6-2

なんだろう…この緊張感


寒いわけでもないのに勝手に手が震えてきた


落ち着け私、まだ冬は来てないぞ


それどころか今は真夏だ



「うーん…ここだと話しずらいか


じゃあさっきリューコちゃんがいた鉄棒の所に行こうか!」


「えっ…?あっ、うん」



とにかく自分の心を落ち着かせようとしていたら突然話しかけられて驚いた


だけどすぐに理解してわかったことを伝えると萌奈さんは私の手を優しくとって鉄棒の場所に向かった。


高さの違う鉄棒が3つ並ぶ中で彼女は1番高い位置にある鉄棒の上に一度のジャンプで立った。


すごいな…落ちた時とかの恐怖はないのだろうか



「…怖くないんですか?


そんな不安定な棒一本の上に立つって」


「ん~そんなに怖いことなのかな?


私…というか空飛ぶ義獣人達は皆高いところは平気だよ


皆落ちて地面に叩きつけられないようにする術を身につけてるから落ちる可能性をあまり考えてないんだよね


リューコちゃんは高いところ苦手なの?」



私は高いところが苦手なのだろうか?


もし落ちたことを考えてしまうということは苦手なのかもしれない


地面に叩きつけられない術を知らないから


仮に空を飛ぶための翼がなければ落ちたら自分の翼を使おうなんて発送は無いはずだ。



「私は…わからないです


今まで自分の羽を使って飛んでみようとか考えることはなかったから


でも、最近になって自分は飛べるから落ちても大丈夫なんだって思うようになりました」


「ふふっ…ようやく何も考えることなく飛べるようになったんだね!」



今思ったのだが、この人の性格変わりすぎなのでは?


さっきまで可愛らしい女性の話し方だったのにそれがなくなって、逆にそれが話しやすい


もうずっと今みたいな話し方にならないのだろうか



「あっそうだ…ここに来たのはリューコちゃんについて話すためだった!」



そういえばそうだった


一体萌奈さんは何を話すつもりなのだろうか…わからない





「リューコちゃんってさ…大人とお話をするのって苦手でしょ?


本当に慣れた人としか話そうとしない感じがする」





驚いた


どうやら彼女には人をしっかりと見る才能があるみたいで、自信満々に言ってきたから動揺して後退りをした。


確かに…大人は怖い


特になんの力も持たないただの人間は特に怖い


同じ種族のはずなのに平気で私達を化け物に改造して無駄に命を散らすのだから恐ろしい


特別部隊の人達は自室も近いし一日の大半を一緒に過ごすから慣れている


例え皆が大人であっても…



「…はい


まだ人間の大人とか、慣れてない人には自分から話そうとは思わなくて」


「そっか~やっぱりリューコちゃんも人間が怖いよね


ここにいる義獣人は大体そうだから恥ずかしいなんて考えなくていいからね


実際私もここの施設に慣れるまでだいぶ時間がかかったからね」



それを聞いて私は驚いて萌奈さんの顔を見た


こんなに明るい萌奈さんでも人間を恐れるなんてことがあったのか



「実験体だった頃の私は去年、義獣人隊に保護されたのよ


そこでの私は同じ義獣人隊にすら怯えて部屋に引きこもっていたんだよね」



明るく笑う反面、寂しそうに施設寮を見つめる彼女があまりにも儚げで胸が締め付けられる。


夕焼けのオレンジ色から紺色に変わっていく空が背景になって彼女の青い髪の毛が溶けていくようだった。



「人付き合いって大人になっても難しい課題なんだよね…普段は人畜無害な女性を演じているけど、玲音隊長にはお見通しだったみたいですぐにバレちゃった


さすがは私が保護された時からそばにいてくれた先輩だよね」



言い忘れてたけど玲音隊長は私よりも先にここに入った先輩なんだよ~…と嬉しそうに話す萌奈さんを見ていると緊張が解れてきて相槌を打って返事をすることが出来てきた。


それを素早く理解した萌奈さんはにっこりと笑ってたんだ



「少しずつ人の接し方は慣れればいいよ


まあリューコちゃんの年なら学校に行けば友達も増えるし今のリューコちゃんにしか出来ないことがあるよ」



学校…か

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