70話 1回戦:リルクヴィストvsウッディ

「第2試合を始めます! ラスターレイン家のリルクヴィスト選手対、難攻不落のウッディ選手」


 リルクヴィストとウッディがステージに上がる。

リルクヴィストはいまいちやる気がなさそうだ。

体格はウッディが有利だし、ウッディが勝ちそうに思えるが。

果たしてどうなるか。

優勝予想の倍率は、リルクヴィストが12倍に対して、ウッディが6倍だ。


「両者構えて、……始め!」


「やれやれ……」


 リルクヴィストがさっそく攻撃をしかける。

やる気はなくても、いざ試合となれば動きは俊敏だ。


「ウス。そんな軽い攻撃は効かんど」


 ウッディはそれを軽くガードする。

やはり体格差があり過ぎて、あまりダメージを受けていないようだ。


「今度はこっちの番なんだな」


 ウッディが反撃する。

パワーはかなりある。

だが、動きは鈍重だ。

狙いも甘い。


「そんな攻撃が当たるかよ!」


 リルクヴィストがやすやすと躱す。


 同じような攻防が繰り返される。

これは長期戦になるかもしれない。

リルクヴィストが少しずつウッディにダメージを蓄積させることができるか。

ウッディがなんとかリルクヴィストの隙をついて一撃を入れることができるか。

最後には、体力や集中力の勝負になりそうだ。


 そして10分以上が経過した。

両者、多少息があがっているが、大きなダメージは受けていない。


「ちっ。1回戦から、めんどくせえ相手に当たっちまったな」


「ウス。オラはまだまだやれるど」


「そんなに長々と付き合ってられるか。悪いが次で決めさせてもらう」


 リルクヴィストの雰囲気が変わった。

闘気の質が変化しているようだ。


「いくぞ! ……流水拳奥義、貫衝波!」


 リルクヴィストが真正面から攻撃をしかける。

ウッディがこれまで通り、真正面から防御する。

一見、ダメージはなさそうに見えたが。


「……ウス。なんだあ、これは。痛えど」


 ウッディがお腹のあたりを押さえて、痛がっている。

ある程度のダメージがあったようだ。


「これでも倒れんとは、相当タフだな。あまり多用はしたくないが、仕方がない。威力を上げてもう一度だ」


 リルクヴィストが再び闘気を練りだした。


「黙ってやられるオラではないんだな。反撃するど」


 ウッディも今度は同時に攻撃をしかけるようとしている。

自慢の防御を貫かれたわけだし、守るだけでは勝てないと判断したのだろう。


 リルクヴィストが腕を突き出す。

ウッディがのしかかり攻撃を繰り出す。


「貫衝波!」


「ジャンボプレス!」


 リルクヴィストとウッディの攻撃が交差する。


 リルクヴィストの攻撃は先ほどと同じ貫衝波という技だ。

ただし、先ほどとは違い、ウッディは防御していない。

これはダメージが大きそうだ。


 一方で、ウッディも同時にジャンボプレスという技で攻撃をしかけている。

のしかかりだ。

巨体をいかして相手を押しつぶす技のようだ。


 ウッディの巨体の下にリルクヴィストが埋まる。

しばらく動きがない。


 これは……。

相打ちだろうか。

リルクヴィストの貫衝波のダメージにより、ウッディが戦闘不能に。

ウッディのジャンボプレスの下敷きになり、リルクヴィストが身動き不能に。


 審判が2人に近づき、様子を伺っている。


「両者ダウン! カウントを取ります! 1……2……3……」


 審判がそこまでカウントした頃、動きがあった。


「くっ。はあ、はあ。なんという重さだ。デカブツめ」


 ウッディの巨体の下からリルクヴィストがでてきた。

かなり疲れているようだが、自力で立っており戦闘続行は可能なようだ。


 一方で、ウッディは動かない。

どうやら気絶しているようだ。


「そこまで! 勝者リルクヴィスト選手!」


 リルクヴィストの勝ちだ。

2試合目にして、優勝予想の倍率が下位の選手が勝った。

ちょっとした番狂わせだ。

観客席から歓声と悲鳴が聞こえる。

いろいろな意味で盛り上がっているようだ。

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