341話 マリアのスキル強化 

 マリアの冒険者登録が終わった。

さっそく北の草原にある”北の練習場”にやってきた。


 このあたりには、ファイティングドッグぐらいしか魔物がいない。

初級冒険者にはもってこいの狩場である。


 強いて言えば、草の生い茂っているところがやや死角となっており、ファイティングドッグの奇襲がないか警戒する必要はある。

しかし、その点も対策済みだ。

ニムの土魔法により、北の練習場をグルっと囲むように堀と塀が設けられている。


 北の練習場内に死角はないので、奇襲を警戒する必要はない。

俺たちで1匹のファイティングドッグを北の練習場内に誘導さえすれば、練習者は目の前の戦いに集中できる。


「さて。さっそくマリアの戦闘を見せてもらいたいところだが。その前に、説明しておきたいことがある」

「え? なに?」


 マリアが、きょとんとした顔でそう言う。


「実は、かくがくしかじかでな……」


 マリアに力の件を説明する。

俺と一定以上親密になった人は、身体能力が全体的に強化され、特定の方向性で技術や力を伸ばすことができるようになる、というような説明だ。


 10歳になったばかりのマリアにどの程度まで話すかという点は、判断が難しい。

もちろん事前にミリオンズのみんなと相談している。

結論としては、みんなと同じ内容を共有することになった。


 加護付与の条件を満たしている時点で、むやみに秘密を言いふらしたりはしない。

気になるのは、悪意なく秘密を言いふらしてしまわないかという点だ。


 しかし、マリアは10歳とはいえ、物事の判断力は付いている。

王族というのもあるかもしれないが、年齢の割にしっかりとした娘だ。

口調や外見にはまだ幼さが残ってはいるが。


 自分の力を強化していくわけだから、できれば本人の意向を聞きながら強化していきたいという事情もある。

俺たちと別行動をしている間にも、彼女のレベルは少しずつ上がっている。

前回彼女のスキルを強化したのは4か月ほど前だ。

その時より彼女のレベルは2上がっており、未使用のスキルポイントが20ある状態である。


「へえー。すごいすごい! マリアも、いろんな力を強くしたいな!」


 マリアがそう言う、

あっさりと信じてくれたようだ。

アイリス、モニカ、ニム、ユナのときには、最初は半信半疑の様子だった。

マリアは純粋な性格をしている。


「ああ、もちろんだ。いろんな力を強化しよう。そのためにも、マリアの希望を聞いておきたいと思ってな」


 俺はマリアに、スキルのリストを書いて渡す。

彼女の現状のスキルと、取得できるスキルの主な候補だ。


 まだ幼い彼女に、あんまり多すぎる情報を渡しても混乱してしまうかもしれない。

ある程度は、絞った内容にしている。


「ええっと。よくわかんないよ」


 マリアが困り顔でそう言う。

絞ったつもりだったが、これでもまだ判断が難しかったか。


「今後も強化する機会はありますし、あまり難しく考える必要はありませんよ」

「そうだねー。まずは、今ある力を伸ばすのがいいんじゃないかな?」


 ミティとアイリスがそうアドバイスする。


「わかった! じゃあ、格闘術か、火魔法とか?」

「ああ。そのあたりがいいだろうな。実感も湧きやすい」


 格闘術や火魔法などの攻撃系のスキルは、自身の上達を身を以て感じられる。

基礎ステータス向上系やサポート系のスキルなども悪くはないが、まずは格闘術か火魔法のどちらかを強化するのがいいだろう。


「どっちにするの? 火魔法はタカシやユナと被るし、格闘術は私やアイリスと被るよね」

「そ、そうですね。悩ましいところだと思います」


 モニカとニムがそう言う。

確かに、パーティ内で役割が被るのはあまりよくない。

だがここはーー。


「ふふん。どちらかと言えば火魔法じゃないかしら。3人の合同魔法ができるようになれば、かなり心強くなるわよ」

「そうだな。俺もそっちがいいと思う。しかし、ここはどちらも伸ばしておくのもありだな。もったいぶって、ケガとかをしてしまうのが恐い」


 最初はレベルが上がりやすい。

ある程度経験を積む頃には、基礎レベルは上がっているし、それに伴ってどんどんスキルを強化していることだろう。

度胸や自信も自然と付いてくる。

加護付与を活かした新人育成にあたっては、加護を付与したばかりの最初期にもっとも注意が必要となる。


「マリアは、ちょっとぐらいケガしてもだいじょうぶだよ?」


 マリアがきょとんとした顔でそう言う。

彼女は、祝福の姫巫女として抜きん出た生命力と回復力を持っている。

そのことについては、ミリオンズのみんなと共有済みだ。


「マリアの力でも、万が一ということもある。ケガをしないに越したことはない」

「そうだねー。ボクとタカシの治療魔法もあるけど、即死とかだとさすがにどうしようもないし」


 アイリスがそう恐いことを言う。

頭部に強烈な衝撃をくらったり、矢で心臓を射抜かれたりしたら、さすがのマリアでもヤバいだろう。

俺やアイリスの治療魔法があってもどうにもならない可能性が高い。


「わかった! なら、火魔法と格闘術を強くしてもらうおうかな」

「それがいいだろう。後は……、HP強化レベル1を2に伸ばしておこうか?」

「タカシお兄ちゃんに任せる!」


 マリアがそう言う。

なんだか、伸ばす方向を誘導したような形になってしまったな。

まあ、もともとの本人の希望から大きくずれてはいないだろう。

以前から、火魔法や格闘術には興味を示していたことだしな。


 さっそく、ステータス操作の画面を開き、格闘術レベル1を2に、HP強化レベル1を2に、火魔法レベル2を3に伸ばした。

これぐらいのステータスとスキルがあれば、ファイティングドッグあたりは楽勝だ。

ゴブリン、クレイジーラビットあたりも大きな問題はないかもしれない。

俺たちでサポートしつつ、どんどんレベルを上げていきたいところだ。



レベル7、マリア

種族:ハーピィ(鳥獣人)

職業:火魔法使い

ランク:E

HP:113(49+15+49)

MP: 58(25+8+25)

腕力: 29(22+7)

脚力: 29(22+7)

体力: 29(22+7)

器用: 29(22+7)

魔力: 29(22+7)


武器:ー

防具:レザーアーマー


残りスキルポイント0

スキル:格闘術レベル2

    HP強化レベル2

    痛覚軽減レベル2

    HP回復速度強化レベル5

    自己治癒力強化レベル3

    MP強化レベル2

    火魔法レベル3「ファイアーボール、ファイアーアロー、ファイアートルネード」


称号:

祝福の姫巫女

タカシの加護を受けし者

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る