第8話 いやフツーにわざとじゃね

 


「うーーっわ。マジかよあの女…」


 帰り道。

 私はちょっと学園をぶらぶらしながら気ままにのんびり歩いていた。

 そしたら聞こえたのが「きゃーー」という聞いたことあるうざったい声。




「えーーー…!副団長さんなんですかぁ…!? 騎士って、馬とか乗って守ってくれるやつですよねっ!」

「ははっ、いやいや、そんな大したもんじゃないよ…!」




 私は見てたぞ…!?

 アイツがわざとらしくぶつかってんのを…!

 私は、見たっ…!!




「えーー!すごいですーー!私の世界ではそんな人 身近に居ませんでしたから!かっこいいですっ!」

「そ、そう…かな…? こんな可愛い子にそんなこと言ってもらったら照れてしまうな…!」

「可愛いだなんてっ、そんな…! 私、ちょっと周り見えなくなっちゃう時あって…こんな素敵な人と一緒に居たら、ずっと守ってくれるのかな…って、羨ましいです…!」

「俺の方だって君みたいな可愛い子を守れるのなら本望だよ」




こっえーーーー!!

何だよーーー!ちょーーやべーー女じゃーーーん!!

恐ろしくぶってやがんな。

関わんない方がいいっしょ…、あれは…。

確実に面倒だし…。




この学園は本当に広くて、王国を護る騎士団学校も一緒になっている。

まぁ、学校というか見習い兵士というか。


騎士団は特に厳しい訓練をしているので皆ムキムキだ。男も女も関係なく皆ムキムキ。

体力も必要とされ、国を護る仕事なので給料はそこそこ良いらしい。

その中でも特に優秀な人は国家を最前線で防衛したり戦ったり、国王の護衛だったりで飛び抜けで給料も上がるんだって。

なので庶民も憧れの職業で、貴族がなっても箔がつくので常に人気の職。


だけど付いていけなくて辞めていく人も多いらしい。

「ですから団長ともなれば、それはそれはもう私達にとっても憧れの的なんですのよっ!それにとっても格好良いですし…」と惚れ惚れしながらペリドットが語っていたっけ?


それを知ってか(イケメンっていうのもあるだろうけど)ミカちゃんは副団長にわざとらしくぶつかりに行ったんだろう。



まぁ、んなことはどーっだっていーけど、ミカちゃんに気付かれないうちに ぐるっとUターン。



 ゴチン──!!



「ったぁ~~…」

「おっと、すまない、大丈夫かい…?」



誰かにぶつかってしまったようで尻餅をついた。

いてて、とお尻をさすりながら相手を見ると、まぁイケメン。


何なの?イケメン多くない!?

美の遺伝子多すぎじゃない??



イケメンはどうやらキラキラとエフェクトが掛かるらしい。

金に短髪のグレーの瞳、目の下にホクロがあって、目付きはキリリとして目ヂカラがある。

歳は…見る限りでは30手前ぐらい。



「怪我はないかい…?」



そっと覗き込まれれば一応女子なんでちょっと照れる。



「あ~、大丈夫だと思う。 あたしこそ急に振り返ってごめん」

「いや、俺もちゃんと見ていなかったから、本当にどこか痛いとこは無い?」



スッと腰を支えながら起こしてくれ、顔面に劣らず行動もイケメン。

やだ。ドキドキしちゃーう。



「あ、団長~…!お疲れ様です、どうされたんですか?」

「あぁ、ニック。」


「「!?」」



ギョッとしたのは、私とミカちゃん。


話し掛けてきたのは先程ミカちゃんが ぶつかっていったこれまたイケメン副団長。

そして私がぶつかってしまったのは呼ばれるに、どうやら騎士団 団長…。



「ニックこそ、何だ彼女か?」


「やだっ、彼女だなんてっ!」

「違いますよっ…!さっきそこでぶつかってしまいまして…」



マッジで。いちいち、きゃー!とか、やだぁー!とか飽きないワケ?

てめーが下心もって近付いてんっしょ?



「ははっ、何だ、似たようなものか…! 俺も自分の不注意で彼女に尻餅をつかせてしまってね、」

「違ぇーよ…!あたしが急に振り返ったから…!」

「でも結果的に君を転ばせてしまったのだから、防げなかった俺のせいでもあるよ」

「う"ぅ"ーー…」



中身もイケメン過ぎて言い返す言葉が、私の頭じゃ見当たらない。



「さっすが団長は男っすね~~!」

「女性を転ばせたんだから当然だろうが」

 


副団長が感心している横で、明らかに機嫌の悪いミカちゃん。

私をキッと睨んでいる。



は? 何なの!?

私睨まれる筋合いある??



「さ、一応 医務科にいって診てもらった方がいい。俺も一緒に行くから」

「いや、このぐらい別に、」

「ダメだ。女の子なんだから。体は大事にしないと!」

「ハ、ハイ…」



有無を言わさず連れていかれた。

ちらりと目線に入ったミカちゃんはまだ私を睨んでいたのだった。



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