楠太郎
実際の所、雫は美少女ではなく、誰もが憧れる存在でもなく、孤高な存在であった事だけが本当だった。
当時の彼女は誰とも行動しなかった。本人曰く、恋ばなが嫌いだったらしい。恋ばな、下ネタ、セックスについての話題に心底嫌気がさした雫は孤立を選ぶ。何だかんだといってはいたが1人は寂しかったらしく、三度目の告白で付き合う事になった。
当時の僕は彼女に憧れていた。視界の隅に彼女が入ると自然と目で追った。そして、それは友人にはバレバレであった。
「また、久留野の事を追いかけているのかよ。もう告白すれば?」
友人は冷やかしのつもりだったらしいが、それもそうだな、と思い告白したのだ。
「付き合うのは良いけど、セックスとかそう言うのは無しで。」
告白に成功した時、雫にそう告げられた。まあ、そんなタイプの人なのか、とその場はスルーした。雫が大分拗らせていたのは付き合ってからわかった事だが、それについては割愛する。
「別にそれで良いよ。」
僕は雫の隣に居たかった。その思いは今も変わらない。
あの日から今日に至るまで、僕たちはキスもセックスもしていない。今後もする事はないだろう。それでも目の前の風景は以前とは違い輝いて見える。それがとても大切な事だと僕には思えるのだ。
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