物語の展開は僕次第って大丈夫!?
星と凪
第1話 君の役目は調整役
何もない白い光の中。
少しずつ体に熱が帯びていくのが分かった。
「………かい?」
遠くで柔らかな声がしている。
その声が僕の体に命を吹き込んでいるかのようだ。
「…聞こえるかい?」
その声で僕はやっと目を開いた。
「お、目を覚ましたようだね。まずは初めましてかな」
その人は僕の言葉を待たずに続けた。
「僕は物語の"作者"。単刀直入に言おう。君には"調整役"をしてもらいたいんだ。僕が描く物語を円滑に進めるためにね。少し大変な役目かもしれないけどぜひとも頑張って欲しいなぁ」
あまりの展開に頭が追いつかない。そもそもこの人が言う"調整役"…って何だろう?
「あの…」
振り絞った声を聞いて、その人は僕に強い視線を浴びせた。
とは言っても厳密にはその人の姿はないため、あくまでも感覚的なものだが。
「ん、どうしたんだい?」
「いや、あの…。"調整役"とは何でしょうか?
そもそも僕は誰なんでしょうか?」
白い光にぽつんと1人。
僕は誰で、どこから来たんだろう。
いくら考えても何も浮かばないけど。
「2つの質問を一気に答えるね。君の名前は"サンティ"。僕が書いた物語のキャラクターが勝手なことをしないように調整してほしいんだ。君はその役目。むしろそのために僕が作ったキャラクターって感じだね」
物語…キャラクター…調整役…。
「いいかい?サンティ。君にはこれから先数々の試練と困難が出てくるだろう。なんたって僕はわがままで気分屋だからね。物語が上手くエンディングに向かうように見守ってるよ」
ちょ、ちょっと待ってよ。
僕にそんな役目できるわけ---。
「サンティ、この物語は君次第だ。
もう一度言おう。君次第だからね」
次の瞬間白い光はオレンジ色へと移ろい、時空が捻れていくのが分かった。
待って待って!!十分な説明も受けてないし、さっき生まれたばかりだし!!
あまりに乱暴すぎる!
「あ、そうだ!君には物語の監視を兼ねて『透明化』の魔法を授けるね。じゃあいってらっしゃい!」
その声とともに僕の意識はまた遠くへと飛んでいった。
✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
「…」
「……」
「………かい!?」
どこか覚えのある呼びかけで目を覚ます。
「大丈夫かい!?」
辺りを見回すが、もちろんここがどこかは分からない。
(あぁ、ここはもう物語の中なんだな…。何とか面倒な展開が起こらないといいけど…)
目の前には僕と同じくらいの少年。
金色の髪に端正な顔立ちをしている。
あ、とりあえずお礼を言わなきゃ。
「ありがとう、大丈夫だよ。君は?」
目の前の少年は、ほっと息を吐くと僕を見て微笑みかけた。
「僕の名前はアイン!いずれこの世界を救う勇者になるんだ!!」
アイン…。
勇者…。
作者様。もう早速面倒な展開が始まりそうです。
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