423話 リベンジ組と救出組

 みんなのスキル強化を終えた。

 サリエの治療魔法により、俺たちはHP、MP、体力、闘気などが全快の状態である。

 今度こそ、ラスターレイン伯爵家に勝てるだろう。


「ふむ……。よくわからぬが、拙者の力が増していることは間違いないようでござる」


「ピピッ! この場の10名の能力が大幅に向上したことを確認。要因不明。取り急ぎ情報を更新します……」


 ティーナがそう言う。

 10名とは、俺、ミティ、アイリス、モニカ、ニム。

 ユナ、マリア、サリエ、リーゼロッテ。

 そして蓮華だ。


 みんなかなり強くなった。

 蓮華以外は、ミリオンズの面々である。

 彼女も、この流れでミリオンズに加入してくれないだろうか?

 そして、あわよくば俺のハーレムに……。


 風魔法の修練で全裸を見せあった仲だし、加護(小)を付与できるぐらいには好感度が高いし、可能性はなくもないはず。

 まあ、この緊迫した局面で言うことでもないか。

 無事にラスターレイン伯爵家を倒し、闇の瘴気を浄化し、ドラちゃんを救出できてから考えよう。


 また、高性能ゴーレムのティーナもぜひ持ち帰りたいところだ。

 アヴァロン迷宮はラスターレイン伯爵家の領地にあり、彼らによって管理されている。

 ティーナの所有権がだれにあるのかは……微妙なところだ。


 ダンジョン内で得た魔石や武具は、拾った冒険者の所有物になる。

 しかし、ティーナはダンジョンに備わっていた防衛兵器の類だ。

 技術的にも、かなり貴重なものだろう。

 例外的に、ラスターレイン伯爵家やサザリアナ王国王家に接収されるかもしれない。

 簡単に所有権を諦めるつもりはないが、ひと悶着ぐらいは覚悟しておく必要がある。


「ピピッ! 個体名:トミーたちの氷牢獄状態が、間もなく解除されます」


 俺たちがスキル強化をしている間に、ティーナに魔力を供給して氷牢獄状態を解除してもらっていた。

 直ちに命に影響はないとはいえ、このままずっと放置しておくのも気が引けるからな。


 パリン!

 トミーたちの氷が割れる。


「お、おおっ! タカシの旦那! 無事だったんですかい」


「俺は……。確か、水魔法にやられて……」


 トミーたちが自由になり、自身の様子を確認している。

 凍傷などはない様子だ。


「ああ。あのときは負けてしまったが、このまま引き下がる俺たちではない。今からリベンジに行くところだ」


 俺はそう言う。

 ステータス操作のことは話さないほうが無難だろう。

 彼らは悪い者ではないが、忠義度が極端に高いわけでもないからな。


 一番忠義度が高いトミーで、忠義度34。

 他のも忠義度30前後の者がチラホラいる。

 しかし、低めの者は15~20ぐらいの者もいる。


 忠義度15~20といえば、ごく普通の友人くらいの感覚だ。

 俺のほうが冒険者ランクが高いことを踏まえると……。

 『そこそこの信頼関係を築いている上司と部下』ぐらいの距離感だろう。

 ある程度は信用できるが、機密性の高いことをホイホイ話すわけにもいかない。


「す、すげえ! さすがはタカシの旦那だ!」


「俺たちもいっしょにリベンジを……と言いたいところだが、俺たちじゃ足手まといになるかもしれねえ」


 それはどうだろうか。

 確かに、強力すぎる相手と戦う際には、実力不足の仲間は足手まといになる。

 殺されないように俺たちがカバーしたり、治療したりしなければならないからな。


 しかし、ラスターレイン伯爵家には俺たちを殺すつもりはないようである。

 殺傷能力の低い『永久氷化』を使ったのがその現れだろう。

 トミーたちが参戦してどの程度の戦力になるかは微妙だが、明確にマイナスというほどではないと考えられる。


 うーん。

 しかし、これはラスターレイン伯爵家の温情を前提としている。

 回復して再度立ち向かったら、今度こそ殺されてしまう可能性もある。

 ラスターレイン伯爵家の面々は良識ある性格のようだが、先程よりも闇の瘴気の汚染が進んでいる可能性もある。

 トミーたちを連れていくのは、ややリスキーか。


「ピピッ。マスター:タカシの意向を推測中……。ダンジョン内にて同じく氷牢獄に囚われている者の救出を提案します」


「む? 詳しく頼む」


「アヴァロン迷宮5階層の入口付近にて、数十名が氷牢獄に囚われています。個体名不明」


 もしかすると、リールバッハたちの隊にいた冒険者たちだろうか。

 姿が見当たらないから、どうしたのかと思っていたんだ。

 俺たち第六隊と同じように、ラスターレイン伯爵家の水魔法にやられたのかもしれない。


 5階層の入口ということは、おそらく各隊がダンジョン攻略を進めてようやく合流したタイミングだったのだろう。

 合流して気が緩んだスキを突いて、リールバッハの隊に潜り込んでいたセンが闇魔法を開放して、ラスターレイン伯爵家の面々を汚染した。

 道中で疲れていた各隊の冒険者たちは、為す術もなく無力化されてしまったといったところか。


「よし。ラスターレイン伯爵家は俺たちミリオンズに任せてくれ。トミーやティーナたちは、他の冒険者たちの救出を任せる」


「承知しましたぜ、タカシの旦那!」


「ピピッ。命令を受諾しました」


 これで方針は決まった。


 俺たち10人は、ラスターレイン伯爵家にリベンジを挑む。

 俺、ミティ、アイリス、モニカ、ニム。

 ユナ、マリア、サリエ、リーゼロッテ、蓮華だ。


 残りのトミーやティーナたちは、他の冒険者たちの救助だ。

 シュタイン、マクセル、ギルバート、イリアなど、俺も知っている者たちがたくさんいる。

 氷化状態はただちに命の危険はないものの、早めに解除しておくに越したことはない。


 みんなそれぞれ、がんばらないとな。

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