267話 みんなのスキル強化 前編

 ハルク男爵邸にて、執事のセバス、メイドのレイン、メイドのクルミナとの顔合わせが終了した。

明日の朝、その3人とミリオンズでラーグの街に出発する予定だ。


 今は、ハルク男爵邸の客室にてくつろいでいるところだ。

俺、ミティ、アイリス、モニカ、ニム、ユナ。

6人でソファなどに座ってまったりする。


「ふう。俺たちも、とうとう執事やメイドさんを雇えるぐらいになったんだなあ」

「そうだね。なんだか信じられないなあ。ラビット亭を必死に1人で切り盛りしていた頃が嘘みたいだよ」

「そ、そうですね。わたしも、苦労していたあの頃からすると信じられないです。ママやお兄ちゃんもびっくりすると思います」


 俺の言葉を受けて、モニカとニムがそう言う。

彼女たちは、金銭的に困窮していた時期がある。

今の裕福な状態は、うれしく思っていることだろう。


「タカシ様のお力のおかげです。まだまだ上を目指しましょう!」

「そうだねー。ハルクさんの話だと、叙爵も狙えるみたいだし。魔物に盗掘団か……」


 ミティとアイリスがそう言う。

確かに、執事やメイドを雇っただけで満足せず、貴族になることも狙っていきたいところだ。


「ふふん。それなら、私たちの力を強化しておいたほうがいいと思うわ。確か、また強化できるようになっているのでしょう?」

「ん? ああ、そうだな。そろそろ強化しておこうか」


 ディルム子爵領でのキメラ戦や、その後の合同訓練、そして普段の冒険者活動など。

それらを通して、俺たちみんなのレベルが上がっていたのだ。

当然、それに伴ってスキルポイントも獲得している。


 俺はレベル20から21に上がった。

残りスキルポイントは20だ。


 ミティはレベル18から19に上がった。

残りスキルポイントは10だ。


 アイリスはレベル20から21に上がった。

残りスキルポイントは10だ。


 モニカはレベル14から18に上がった。

残りスキルポイントは45だ。


 ニムはレベル13から17に上がった。

残りスキルポイントは40だ。


 ユナはレベル19から20に上がった。

残りスキルポイントは10だ。


 それぞれの残りスキルポイントや取得済みのスキルを、あらためてメモに書いて共有する。

俺はステータス操作のスキルによりこれらの情報を視認できるが、ミティたちは視認できないからだ。

口頭による伝達だけでは、うまく考えがまとまらないだろう。

メモに書いて渡したほうが確実だ。


 ここで、スキル取得に必要なポイントを整理しておこう。

新たなスキルを取得するには、10ポイント。

スキルレベル1を2にするには、5ポイント。

スキルレベル2を3にするには、10ポイント。

スキルレベル3を4にするには、15ポイント。

スキルレベル4を5にするには、30ポイント。

以上のようになっている。


「わ、わたしはたくさん上げられますね。どうしましょうか……」

「私もだね。悩みどころだなあ」


 ニムとモニカがそう言う。

彼女たちは、もともとのレベルが低かった分、上昇幅が大きい。

スキルをたくさん強化できる。


「各自、じっくりと考えてみてくれ」


 俺はそう言う。

まあもちろん、普段からいろいろと考えてはいるだろうが。


 各自が悩む中、ミティが声をあげる。


「えっと。私は風魔法レベル2を3に伸ばしたいと思います」

「そうか。ミティは物理攻撃は十分だろうしな。ここらで魔法も強化しておくのがよさそうか」


 ミティは物理攻撃に秀でている。

槌術レベル5、投擲術レベル4、腕力強化レベル4、闘気術レベル4のスキルにより、近距離遠距離を問わず、強力パワーで敵を圧倒する。

また、格闘術レベル2、体力強化レベル1、器用強化レベル2も所持しており、物理戦闘においては安定した実力を持つ。


 一方で、魔法戦闘能力にはやや欠ける。

魔法関係のスキルは、風魔法レベル2とMP回復速度強化レベル1だけだ。


 長所である物理攻撃力をひたすら伸ばすのもありだが、弱点である魔法戦闘能力を補っていくのもありだろう。

ウォルフ村の防衛戦のように、1対1の戦闘になることもあるかもしれないしな。

柔軟性は上げておいたほうがいい。


「そうですね。みなさんのように、強力な魔法を私も使えるようになれば、もっと貢献できるようになるでしょうし」

「ミティは十分に貢献してくれているさ。だが、希望はわかった。一応、他のみんなの方針を聞いてから、後でまとめてスキルを強化することにしよう」


 これはいつもと同じ流れだ。


「わかりました」


 ミティの暫定の方針は決まった。

次はアイリスだ。


「アイリスはどうする?」

「うーん……。今回は保留にしようかなあ。10ポイントだと、強化できる力が限られているしなー」


 アイリスがそう言う。

確かに、10ポイントの使い道は限定的だ。

新しいスキルを1つ取得するか。

レベル1のスキルを2つまでレベル2に強化するか。

レベル2のスキルをレベル3に強化するかだ。


 アイリスに限った話ではないが、新しいスキルをほいほい取得していくのは避けたい。

器用貧乏になる恐れがあるからだ。

どちらかと言えば、取得済みのスキルを強化していくのがいいだろう。

俺にはスキルリセットがあるので、新しいスキルをお試しで取得していくのは俺が適任だ。


 アイリスが取得済みのスキルを強化する場合、気配察知レベル1、気配隠匿レベル1、視力強化レベル1、脚力強化レベル1、体力強化レベル2、操馬術レベル1などが候補となる。


 いずれも強化しておいて損はないスキルではあるが、是が非でも強化したいほどのスキルでもない。

……いや、待てよ?


「気配隠匿はどうだろう? 盗掘団とやらのアジトを調査する際に、役立つかもしれないぞ」


 西の森の奥地に居座っているという盗掘団だ。

彼らをうまく撃破することができれば、大きな功績となる。

俺の叙爵へ一歩近づくだろう。


「確かに、気配隠匿はよさそうだね。盗掘団相手なら、戦闘能力や聖魔法はさほど重要じゃないだろうし……。うん、気配隠匿を強化してもらおうかな」

「わかった。もう1つ、レベル1の力を何か強化しておくか?」

「いや、それは保留にするよ」

「そうだな。無理に強化する必要もないか」


 アイリスの暫定の方針は決まった。

次はモニカだ。


「モニカはどうする?」

「私は、雷魔法をレベル4に強化したい。あと、魔力強化レベル2……いや、レベル3まで伸ばしたいかな」


 モニカがそう言う。

彼女は、物理攻撃力随一のミティや、聖闘気を自在に操るアイリスとの戦闘能力の差を気にしていた。

雷魔法を伸ばすことによって、彼女ならではの戦闘技法を確立したいといったところか。


「わかった。雷魔法と魔力強化を伸ばして、魔法による戦闘能力を向上させたいということだな?」

「ふふ。もちろんそれもだけど、それだけじゃないよ。最近、いろいろと練習中なんだ。完成したら、タカシにも見せてあげるよ」


 モニカは、何やら新技を開発しているそうだ。

現状でも、雷魔法と武闘の合わせ技である”雷華崩脚”という強力な技がある。

さらに強力な技を体得してもらえれば、ミリオンズにとっても非常に有益である。


「そうか。それは楽しみだな。期待しておこう」


 モニカの暫定の方針は決まった。

次はニムだ。

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