春夏秋冬〜恋愛短編集〜

howari

第1話 春

この季節に薄桃色の花は咲き乱れる。


キミの事をずっと好きだ。


この想いが届くことはもうない。



キミが桜を見たいと言った。目一杯見たいと言った。だから閉ざされた場所から連れ出してあげた。


「わぁ...キレイ!」


舞った桜がキミの長い髪を飾る。桜よりもキミの方がキレイだ。

キミの髪に手を伸ばしたい。

でも...そんな勇気はない。


この時、桜と同じ様に儚く散ることを知っていたら...

僕は手を伸ばせたのだろうか?


次に会えた時には、木の匂いのする箱の中で...桜ではないたくさんの花畑にキミは寝ていた。

とても幸せそうに。  



またこの季節が来る。

ようやく僕はその花に手を振る。


「好きだったよ...さようなら。」



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