297話 功績発表会 勲二等~勲四等

 盗掘団捕縛作戦の功績発表会の続きだ。

俺は、なんと勲一等をもらうことができた。

冒険者ランクがBに昇格となり、ギルド貢献値も8000万ガルに引き上げられる。

さらに、冒険者ギルドから国へ俺の叙爵を推薦してくれるという。


 俺個人としては、この上ない成果と言えるだろう。

あとは、モニカやミティたちの査定がどうなっているか気になるぐらいだ。


 次の功績者を発表するために、ギルドマスターのマリーが口を開く。


「続いて、勲二等。”雷脚”のモニカ!」

「えっ!? 私?」


 モニカが驚いた声でそう言う。


 俺たち先遣隊が眠らされて捕らわれてしまった後、モニカやストラスたちによる救出隊が組まれたと聞いている。

モニカは大活躍だったそうだ。

それにしても、勲二等をもらえるほど評価されるとはな。


 モニカがマリーの近くにまで歩いていく。


「救出隊として、ソフィアやパームスの他、多数の盗掘団メンバーを撃破した! さらに肉親のナーティアの存在に気づき、停戦のきっかけをつくった! 経験不足による独断専行があったようだが、それを補って余りある活躍だ。今後にも期待しているぞ!」

「わ、わかりました。がんばります?」


 モニカは、突然の事態に混乱気味のようだ。

本人としても、予想外だったのかもしれない。


「モニカは、新たに特別表彰の対象となることが決定した。二つ名は”雷脚”。ギルド貢献値は2600万ガルとなる!」

「ありがとうございます」


 冒険者ランクについては言及がなかったので、Cランクに据え置きのようだ。

とはいえ、モニカも特別表彰者になったか。

ギルド貢献値は2600万ガル。

ミティやアイリスの現時点での貢献値よりも高い。


 モニカがマリーのもとを離れ、下がる。

彼女にとっても、今回の盗掘団の捕縛作戦は成功と考えていいだろう。

特別表彰を受けることになったこともあるが、何よりも母親との再会だ。


 あれから、いろいろと事情を聞いておいた。

数年前に、ラーグの街から王都に向かう馬車が何らかの事故に巻き込まれたそうだ。

モニカの母ナーティアやニムの父パームスは、その馬車に乗っていた。


 モニカは、母はその事故で亡くなってしまったと思っていたそうだ。

これは彼女の早とちりではなくて、国の担当者から”今回の乗客については死亡してしまった可能性が極めて高い”と

公式発表があったのだ。

さらに、ラーグの街で合同の葬儀まで開かれたらしい。


 そうして亡くなってしまったと思っていた母親が、実は生きていたと。

さらに、俺とアイリスの治療魔法により、無事に記憶も取り戻した。

この上ないハッピーエンドだと言っていいだろう。

後は……、いい雰囲気になっていたダリウスとマムの関係が、どうなっていくかが気にはなるところだ。


 今この場で深く考えるのはよそう。

モニカの功績への言及が終わり、マリーが続けて口を開く。


「次に、勲三等。”武闘聖女”アイリス!」

「はーい」


 アイリスが3番目の功績か。

俺とモニカの功績を聞いた後だと、妥当に思える。


 アイリスがマリーの近くにまで歩いていく。


「タカシたちとともに先遣隊として盗掘団に大打撃を与え、捕縛作戦終了後には記憶喪失者の記憶の復元にも貢献した! 安定した活躍だ。今後にも期待しているぞ!」


 マリーの言う通り、アイリスの活躍は安定していた。

しかし、戦闘では俺よりも少しおとなしかった。

また、MP不足により通常のケガ人の治療までは手が回らず、俺やソフィアにその役目を譲った。

その点で、俺よりも少し控えめな評価になっているのだろう。


「りょーかい。任せてよ」


 アイリスが気安い感じでマリーにそう返答する。

彼女は、あまり名声などに拘らないところがある。

特にプレッシャーなどは感じていないようだ。


「アイリスは、ギルド貢献値を4100万ガルに引き上げることになった!」

「ありがとう」


 冒険者ランクについては言及がない。

アイリスも、Cランクに据え置きか。

俺の次にBランクに昇格するのは、ミティかアイリスと思っていたのだが。

彼女のBランク昇格は、次になんらかの功績を残したときまでお預けだな。


 アイリスがマリーのもとを離れ、下がる。

アイリスはアイリスで、順調な成長と成功を続けていると言っていいだろう。


 5か月前のメルビン杯では優勝を成し遂げた。

2か月前には、”武闘聖女”の二つ名とともに、ギルド貢献値2100万ガルが認定された。

さらに、エドワード司祭より、武闘神官の見習いからの卒業が告げられた。


 そして今回は、ギルド貢献値が4100万ガルに引き上げとなる。

次の目標は、冒険者ランクのBへの昇格や、聖ミリアリア統一教会における”聖女”認定の獲得あたりだろう。

まあ、彼女にそれほどの拘りはないかもしれないが。


 アイリスの功績への言及が終わり、マリーが続けて口を開く。


「次は、勲四等。”鉄心”ニム!」

「わ、わたしですか?」


 ニムが4番目の功績だ。

先遣隊のマクセルやミティ、それに救出隊のストラスやユナを差し置いての勲四等。

幼いのに、かなりがんばったと言えるだろう。


 ニムがおずおずとマリーの近くにまで歩いていく。


「救出隊として、ジョー副頭領など多数の戦闘員を撃破した! さらに肉親のパームスの存在に気づき、停戦のきっかけをつくった! 抜群の耐久力を活かし、隊の安定感の向上に貢献してくれたことを評価している」

「あ、ありがとうございます」


 マリーの言う通り、ニムの長所は抜群の耐久力だ。

”ロックアーマー”は初級の土魔法ではあるが、彼女の高い魔力によりかなりの硬度を誇る。

それをまとった状態から繰り出される彼女のタックルは驚異的だ。


 さらに、少し前には土魔法をレベル5にまで強化した。

今回はオリジナル土魔法の出番はなかったそうだが、これから出番はあるだろう。


「ニムは、新たに特別表彰の対象となることが決定した。二つ名は”鉄心”。ギルド貢献値は2300万ガルとなる! サザリアナ王国南部の冒険者ギルドにおける、特別表彰者の最年少記録を大幅に更新した。今後にも期待しているぞ!」

「が、がんばります!」


 冒険者登録は、10歳から行うことができる。

ニムは10歳と数か月のときに冒険者登録を行った。

それから8か月ほどが経過し、ニムは11歳となっている。

かなりの早さで特別表彰者になったと言えるだろう。


 ニムがマリーのもとを離れ、下がる。

彼女にとっても、今回の盗掘団の捕縛作戦は成功と考えていいだろう。

特別表彰を受けることになったこともあるが、何よりも父親との再会だ。


 モニカの母ナーティアと同じく、ニムの父パームスも、不慮の事故により亡くなってしまったと思われていたそうだ。

そうして亡くなってしまったと思っていた父親が、実は生きていたと。

さらに、俺とアイリスの治療魔法により、無事に記憶も取り戻した。

この上ないハッピーエンドだと言っていい。


 ここまで、勲一等から勲四等までの発表が終了した。

勲一等、タカシ。

勲二等、モニカ。

勲三等、アイリス。

勲四等、ニム。

見事にミリオンズが上位を独占している。


 まあ、俺とアイリスについては、戦闘だけではなくて治療魔法による貢献もある。

モニカとニムについては、たまたま捕縛対象に肉親が紛れ込んでいたという偶然性もある。

功績を残すという点で、まさに俺たち向けの任務だったと言えるだろう。


 続いて、勲五等以下が発表されていこうとしている。

ミリオンズでまだ名前が挙がっていないのは、ミティとユナだけだ。


 彼女たちも比較的上位には食い込んでいるとは思うが、果たして勲五等と勲六等をもらえるかどうか。

マクセルやギルバート、それにストラスやディッダなどの存在もある。

そろそろ彼らの名前が挙げられてもおかしくない。

勲五等以下の発表をドキドキしながら待つことにしよう。

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