第5章 ラーグの街へ帰還、モニカ、ニム

111話 ラーグの街への道中:リトルベア討伐依頼再び

 ゾルフ砦を後にし、ラーグの街へ向けて出発する。

今回も、隊商の護衛依頼を受けている。


 今回の隊商は、やや小規模な隊商だ。

護衛の冒険者パーティは、全てDランクパーティ。

個人のランクでもCランクは、俺ともう1人だけとなっている。


 そのもう1人のCランクの冒険者が取り仕切ってくれているので、気は楽だ。

とはいえ、俺もCランク冒険者としての活躍は期待されているようだ。

Cランクといえば、こうした護衛依頼の主力となりうる実力者とみなされる。

心なしか、周囲の目線もDランクのときとは異なっているような気がする。


 前回より、俺がCランクに昇格している他、ミティはDランクに昇格している。

さらに加えて、Dランクのアイリスがパーティメンバーに加入している。

2人とも、戦闘能力だけならCランクでもおかしくない実力を持つ。

そんじょそこらの魔物に引けを取ることはない。


 たまに出る魔物を蹴散らしつつ、ラーグの街へ向けて進んでいく。



●●●



 数日の旅路の末、村にたどり着いた。

以前、ハルトマンたちとリトルベアやクイックマリモを討伐した村だ。


 村長が出迎えてくれる。

村長とこちらの隊商の代表がいろいろと話し始める。

補給や商品の売買を行っているようだ。


 その間、俺たちは特にやることもないので適当に休息している。


 しばらくすると、村長と隊商のリーダーがこちらにやってきた。


「タカシ殿。少しいいかな? こちらの村長が君たちに依頼したいことがあるそうだ」


 隊商のリーダーがそう言う。


「はい。なんでしょうか」


「リトルベアを間引きしてほしい。以前も別の方に依頼して、数は減ってきておるのじゃが。減らすにこしたことはないのでな」


 俺やミティがラーグの街からゾルフ砦に向かうときにも、この村でリトルベアの討伐を行った。

数は減ったが、まだいるということか。


「そうですね……。ミティとアイリスはどう思う?」


「やりましょう!」


 ミティは強くで前向きだ。


「うーん。リトルベアか。ボクたち3人でも討伐できないことはないと思うけど。ちょっと不安だね」


 アイリスがそう言う。


 確かに、アイリスの言う通りだ。

俺たち3人でも討伐できないことはないだろう。

俺が火魔法で先制する。

ミティが投石で追撃する。

リトルベアが近寄ってきたら、俺の剣、ミティのハンマー、アイリスの格闘で囲んで戦う。

順調にいけばなんの問題もない。


 懸念点があるとすれば、2点だ。


 1つ目の懸念点は、接近戦において全員がアタッカーであること。

耐久力に優れたタンク型のメンバーがいない。

リトルベアと乱戦になった場合、やや安定性に欠けるかもしれない。


 マリアはタンク職の素質を持っていた。

彼女の耐久力関連のスキルはかなり豪勢だ。

確か、”痛覚軽減レベル2””HP回復速度強化レベル5””自己治癒力強化レベル3”だ。

しかも、基礎ステータスのHPももともとかなり高めである。


 彼女を連れてこなかったのは少しもったいなかったか。

しかし、いくら耐久力関連のスキルがかなり豪勢だとはいえ、10歳にもなっていない女の子を前線にタンクとして配置するのもな。


 今後、タンク型のメンバーを探していく必要がある。


 2つ目の懸念点は、追撃に適した攻撃手段を持つメンバーがいないことだ。

リトルベアが劣勢を悟り逃亡体勢に入ったときに、適切に追撃できずに逃亡を許してしまう可能性がある。


 俺の火魔法は、森の中では自由に使えない。

こちらに気づいていない相手に不意打ちする場合は問題ない。

また、こちらに一直線に向かってくる相手を迎え撃つ場合も問題ない。

一方で、森の中をジグザグに逃げていく相手を追撃するような場合には、適していない。

うっかり木を燃やしてしまうと、森林火災になる恐れがあるからな。


 ミティの投石も、俺の火魔法とある程度は同じイメージだ。

こちらに気づいていない相手に不意打ちする場合は問題ない。

また、こちらに一直線に向かってくる相手を迎え撃つ場合も問題ない。

一方で、森の中をジグザグに逃げていく相手を追撃するような場合には、適していない。

彼女はまだあまり細かなコントロールはできない。

石を木々の間に通して標的へ当てることは厳しい。


 アイリスの格闘は、もちろん遠距離攻撃はできない。

彼女のスピードなら、逃げるリトルベアに追いついて格闘で追い打ちすることは可能。

彼女よりは少し遅れるが、俺もいっしょに行って戦ってもいい。

しかしその場合、リトルベアが逃亡を諦めて反転攻勢に出たときに、俺とアイリスの2人だけでリトルベアと戦う時間ができてしまう。

これはリスクだ。


 今後、逃亡する敵を的確に追撃できるようなメンバーを探していく必要がある。

次善策は、俺やアイリスの移動スピードについて来れるような近接職メンバーの加入だ。


「確かに、アイリスの言う通りだね。俺たちだけでは少し不安だな……」


「それでしたら、他のパーティと合同でされてはどうでしょうか。ある程度の人数を村に残してもらえれば、私は構いませんよ」


 隊商のリーダーがそう言う。


 村に滞在している間やリトルベアの討伐作戦中も、厳密には護衛任務の最中だ。

例えば、多数の護衛の冒険者がリトルベアの討伐に向かってしまい、護衛が手薄になったタイミングで隊商が魔物や盗賊に襲われると、大きな損害が出てしまう。

そのため、護衛依頼中の冒険者に別の新たな依頼が持ちかけられた場合は、新たな依頼主や冒険者だけで判断するのではなく、もともとの護衛依頼主の許可が必要となる。


 今回の場合、もともとの依頼主である隊商のリーダーの許可が出ているので、俺たちがリトルベアの討伐依頼を引き受けるのは問題ないし、他のパーティを誘うのも問題ないというわけだ。


「そうですね。他のパーティを誘ってみます」


 俺はそう返答をする。

ミティとアイリスもそれで問題ないようだ。


 どのパーティに声をかけようかな。

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