140話 バルダインの足の治療に挑戦

 ディークとフェイに案内され、王宮内を進む。

しばらく歩いていると、見知った顔が現れた。


『おお! タカシ! 来たというのは本当だったのだな!』


 国王のバルダインだ。

彼がこちらに駆け寄ってくる。

もっとこう、王座の間で厳かに謁見する感じかと思ったのだが。


「ええ。報告したいことがございまして」


『よしわかった。部屋で座って話を聞こう。ディークとフェイは、下がっておれ』


『『ははっ!』』


 ディークとフェイと別れる。

バルダインと王宮の一室に入り、イスに座る。


『それで、報告とは何なのだ?』


「少し前に、上級の治療魔法の習得に成功しました。陛下の足を治療させていただこうかと思います。治る保証は残念ながらありませんが……」


 俺の治療魔法はレベル4。

リカバリーという魔法を使える。

ダリウスやマムの難病を治療した実績がある。

もしこれでもバルダインの足を治療できなければ、治療魔法レベル5が必要になる。

その場合は、スキルポイントが足りないので日を改める必要がある。


『ふむ。上級の治療魔法か。あれだけの強さに加えて、治療魔法の才まであるとはな。さすが我が認めた男よ』


「恐れ入ります。さっそく試しましょう」


『よろしく頼む』


 リカバリーの詠唱を開始する。

リカバリーの詠唱はかなり長めだ。

…………。

……。

詠唱の終わりが近づく。


「……彼の者に安らかなる癒やしを。リカバリー」


 俺の体から力がふっと抜ける。

相変わらず、MPの消費量は大きい。


 淡い光がバルダインを包む。


『心地よい。これがタカシの上級の治療魔法か』


「どうでしょうか?」


『ふむ……』


 バルダインが足を動かし、感覚を確かめている。


『足の調子が少し良くなったようだ。ありがとう。我が国にも治療魔法士はおるが、タカシの腕は抜きん出ておるな』


 バルダインがそう言う。

残念ながら、治療魔法レベル4でも完治はできなかったようだ。

完治には治療魔法レベル5が必要ということか。

もしかしたら治療魔法レベル5でも完治できない可能性もあるが。

まあ、少しは良くなったそうなのでヨシとしておこう。


「お褒めの言葉、ありがとうございます。陛下の足を完治させられるよう、より上級の治療魔法の習得を目指します」


『ああ。期待させてもらおう』


 治療魔法の件は今日はこれで終わりにしよう。

次はマリアの現況確認だ。


「ところで、マリアちゃんの最近の様子はどうですか?」


『元気にしておるぞ。タカシとまた会える日を楽しみにしておった。会ってやってくれ』


「もちろん、そのつもりでございます」


 バルダインに案内され、部屋を出る。

何人かの護衛が同行する。

いっしょにマリアのいるところに向かう。


『最近のマリアは、剣術や魔法に夢中だ。我とタカシの戦いを間近で見た影響だろうか……。今日は護衛を連れて、低級の魔物狩りをしている』


 魔物狩りか。

あまり危ないことはしてほしくないが。

まあ、彼女は耐久力関係のスキルをたくさん持っているし、問題ないか。

確か、痛覚軽減レベル2、HP回復速度強化レベル5、自己治癒力強化レベル3だ。


 しばらく歩く。

森の中に入っていく。


『このあたりのはずだが……』


 俺、バルダイン、それに数人の護衛。

みんなでマリアの姿を探す。

少し遠くに人影が見える。


「あそこに人影がありますが」


『む。よく見えないな。もう少し近寄ってみよう』


 バルダインや護衛たちにはよく見えていないようだ。

確かに、結構遠い。

俺が見えているのは、視力強化の恩恵だろう。

レベル1とはいえ、なかなか強力な効果だ。


 みんなで人影に近寄っていく。

やはりマリアだ。

彼女の護衛も数人いる。

彼女がこちらに気がつく。


『あっ。パパだ。どうしたの? ……って、タカシお兄ちゃんだ!』


 マリアが俺に駆け寄り、抱きついてくる。


『久しぶりー!』


「ああ。久しぶりだな、マリア。少し背が伸びたか?」


 彼女と会うのは2か月ぶりだ。

このあたりの年代の子どもの身長は、1年あたり5から10センチくらい伸びるはず。

2か月あれば、1から2センチくらい伸びていてもおかしくはない。


『うん! ちょっと伸びたよ! それでね……』


 マリアから近況を聞く。

この2か月間、元気に過ごしていたようだ。


 彼女のステータスを確認してみると、レベルが上がっていた。

ラーグの街で確認したときには、変化してなかったのだが。

おそらく、視界に入るような近距離にいないとステータスは更新されないのだと思われる。

つい先ほどレベルアップしたという可能性もあるにはあるが。


 せっかくだし、何かのスキルを取得か強化させてあげたい。

何がいいだろうか。



レベル2、マリア

種族:ハーピィ(鳥獣人)

職業:ー

ランク:ー

HP:38(29+9)

MP:16(12+4)

腕力:13(10+3)

脚力:13(10+3)

体力:13(10+3)

器用:13(10+3)

魔力:13(10+3)


武器:ショートソード

防具:レザーアーマー


残りスキルポイント10

スキル:痛覚軽減レベル2

    HP回復速度強化レベル5

    自己治癒力強化レベル3


称号:

祝福の姫巫女

タカシの加護を受けし者

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