7-2
フカフカのソファに座り少しばかりの安心感があるこの部屋
そう、校長室だ。
ここの編入試験を受けて合格したから校長先生が直々にご挨拶をしたとのこと。
「編入試験の問題は少しばかり難しくしたはずなのですが、お嬢さんには簡単だったのかな?」
「えっと...ありがとうございます。」
私立中学の編入試験はニコがたまに出してた意地悪問題に告示していたから容易に答えられたし、拍子抜けだ。
まあそのおかげでこの学校に入学できたから感謝しておくか。
「それにしても篠原さんも素敵に成長しましたね。」
「校長先生もお変わりないようで安心しました。
今日からうちの子をお願いします。」
目の前にいる2代目校長先生は御年72歳
十数年前、ポチがお世話になった校長先生だという
すごいなこの人...長年この学校で幾多の生徒を見守り続けてきたのだろうか?
「...して篠原さん。もしかしてこの子は」
「はい、この子も私と同じ義獣人です。」
その瞬間、私は驚きその場から飛び上がるようにソファから立ち上がった。
なぜ私達の最大の秘密をそんな簡単に明かしてしまうのか理解できなかったからついポチを睨んでしまった。
「ポチ...なんで...っ!」
「落ち着け、学校関係者でこのことを知っているのは校長先生だけだ。
校長先生は司令官と昔から交流があるから私も学校に通えた。それはお前も例外ではないぞ。」
校長先生と秋元のおじさんが?
どうにも信じられないな、でも二人の目は嘘をついてる目じゃない。
私は一先ず落ち着いてソファに座り直した。
「そちらの事情は十分理解していますよ。私も全力でサポートしますから安心して楽しい学校生活を送ってくださいね。
それに篠原さんもよく知っているあの先生もいますので」
そんなことを言われてしまうと私はうなずくしかできない。
ポチが一瞬顔をしかめていたから不思議であるが、それ以外は問題ない。
校長先生にここで待ってほしいと言われ、校長室に私とポチの二人が残り少し話すことにした。
「校長先生はいいとして、他の教員がなんていうかわからない。」
「いや、普通の生徒として受け入れるだろ。
教師というのは親からの苦情が一番キライだからな。」
それって言っていいものなのだろうか。
いくら校長先生がいないからって言っていいことじゃあないと思う。
「随分とまあ痛いところをついてくるねえ篠原ぁ...。」
ドアを開けて入ってくる人の気配に一瞬体をこわばらせると、隣りにいたポチはとても嫌そうな顔をして扉の前に立つ人物を見ていた。
「げっ...アリス先生まだこの学校にいたんですね。」
「げっ...じゃあないだろ。相変わらずのようで逆に安心したよ。」
ガッチリとした体つきでスーツを着崩すその人はアリス先生なんて名前が一番に合わない顔立ちをしていた。
それにしても結構顔立ちの整った人だな、こういった人は女性にキャーキャー言われるタイプだな。
「それに、アリス先生と呼ぶのはお前ぐらいだよ。
あの犬っころが子供連れてくる日が来るなんて思わなかったな。」
「私が犬なら、こいつはトカゲですよ。」
楽しそうに話をする二人の状況についていけなくて困惑していると、校長先生が戻ってきた。
「いつの間に来ていたのですね。ではご紹介します。五十嵐さん...こちらが先程言った篠原さんもよく知っている人です。
有栖川先生、自己紹介をお願いします。」
校長先生はやっぱり優しく笑ってアリス先生とか言われていた人を私の前に連れてきた。
「君が校長先生の言っていた編入生か。はじめまして、#有栖川 楽兎(ありすがわ がくと)です。
篠原の元担任で今日から君が通う一年二組の担任だよ。」
ガタイの良い高身長で私を怖がらせないように膝をついて挨拶をしてくる有栖川先生を見て、私も自己紹介をすることにした。
「五十嵐 灯です...。
有栖川...先生は、義獣人を知っているんですか?」
少し怖かったけど、今後どういった行動をするかを見極めるためにも私は質問をした。
怖かった。でもやらないとだめだ。
すると先生は目を丸くした。でもすぐにさっきの優しい笑みに戻ったんだ。
「確かに義獣人についてはよく知ってる。
俺も今年で40になるけど、篠原も俺の親父も義獣人だったから。
まあ親父はすぐに無くなったけどな。だからこそ生徒として出会った篠原や君のような子をほっとけない
教師として生徒の望む正しい道を歩ませたいんだ。」
言葉だけじゃない、思いが瞳に反映されているのがよくわかって私の目は潤んだ。
ニコと似ているようで違う本当の先生ってこんな感じなんだ。
「これからも、よろしくおねがいします。」
ペコリとお辞儀をして敬意を示せば先生も頭を下げて来た。
クラスメートにすらあってないけどまた少しだけ安心した。
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