141話 マリアのスキル強化、人族の街への訪問計画

 ハガ王国に転移した日。

バルダインに治療魔法レベル4を試し、マリアと再会した。

彼女のスキルポイントを消費して、何かのスキルを取得か強化させてあげたい。


「マリア。何か困っていることはないか?」


『困っていること? そうだねー』


 マリアが考え込む。


『火の魔法がなかなか使えるようにならないことかなー』


「火の魔法?」


『我と貴様の戦いを間近で見ておった影響だな。タカシのような火魔法を使えるようになりたいそうだ』


 バルダインがそう補足する。


 マリアは、俺みたいに火魔法を使えるようになりたいと。

光栄なことだ


「そうですか。火魔法は、俺が最も得意な魔法です。何かアドバイスができるかもしれません」


『それはありがたい。マリア、火魔法の練習をタカシ殿に見せてみなさい』


『わかった。……むむーっ! ふぁいあーぼーるっ!』


 マリアが前に手をかざし、ファイアーボールを発動しようとする。

だが、火球は現れない。

失敗だ。

とはいえ、手のひらあたりにかすかな魔力のゆらぎは感じられる。

完全な失敗というわけでもなさそうだ。


「悪くはないね。そのまましばらく練習すれば、いずれ使えるようにはなると思う。アドバイスするとすれば……」


 俺はマリアにいくつかのアドバイスをする。

しばらく、失敗、アドバイス、失敗、アドバイスを繰り返す。

そしてついに。


『……ふぁいあーぼーるっ!』


 マリアの手のひらから、小さな火球が発射される。

木に着弾し、少し焦げた。

これぐらいの威力なら、延焼はしないようだ。


『おお! 成功したか!』


『お見事です! 姫様!』


 バルダインや護衛の面々が喜ぶ。


『えへへー。やった!』


 マリアも無邪気に喜んでいる。


「おめでとう! マリア!」


 俺もそう祝福する。


 彼女のステータス欄を確認してみる。

火魔法レベル1の項目が増えていた。


 この際だ。

どさくさに紛れて、火魔法を強化しておくか?

いや、MP強化のほうがいいか?


 近いうちに、俺はガロル村に向けて旅立つ。

しばらくはここに来れないだろう。

マリアのMPの最大値を上げておけば、俺がいない間にも火魔法の練習をたくさんできるようになる。

火魔法自体をレベル2に上げるよりも、長い目で見たときのメリットは大きいように思える。


 マリアのステータス操作欄を開く。

MP強化を取得する。


 俺のアドバイスと彼女のがんばりにより、火魔法レベル1を無事に習得した。

ステータス操作により、MP強化も取得した。

これで、彼女の戦闘力は大きく向上したと言えるだろう。

俺がいない間にも、無事に過ごしてくれることを祈ろう。



●●●



 その後、みんなで王宮に戻った。

俺とバルダインで王宮の一室に入る。

彼には、転移魔法のことを話しておこうかと思う。


 バルダインの足の治療やマリアの様子見も必要だしな。

ずっと黙っているよりは、打ち明けたほうがいいだろう。

バルダインの忠義度は40を超えているし、そうそう厄介なことにはならないはず。


「陛下。極めて内密の話があります」


『なんだ? 言ってみろ』


「転移魔法陣というものをご存知ですか?」


『ふむ。存在は知っておるぞ。かなり希少な魔法だな。残念ながら、我が国には扱える者はおらん』


 バルダインがそう言う。

やはり、かなり珍しい魔法のようだ。


「俺は、転移魔法陣を作成できます。今回、この国を訪れたのも、転移魔法陣を利用しています」


『ふむ。火魔法、治療魔法に加えて、空間魔法まで自在に操るとは……。そういえば、アイテムボックスも使っておったな』


「このことは、ぜひ内密に」


『なぜだ? これを公表すれば、どのような組織にも高待遇で迎えられるだろうに。我が国に士官してくれてもよいのだぞ』


「俺には自由な冒険者業が性に合っているのですよ」


 正確には、加護付与者を増やしていくために、自由に動ける環境が必要だということだ。

特定の場所に縛られてしまうと、加護を付与するチャンスが半減してしまうだろう。


『なるほどな。そういうことなら、無闇に広めることはやめておこう』


「ありがとうございます」


『ところで、その転移魔法陣とやらは、どの程度の距離まで可能なのだ? 危険性は? 人数は?』


 バルダインがあれこれ聞いてくる。

何か転移魔法でしてほしいことがあるのだろうか。


「北のゾルフ砦や、私が普段拠点にしているラーグという街までであれば、問題なく転移が可能です。危険もありません。人数は……3人がギリギリといったところでしょうか」


 俺1人の転移であれば、ラーグの街からハガ王国まで3割ほどのMPを消費する。

転移する人数が増えれば、その分掛け算で消費MPが増えると考えてよい。

以前に検証済みだ。


『なるほどな。……貴様に、1つ頼みがある。マリアを、一度人族の街に連れて行ってくれんか?』


「マリアちゃんを?」


『ああ。マリアは、貴様の影響か、人族の街に大きな興味を持っておってな』


「そうですか。しかしそれなら、ゾルフ砦に護衛をつけて向かわれては?」


『あの街とは友好的な関係を結べておるが、まだ時期尚早だ。万が一何か問題が発生すれば、大事になる可能性もある』


「それは確かに」


『かといって、このままマリアを押さえつけておくのもかわいそうでな。放っておけば、1人で行ってしまう可能性すらあるしな』


 マリアには勇気と行動力がある。

俺とバルダインの戦闘にさっそうと割り込んできたしな。


「お話は理解しました。前向きに検討しましょう。時期はいつ頃にしましょうか?」


『そうだな。マリア本人と、ナスタシアにも説明しておく必要がある。5日後でどうだ? 日帰りか、1泊ぐらいで構わん』


 5日後か。

ちょうど、食事会の日だ。

せっかくだし、マリアも加えてみんなで食事できればいいな。


「わかりました。5日後にまた来ますね」


 バルダインとの内密の話を終える。

その後、王宮でおいしい食事をいただいた。

その日の夜遅くに、転移魔法陣でラーグ街の自宅へ帰った。


 ……浮気を疑うミティとアイリスから、厳しい追求があったのは別の話だ。

釈明のため、転移魔法陣の話をするはめになった。

まあいつまでも秘密にできるものでもないしな。

仕方のないことだと思うことにしよう。




レベル2、マリア

種族:ハーピィ(鳥獣人)

職業:ー

ランク:ー

HP:38(29+9)

MP:22(12+4+6)

腕力:13(10+3)

脚力:13(10+3)

体力:13(10+3)

器用:13(10+3)

魔力:13(10+3)


武器:ショートソード

防具:レザーアーマー


残りスキルポイント0

スキル:痛覚軽減レベル2

    HP回復速度強化レベル5

    自己治癒力強化レベル3

    MP強化レベル1

    火魔法レベル1「ファイアーボール」


称号:

祝福の姫巫女

タカシの加護を受けし者

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