第19話 ディスり方w
「ジェード様が?」
「その様なことを…?」
「・・・・」
昨日あったことを早速ランチにて話し合う私ら。
「ドレスに関してはルビー達、全然これっぽっちも関係ないのにさ~、もしかしたらぐちぐち、ねちねち迷惑掛けっかもしんないけど、」
軽ーく「ごめんねー!」と言って終わらすつもりだった。
けど、ルビーは黙ったまま…。
その様子を伺うようにマリンとペリドットも口を開こうとしない。
「えっ、ホントに大丈夫だかんね…!?何か言われてもあたしはバリバリに言い返すかんね…!?」
思いもよらぬ重々しい空気感に焦りを感じて食事中にも関わらず、わたわた手を振る。
するとやっとルビーが口を開いてくれた。
もーー、息詰まる雰囲気苦手なんだからマジ勘弁してーー・・・!
「・・・・・いいえ。」
と、一言。
私達は「ん?」と耳を傾ける。
「納得いきませんわ!」
「うぇ?」
「ルビー、様…?」
「一体何が・・・」
「納得いきませんわよ、そんなの・・・!!」
ダァアアン──!
急にテーブルに手をつき立ち上がり、片方の手はこれでもかと言うほどの拳を作っている。
大きい音を立てたのがルビーだったものだから注目が一気に集まる。
「あ・・・、お食事中に、申し訳ありませんわ…! むっ、虫が居たもので・・・どうぞお気になさらず。」
スッと上品に座り直すと、何もなかったですよ風にまた上品に食事をし始めるルビー。
それを見て周りの人もまた食事を楽しむ。
いや虫って…!
それホントなやつだったら、あれは「握り潰した!??」ってなるでしょっ!
ま、いーんだけどぉー。
「で、どうされましたのっ…!?」
ひそひそ。とマリンが話す。
「納得いきません。どうしても。 何故でしょう。 美優を含め私達は少しも関係ありませんわよね? それなのにどうして美優が、胸ぐらを・・・胸ぐらを、掴まれなければいけないのでしょうか・・・!?」
大変にお怒りのようで…、ルビーがわなわなと震えながら握っているナイフとフォークがあまりの熱にグニャリと曲がりだしてしまった・・・。
アワワとマリンは放水活動。
「それに・・・なんですの・・・!?あの女・・・!オリジナルドレスを??男性の、殿下の力を使って??手に入れる???どこまで傲慢なのかしら???」
灼熱になったスプーンで掬うスープは地獄の釜の如くブクブクと沸騰し出す。
もうマリンは大忙し。
「アッ、ついにあの女呼ばわりしちゃう?」
「それに殿下も殿下ですわ! 何故お気付きにならないのでしょうか??あんな、あんな見え透いた下心・・・、あー、成る程ですわ!下心同士ぶつかり合うと相殺されてしまうのですね!何とお
「ちょ、ルビー・・・」
「だってあの女もついでに王妃になられるのでしょう?品の欠片もない国に成り下がるのですわ。あー嫌だわ。私、クロウを王にするべくお力添え致しちゃいますわよ??はぁ、お心苦しいですわぁ~。私が我が儘を言ってお父様に頼み込んで婚約しましたが・・・、このマリアノ公爵家の後押しを無くされるだなんて・・・どれ程力のある家なのか御存じでしょうに・・・。」
「る、るびーさまっ・・・」
「本音が駄々漏れですっ・・・!」
「あら失礼。」
つらつらとこんな品のいいディスりは初めてだ・・・
やばっ、ルビーに私が移ってきてる…。
「ふーーっ」とルビーはため息ひとつ付いて、
「
「えぇえっ…!」
「まぁっ…!」
「やっと別れんの…?」
「えぇ!」
にこっと笑うルビーはそれはそれは朝の草原のように爽やかで・・・って、貴族と一緒に居すぎて詩人みたいになってんですけど!!
ちょうポテンシャル高くねアタシ!!
何かイケる気がする…!!
どこかは分かんないけどイケる気がする!!
分からない何かに浮かれる私とは違い、マリンとペリドットは少し不安そう…。
「しっ、しかし破棄されるとルビー様がキズモノに・・・!」
「そうですわ・・・、それに、それに・・・破棄されて、次に誰か違う方と婚約しても・・・、王太子殿下からの格下げだと・・・」
「キズモノ・・・?格下げ・・・??」
また貴族社会の謎な決まりごと?と首を傾げる。
「えぇ、婚約を破棄すると言うことは、何らかの事情があって、つまり何か
「しかも、次に婚約してもです。 クロウ殿下以外の誰と婚約しても格下げの令嬢と囁かれるのです。 ・・・醜い、世界ですよね…。美優とは別世界です・・・。でもそれが現状なのです・・・。」
「はぁ?」
確かに・・・全く理解出来ないんですけど・・・。
「えぇ、そうね。二人の仰る通りですわ。 乙女は乙女らしく純情が求められる。ですから晴れて成婚し、落ち着いた頃舞踏会で愛憎劇が繰り広げられるのです。」
「何だそれ。そんなの一緒に過ごしてみないとお互い合うか合わないか分かんなくね?それで結局不倫してんの意味分かんなくね??そんなんでキズモノだの格下げだの言われたくないんですけど。」
めっちゃ正論言ったんだけどマリンもペリドットも「あはは…」と苦笑い。
「ふふっ…!その通りですわ…!」
もうだいぶ落ち着いたルビー。
食後のデザートを頬張っている。
え?何で??ってぐらい、熱電導率がよすぎたのかデザートスプーンまで曲がったまま冷えて固まっているのは見なかったことにする。
「私、少し前だったら、破棄すること自体考えもしなかったかもしれません。 しかし、美優に出会って、変わりました。」
「あたし??」
「えぇ! 意味のない噂など、結局はただの噂。キズモノ?そんなの関係無いわ。 だって私ですのよ? 淑女の鏡であり、非の打ち所のない令嬢と自負しております。 それに恥じるべきは殿下の方ですもの。私は堂々と胸を張っていればいい。 私の炎は強力です。何か言われようなら全て燃やして差し上げますわ!」
「それはヤバイw」
「ルビー様・・・!」
「さすがですっ・・・!」
「それに、社交界でどう言われようと、そんなのちっとも怖くない、それよりもあんな男と結婚する方が恐ろしいですわ!」
自信に満ち溢れているルビーは、ホントに宝石のようにキラキラと輝いている。
これは魔法でも物理的にでも何でもなくて、なんか・・・こう、オーラみたいな。
いつか、どこの誰かか分かんないけど。
大切にしてくれる人に出会ってほしい。
つーかこんな素敵な女性は幸せになるべきだし?
「えぇ、えぇ、もう決めましたとも。舞台は2週間後の王家主催のパーティーにて、婚約破棄してやりますわ・・・!!」
「まぁ!」
「楽しみですっ!」
「正々堂々と! 皆様の前で!! キズモノになってやりますわよ!! まぁ、その為には色々と準備をしなければなりませんけれど・・・。」
「まずはお父様に言って、」あれやこれやと貴族の知恵を出し合ってる。
つーか、どんだけパーティー・・・?
「またパーティーあるんだ…、貴族ってたいへーん・・・。でもルビーの快進撃見れないのはちょっと残念かな~…」
と何となく言ったんだけど、三人揃ってぽかん。
「・・・え?何その顔」
さすがに面白いからやめて。
「え、いや、え…?」
「何仰ってますの?王家主催ですよ?」
「・・・・は?」
「は?ではなく・・・」
クロウもジェードもその家族が主催ってことでしょ…?
え?
だから、なに・・・?
「え、あたし関係なくね…?貴族じゃないし」
「「「いやいやいや!!」」」
一斉に「「「そんなハズありませんッ・・・!!」」」と全否定…。
「だって美香さんも招待されているのですから…!美優が呼ばれていないわけありません…!」
「そうですっ! 平民棟の代表に選ばれた方も招待される年に一度のパーティーですよ…? 貴族棟に通う美優が来ないだなんて・・・!と言うか普通は来なければいけないものですっ・・・!」
「招待状は届いていないんですの!?」
勢い怖いんですけど!?
「いやぁ? 招待状なんてもらったことないケド・・・??」
思い返すまでもないし。
あの場所では私は何も貰わない。
「そんな、はず、」
「貰ったこと無いだなんて、だって皆あんなにお茶会に来てほしいと・・・」
「・・・、いえ、今はいいわ。 兎に角、私がクロウに頼んで直接招待状を渡してもらうわ。」
「???」
「そ、そうですわねっ・・・!」
「まだ、確証もなくあれやこれや言うのは良くないですものね…!」
んーー、なんかよく分かんないけど ま、いっか。
難しいし!
「ハッ! まさか!!美優、ドレスが無いんではなくて…!?」
「本当ですわ・・・!」
そんな目をカッ開かれて見つめられても困る~・・・。
え?
つーかドレスがないって、ついこの前作ってもらったんだけど・・・。
「この前のが・・・」
「ダメですっ!」
「えっ、」
ふんっ、と腕組みルビー。
「同じドレスを着るだなんて・・・」うんたらかんたら・・・。
「さァ! 早く、アキナに連絡しなさい・・・!!」
「え、えぇ・・・?」
「早く!」
「そうですっ!」
「またビジネスのお時間です!!」
なんか一人だけ目的違うけど、またあの試着地獄かぁ~~~。と気が重い私。
けど、言われるがまま渋々連絡するのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます