第4話 くらげの命
彼と海へ泳ぎに来た。
私は対して泳げないけど、いつものデートとは違ったのでドキドキした。
夏の暑い日差しが海に反射して、キラキラして眩しかった。
「くらげいるかな?」
「居たら怖いよ...刺されたら痛そう。」
「実は...」彼は海を見ながら話した。
「海が怖いんだ...海渡なんて名前なのに情けないんだけど。」
「どうして?」
「小さい時に海で溺れて...それからずっと怖くて泳げないんだ。」
「だから、水槽でふわふわと泳ぐくらげが羨ましかった。」
だから...くらげをずっと見ていたんだね。
「知らなかった。じゃあどうして来たの?」
「千波と来たら克服出来るかもって思ったんだ。」
「じゃあ、一緒に入ってみよっか?」
うん、と彼が頷いた時...
「きゃあ!助けて!!」
と女の人の叫び声がした。
「子供が溺れているの!助けて!」
と私達の方へ急いで走って来た。彼女はもう我を忘れているかの様に...泣き喚いている。
海の遠くで...小さな手が助けを求めてる。
ど、どうしよう?彼も私も泳げない...
誰かの助けを呼ばなきゃ!
「僕が助ける!」
と彼は怖いはずの海へと飛び込む!
「海渡くん?!」
その姿はまるで...いつか見た魚の様に美しかった。キレイな水飛沫を上げる。
美しい光景に目を奪われている内に...
その小さな子供は助けられ...
彼の姿は見えなくなった。
そう...あのくらげの様にふわふわ漂いながら...水の泡の様に溶けて消えた。
静かに...儚く...。
私は必死で彼を探す。
「海渡くんどこ?嫌だよ!どこにも行かないで...。」
私のたくさんの涙は海に溶けていく...
彼はどこへ行ってしまったの?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます