445話 ”支配者”ウィリアムvs”烈風”イリア
俺は下心満載でサリエに日焼け止めを塗り終え、ゆっくりしている。
その横では、他の冒険者たちが続々と海に入っていった。
「よっしゃあ! いくぜ、野郎ども!」
「うらー!」
トミーたちCランク冒険者は、やはりガタイがいい。
筋肉も発達している。
選別試験やアヴァロン迷宮ではそこそこ程度の活躍にとどまっていたが、やはり能力は確かだと見て間違いないだろう。
「ふん。海は久しぶりじゃの」
”烈風”イリアが仁王立ちして、海を眺める。
口調は年寄り臭いが、外見は幼女。
のじゃロリである。
「……イリアよ。少し露出が多すぎるのではないか……」
熊獣人の”解体者”ボネスがそう注意する。
彼の言う通り、イリアの水着は露出が多い。
ユナのビキニより布面積が小さい。
いわゆるマイクロビキニというやつだ。
「これも修行じゃ。海風を肌で感じることにより、風魔法の上達に繋がる」
イリアがそう言う。
本当か?
森を全裸で疾走していたこともあるし、彼女には露出狂の疑いがある。
俺も同罪だし、偉そうなことを言える立場ではないが。
イリアのマイクロビキニ姿は刺激的だ。
俺は釘付けになる。
しかし、彼女に注目している男は俺ぐらいのようだ。
くっ。
ロリコンは俺だけということか。
……いや、待て。
少し離れたところからイリアの姿をガン見している男がいる。
あれは……。
「ほう。やつが”烈風”イリアか。見事な体だ……」
”支配者”ウィリアムだ。
彼はロリコンだったのか?
ボネスにライバル出現である。
「ウィリアム様! 体であれば、わたくしめの体をいくらでも……」
「がうっ! 私も付き合うぞっ!」
彼のパーティメンバーであるニューとイルがそう言う。
彼女たちは、オーソドックスで健康的な水着を着ている。
とても魅力的だが、俺には人の女に手を出す趣味はない。
ウィリアムも、人の女に手を出すのではなく、自分のパーティメンバーで満足すればいいのに。
「そういう意味ではない! ……俺にはわかる。見た目に現れぬ、内に秘められた極限をも超えた鍛錬の結晶が!!」
ウィリアムがそう叫ぶ。
イリアの肉体が鍛えられているだと?
イリアはBランク冒険者だ。
風魔法の達人であり、彼女にかかれば初級魔法の”エアバースト”でさえ必殺技級の威力となる。
俺は彼女のことを風魔法使いだと思いこんでいた。
しかし、実は体も鍛えており武闘も可能だったのか?
ウィリアムは”支配者”という二つ名を持つだけあり、人の能力を見極める能力に秀でているようだ。
「”烈風”イリアよ。お前は俺が”支配”するに値する。受け入れろ……」
ウィリアムが手をかざし、何かの技を発動させようとする。
だが、その前にーー。
「……弾けろ。エアバースト」
ブオンッ!
強烈な突風が巻き起こる。
「ぬああ~!」
ウィリアムが風により弾き飛ばされていった。
海の沖合の方角だ。
「ウィリアム様!」
「ご主人様っ!」
ニューとイルがすぐに助けに向かう。
ウィリアムも相当鍛えているし、飛ばされたのは海の方角だし、死にはしないだろう。
「……イリア。やり過ぎではないか……?」
「ふん。あんな小僧のナンパに付き合ってやるほど、妾は暇ではない」
ウィリアムは何かの技を発動しようとしていた。
しかし、イリアにとってはただのナンパ扱いか。
俺はウィリアムのことをライバルだと感じているのだが、そんな彼でもベテラン冒険者のイリアにかかれば形無しだな。
「……そうか……」
ボネスがそう言う。
何やら、ホッとしているような雰囲気を感じる。
「ん? ボネスよ。妾が他の男に取られずに済んで安心したかの?」
「……そんなことはない……」
「誤魔化すでないぞ。ほれほれ」
イリアが面白いオモチャを見つけたようなノリで、ボネスに絡んでいる。
小さな胸を、ボネスに押し付けて遊んでいる。
ボネスはたじたじである。
この2人の関係性は、よくわからんな。
ロリコンの俺にとって、合法ロリのイリアは非常に魅力的な存在である。
ボネスにその気がないのであれば、俺もアプローチしたいところなのだが……。
俺がそんなことを考えているとき。
新たな参戦者が2人現れた。
「ガハハ! ”烈風”イリアよ! 武闘家として手合わせ願いたい!」
「ガハハ! 俺も参戦するぜ!」
ギルバートとジルガだ。
ムキムキマッスルな武闘家のおっさんたちである。
2人ともブーメランパンツを履いており、鍛え抜かれた体を見せつけるポーズをとっている。
サイドチェストとモストマスキュラーだ。
「なんじゃ。いいところじゃったのに。無粋な坊やたちじゃの」
イリアはボネスから離れる。
からかって遊んでいたところを邪魔されて、やや不機嫌そうな感じだ。
「いくぞぉ! ジルガ!」
「おうよ! ギルバート!」
2人が闘気を高め、イリアに駆け寄っていく。
「「ビッグ……バン!!!」」
ギルバートと右ストレートと、ジルガの左ストレート。
息のあった同時攻撃である。
これに対抗できる者はそう多くないはずだがーー。
パシッ。
イリアが左右それぞれの手で、2人の攻撃を受け止める。
「ふん。これで全力か? ガキども」
「な、なにっ!?」
「バカな……」
2人が驚愕の表情を浮かべる。
自慢のパンチをあっさりと受け止められたことが想定外だったようだ。
「運がいいな。風魔法での戦いなら、お前らを殺してしまう可能性があった」
イリアがそう言う。
魔法を人に向けて放つ場合は、適度に加減しないと殺してしまうリスクがある。
ラスターレイン伯爵家の面々も、俺たちに対するトドメの攻撃は殺傷力の低い『永久氷化』を使っていた。
「そうら。さっきの小僧のところに行ってきな!」
イリアはそう言って、2人を軽くぶん投げた。
ウィリアムが飛ばされていったところと同じあたりだ。
マッスルな大男をそれぞれ片手でぶん投げるとは、相当な怪力だ。
闘気の出力が並ではない。
「「ぬああああぁっ!」」
2人が悲鳴を上げながら空を飛んでいく。
ザパーン!
大きな飛沫を上げて、海に落下する。
ちょうど、その落下地点にはーー。
「ぐっ! がぽがぽ……」
「ああっ! ウィリアム様が!」
「お前ら! ご主人様に何をっ!」
ニューとイルがそう文句を言う。
ギルバートとジルガの落下地点は、ちょうどウィリアムの真上だった。
ウィリアムは踏んだり蹴ったりだな。
まあ、何かしようとしていたし自業自得なのだが。
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