎士爵の俺のプライベートなシーンを覗くとは……。
「他のみんなが言うには立派なモノを持っているそうだけどよ……。今は縮んでるな」
そう言って、彼女は俺の股間を観察する。
「ちょ、やめろ! まじで怒るぞ!?」
俺がそう言って止めようとするものの、彼女は止まらない。
「はん。こうして見ると結構可愛いかもな……」
ブツブツ言いながら、さらに観察を続ける。
男のモノを見て”可愛い”という感想は禁句だ!
「おい、もう十分だろ?」
俺が止めるよう促すと、クリスティはニヤリと笑みを浮かべた。
「ご主人のあそこは小さいけどよ……。本当に立派になるのかよ?」
「なんだと……? 試してみるか?」
「はん! ま、ご主人は強いけどよ……。そういうことをする気にはならねえな!」
そう言って、クリスティは去っていった。
俺は溜息を吐く。
まったく、あいつはどこまで自由な奴なのだろうか。
奴隷と主人という関係性を微塵も意識していない。
まあ、不当に虐げるつもりはないので別にいいのだが。
俺は用を終え、手を洗う。
そして、入浴後の着替えを用意するために自室に向かい始めたのだった。
●●●
自室の前に戻ってきた。
何やら、部屋の中から声が聞こえる。
「……ん……あ……」
侵入者だろうか?
俺は騎士爵だし、命を狙われても別におかしくはないよな。
殺されるほど人に恨まれることをしている自覚はないが、金目の物を狙ってくる輩は一定数存在するだろう。
とりあえず、臨戦態勢を整えて部屋に入るか。
万全を期すならば、部屋に入らずに警備兵を呼ぶのがいいだろう。
もしくは、部屋の外から上級火魔法をぶっ放して万象一切を灰燼と為すかだ。
とはいえ、たかが侵入者ごときにそこまでする必要もない。
Bランク冒険者の俺が負けてしまうような相手はそうそういないからな。
真正面から撃退してやろう。
……いや、待てよ?
ちょうど、先ほどまで試運転中だった透明マントがあるじゃないか。
これを羽織って中に入れば、侵入者に気取られずに済むのではないか?
よし、それでいこう。
俺は透明マントを羽織り、ドアを開ける。
すると、そこには……。
「ああっ! そこぉっ!!」
俺のベッドの上で横になっているレインの姿があった。
彼女は一心不乱に自分の身体を弄っている。
「すーっ、はーっ。お、お館様ぁ……」
彼女が俺を呼ぶ。
気配を感じ取られたのかと思ったが、そういうわけではないようだ。
彼女の鼻には、俺のシャツが当てられている
俺のシャツを嗅ぎながら、自分を慰めているらしい。
「ああっ! 気持ちいい……」
俺の匂いで興奮し、その感情を昂らせているというわけだ。
つい先ほど、俺の手で昇らせてやったというのに……。
それに、今夜この部屋に来るように命じている。
待ちきれず、またムラムラしてきたということなのか。
「はあ、はあ……。我慢できないぃ……。もういっかい……」
彼女はそう言うと、再び行為を始めようとする。
人の部屋で何をしているんだと、叱責するのは容易い。
しかし、あまりいじめすぎるのもな。
いや、彼女の場合はむしろいじめた方が忠義度が上がるのか?
…………まあ、今はジェイネフェリアの方を優先するか。
せっかくの貴重な魔道技師だ。
男同士で裸の付き合いをして、少しでも親睦を深めておこう。
あとほんの一歩で加護(小)の条件を満たすレインのことは気になるが、今夜うまくいけばなんとかなるはずだ。
「んんっ! お館様っ! そこはダメです! ああっ!!」
妄想の中の俺と交わるレインを尻目に、俺は着替えを静かに取り出し、そそくさと部屋を退出したのだった。
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