第8章 ウォルフ村へ、ユナ

214話 ラーグの街へ帰還 これまでの活動の振り返り

 ゾルフ砦でのアイリスとの結婚式は、無事に終了した。

その後、マリアやエドワード司祭、それにメルビン師範やギルバートたちに別れを告げ、ラーグの街に戻ってきた。

もちろん転移魔法陣を利用した。


 あのまま次の街に行くのもありだったが、まずは一度ラーグの街に戻ってゆっくり休もうという話になった。

やはりラーグの街が一番落ち着く。

俺がこの世界に転移してきて最初の街だし、縁あって家をもらうこともできたしな。


 ラーグの街に戻ってきてからのここ数日は、ファイティングドッグ狩りなどをしつつのんびり過ごしている。

今日も狩りを終えて自宅に戻ってきたところだ。


 俺、ミティ、アイリスの3人は、以前からこの家にいっしょに住んでいる。

また、モニカとニムも、この家でいっしょに住むことになった。

同じパーティで活動している都合上、いっしょに住んだほうが何かと便利だという話は以前からしていた。


 どうやら、俺たちがゾルフ砦を訪れている間に、モニカの父ダリウスとニムの母マムの関係にさらなる進展があったようだ。

今ではダリウス宅にて2人で暮らしているらしい。

モニカは2人の邪魔ならないようにと、俺の家へ引っ越してきた。


 また、旧マム宅には、彼女の息子が住んでいる。

名前はサムだ。

ニムの兄にあたる。

彼は彼で仲のいい女性を家に連れ込んで、2人暮らししているそうだ。


 ニムとしては、マムやダリウスとともにダリウス宅に住むか、サムやその彼女とともに旧マム宅に住むかの選択となる。

ニムはどちらも選ばず、俺の家への引っ越しを選択した。

部屋は余っているし、冒険者活動の都合にもいい。

俺としては大歓迎だ。


 そんなわけで、今は5人で自宅でゆっくりしているところだ。


「ふう。やっぱり、ラーグの街のこの家が一番落ち着くなあ。ゾルフ砦の宿屋も悪くはなかったが」


「そうだね。ボクもこの家は好きだな」


「私もです」


 俺の言葉に、アイリスとミティがそう答える。


「私としては、ちゃんとしたキッチンがあることがありがたいかな。宿屋だと、自分で料理する機会がないから」


「モニカさんの気持ちもわかります。わたしも、土いじりができなくて少しさみしかったです。この家の庭は広くてすてきです」


 モニカとニムがそう言う。

この家の庭は、俺たちが引っ越してきた当初は荒れ果てていた。

ニムが日々のスキマ時間に手入れをしてくれて、今ではきちんと整備されている。

野菜やリンゴ、それに花などが栽培されている。


「そうだな。しかし、広すぎて管理が大変じゃないか? 資金には余裕があるし、だれか雇ってもいいが」


 俺たちは長期間家をあけることもある。

多少は放っておいもだいじょうぶな品種をニムが選び、栽培しているそうだ。

執事やメイドを雇えば、そのあたりの管理も任せられるかもしれない。

もしくは奴隷を購入するかだ。


 過酷な環境で働かされることを覚悟している奴隷を購入する。

衣食住を完備の上、1日6時間勤務ぐらいのホワイトな環境で働いてもらう。

そうすれば、忠義度を稼げるかもしれない。


 職務は、メイドや執事、もしくは庭師や警備員あたりか。

いて困るものではないので、機会があれば購入するのもありだろう。

とは言っても、留守を任せるわけだからある程度信頼できる者である必要はある。

あまり気軽には買えない。


「い、いえ。土いじりは好きですし、だいじょうぶです」


 ニムがそう言う。

まあ好きでやっていることなら、無理に人を増やす必要もないだろう。


 この件の会話は終わり、また別の話題にシフトしていく。

今度は他愛のない雑談だ。


 雑談に興じつつ、俺は思考を整理していく。

ダリウスとマムの再婚の件は、俺たちから働きかける必要はない。

彼らからの報告を待とう。


 また、モニカはモニカで俺との結婚を意識してくれているフシがある。

ただし、今すぐどうこうではないようだ。

こちらも、俺としては保留としておこう。

ハーレム計画は進めたいので、チャンスがあればこちらからもアプローチしていきたいところである。


 さらに、マリアのミリオンズ加入や、ニムとの結婚も将来的には考えておきたい。

彼女たちはまだ子どもなので、荒ごとや結婚はまだ時期尚早ではあるが。


 マリアは俺のチートの恩恵により、ステータスやスキルを伸ばすことができる。

また、生まれ持ったスキルにより生命力や自己治癒力に秀でている。

冒険者としても十分にやっていけるだろう。

ハーピィという種族の認知度もサザリアナ王国内において浸透しつつある。

思ったよりも早く彼女の加入を検討していいように思う。


 ニムはまだ10歳と少しの子どもだ。

彼女との結婚は明らかに早すぎる。

とはいえ、俺はミティやアイリスと結婚している。

モニカとも近々結婚するかもしれない。

そうなると、ニムだけ結婚していない状態となる。


 もしかすると、ニムが疎外感を感じてしまうかもしれない。

まあ、杞憂かもしれないが。

彼女の様子次第では、結婚も視野に入れるべきだろう。

実際に手を出すのは、きちんと成長した数年後以降になるだろうが。


 まあ、このあたりは少し先の話だ。

ダリウスとマムの再婚、俺とモニカの結婚、マリアのミリオンズ加入、俺とニムの結婚。

それぞれ保留とする。


 今考えるべきは、今後の俺たちミリオンズの活動方針だ。

資金には余裕があるし、ずっとこの街で適当な依頼をこなしつつ生きていくのもいい気がする。


 しかし、実際にはそうするわけにはいかない。

30年後の世界滅亡の危機を回避しなければならないからな。


 世界滅亡の危機を回避するために、これまではミッションを参考に行動してきた。

この世界に転移した初日には、”魔物を1匹討伐しよう”や”街へ行こう”などのミッションに従った。


 その半月ほど後、他の冒険者と合同でホワイトタイガーを討伐した。

その際に、"ゾルフ砦の防衛に加勢しよう"などのミッションが追加された。

俺はそれに従い、ゾルフ砦を訪れることにした。


 ゾルフ砦に到着後、"ゾルフ砦のガルハード杯本戦に出場しよう"というミッションが追加された。

俺とミティは道場に入門し、武闘の訓練に励んだ。

その結果、無事にガルハード杯本戦に出場することができた。


 その後に防衛戦があった。

ゾルフ砦に、魔物の軍勢が押し寄せてきたのだ。

みんなで強力してファイティングドッグやゴブリン、それにジャイアントゴーレムなどを撃破した。


 防衛戦がひと段落したときに、"オーガ及びハーピィと和睦しよう"というミッションが追加された。

アドルフの兄貴たちとともに敵地に潜入し、なんやかんやあって無事に和睦することができた。

オーガ及びハーピィの国は、ハガ王国という名称に決まった。


 ハガ王国やゾルフ砦の面々に別れを告げ、ラーグの街に戻ってきた。

モニカやニムが困っていたのでいろいろと手伝った。

彼女たちが加護付与の条件を満たして冒険者としてデビューした。

俺、ミティ、アイリス、モニカ、ニム。

この5人でミリオンズとしてパーティ登録をした頃に、"ガロル村を訪れよう"というミッションが追加された。


 ガロル村というのはミティの故郷だった。

俺たちは5人でガロル村を訪れることにした。

ミドルベアや霧蛇竜ヘルザムとの戦闘もあったが、なんやかんやでみんな笑顔の結末となった。

俺とミティの結婚式という一大イベントもあった。


 ガロル村からラーグの街に戻り、のんびりと過ごした。

しばらくしてゾルフ砦を訪れることになった。

武闘の再鍛錬のためだ。


 メルビン道場にて1か月鍛錬し、メルビン杯にてそれぞれ優秀な成績を収めることができた。

特にアイリスは、優勝というすばらしい結果を残した。

大会中にアイリスから俺へのプロポーズがあり、大会後に俺とアイリスは結婚した。


 そして、ゾルフ砦からここラーグの街に帰ってきたのがつい数日前ということだ。

こうしてあらためて活動を振り返ってみると、いろいろと感慨深いな。

ミッション報酬や忠義度稼ぎという目的はあるにせよ、世のため人のために結構がんばれている気がする。


 とはいえ、気になることもある。

俺が、かなりの指示待ち人間だということだ。

ミッションが出されるたびに、それにただ従っているだけである。

まあ、ミッションなんていうものを出すことができる超常の存在に、わざわざ逆らう必要もないだろうが。


 今は、全てのミッションを達成済みである。

何をすべきかは自分たちで考えていく必要がある。

どうしようかな。

やはり、また新たな街に行ってみるのが良さそうか。


 ユナの故郷であるウォルフ村や、リーゼロッテの故郷であるラスターレイン伯爵領。

ラスターレイン伯爵領の中でも、海洋都市ルクアージュという街は、観光地としても有名らしい。

それぞれ、何か用事があって故郷に帰っている。

俺たちが訪れれば、何か手伝えることがあるかもしれない。

新たな土地を訪れるとすれば、この2つが有力候補だ。


 他の候補は、剣の聖地ソラトリア、魔法学園都市シャマール、食の都グランツあたりか。

気にはなるが、どちらかと言えばユナやリーゼロッテのほうを優先したいところだ。

ミティたちの意見も聞いておかないとな。


 ユナやリーゼロッテが故郷に向かってから、3か月ほどが経過している。

ひょっとすると、それぞれの故郷での用事が終わって、そろそろこの街に帰ってきていてもおかしくはない。

冒険者ギルドで情報を集めてみるか。

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