228話 今後の対応策の相談
ディルム子爵に借金の返済を行ったが、土壇場で借金額をかさ増しされてしまった。
金貨500枚の返済のはずが、金貨1000枚となった。
ふざけるなと言いたいところだが、相手は貴族。
こんな横暴でも通されてしまう可能性があるようだ。
ディルム子爵の一行は立ち去った。
彼らは1週間後にまた来るそうだ。
金貨1000枚を用意できないのであれば、奴隷を1人差し出せと言われている。
抵抗すれば、強制執行される。
「…………」
場に沈痛な空気が流れる。
とりあえず村の中に戻り、広場に集まる。
今後のことを話し合うようだ。
「そ、村長。私なら、だいじょうぶです。私1人が我慢して村が助かるのなら……」
「う、ううむ。しかしじゃな……」
「バカなことを言わないで。そんなこと、許さないわよ!」
シトニの言葉を受けて、村長が歯切れ悪くそう言い、ユナは激高してそう言う。
「……私も納得できない……」
「おう。俺もだぜ。あんな借金額のごまかし、許されるはずがねェ」
「…………然り」
クトナ、ドレッド、ジークがそう言う。
やはり、彼らも納得できないようだ。
まあ、部外者に近い俺でも、今回の件は見ていて納得のいくものではなかった。
張本人たちとしては、到底納得できないだろう。
仲間を1人売れと言われているわけだしな。
「かくなる上は。サザリアナ王国かウェンティア王国に直訴して、救援を要請するしかないじゃろう。この村の独立性は損なわれてしまうが……。ここまでもつれてしまってはな」
「ふふん。そうね。たとえ何とか金貨1000枚を用意しても、あの調子だとまた返済額を釣り上げられるに決まっているわ」
村長とユナがそう言う。
「でも、1週間後にまた来ると言っていました。抵抗するなら、実力行使をすると……」
「……時間がない……」
シトニとクトナがそう言う。
「ふふん。それなら……」
ユナがチラッと俺のほうを見る。
ここだ。
彼女の忠義度を稼ぐチャンスだ。
「それなら俺たちの出番だな。Cランクパーティである俺たちミリオンズの実力を見せつけてやろう」
「うん。強制執行と言うくらいだから、それなりの戦力は連れてくるかもしれないけどねー。何とか精一杯がんばるしかないか」
「私もがんばります! むんっ!」
俺、アイリス、ミティがそう言う。
モニカとニムも異論はないようだ。
「ふふん。ありがとうね、タカシ、それにみんな」
ユナがそうお礼を言う。
「村の戦士たちももちろん戦うわよ。ディルム子爵がどの程度の戦力を連れてくるかはわからないけど……。さすがに一個師団までは連れてこないと思うし、何とかなるはず」
ユナがそう続ける。
「そうじゃな。最低でも、ある程度の時間は稼げるじゃろう。その間に、ウェンティア王国かサザリアナ王国に掛け合って交渉しよう」
「おう。どっちの国にするんだ?」
ドレッドが村長にそう問う。
「そうじゃな。ウェンティア王国の上層部とディルム子爵が繋がっていた場合、もみ消される可能性がある。サザリアナ王国のほうがいいかもしれん。サザリアナ王国からは、時おり併合の交渉に使者が来ておったしな。いい機会じゃろう」
「…………承知」
村長の言葉を受けて、ジークがそう相づちを打つ。
「さて。交渉のメンバーじゃが……」
「おう。それなら、俺とジークでサザリアナ王国に掛け合ってくるぜ」
「…………我らに任せよ」
ドレッドとジークがそう言う。
「ふむ。そうじゃな。村の外の地理に詳しい、お主たちが適任か。任せたぞ」
村長がそう言う。
今後の方針が固まってきた。
ドレッドとジークがサザリアナ王国に救援を依頼する。
以前からサザリアナ王国への併合の話があったそうで、ちょうどいい機会だということだ。
そして、残った者で村の防備を固める。
1週間後のディルム子爵の強制執行に備えてだ。
子爵の軍がどの程度なのかはわからないが、かなりの強敵だろう。
少なくとも、先ほどの一行にいた上位の2人はなかなかの実力者のようだった。
ディルム子爵の護衛を務める、奴隷の大男ジャンベス。
そして、兵士たちの上官っぽい男。
ええと。
部下たちにはアカツキ総隊長と呼ばれていたか。
さらにこの2人以外にも、新たな強者を連れてくる可能性がある。
正直苦しいかもしれない。
ただし、望みもある。
さすがに主力メンバー全員を勢揃いさせて連れてはこないだろうという点だ。
ディルム子爵も、俺たちが全力で抵抗するとは考えていないかもしれない。
抵抗自体は全力ですると見積もっていても、この村の戦力を過小評価している可能性もある。
少なくとも、俺たちミリオンズがいることは想定外だろう。
先ほどは戦闘になっていないし、俺たちの実力はまだ見せていないからな。
俺たちはCランクパーティ。
名実ともに確かな実力がある。
加えて言えば、実力だけならBランクパーティにも引けを取らないと思う。
俺のステータス操作というチートスキルによる急成長に実績が付いてきていないだけだ。
子爵のお抱えの軍のうち、ほんの一部だけを連れてくるだけであれば、俺たちミリオンズや村の戦士たちで撃退できる可能性も大いにある。
撃退できずとも、時間を稼げればなんとかなる可能性もあるしな。
そう考えれば、気が楽になってきた。
「ふふん。私たちは、1週間後に備えて防衛を固めていくわよ。作戦も考えないとね」
ユナがそう言う。
彼女や村の戦士たちが相談して、防衛の作戦を考えていくことだろう。
俺たちミリオンズも、全力で防衛に力を貸すつもりだ。
より効果的な作戦を立ててもらうためにも、俺たちの実力を正確に伝えておく必要がある。
しかしその前に、すべきことがある。
俺たちのスキル強化だ。
こういうときのために、スキルポイントを温存していたのだ。
防衛戦に役立ちそうなスキルを検討し、取得・強化することにしよう。
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