5-7
ポチと一緒に部屋に戻っている途中、私はずっと口を閉じたままだった。
すごく気まずい雰囲気もそうだけどさっきからポチの顔が険しい
一点を集中して見るような顔でそれをずっとキープしている
そのせいか、いつも挨拶をしてくれる人達が全員ビビって全力で目を逸らしているのがよーくわかるよ
さすがに彼らが可哀想だ
「ポチ…私、ポチの気を損ねるようなこと言ったかな?」
「…どうしてそう思ったの?」
少しだけ声が冷たい気がする…すごく胸が苦しくてなにかがつっかえているような感じがして気持ち悪い
だけど言わないと…想いを伝えたいのなら言葉にしないとダメだ
「だって…さっきからポチはつらそうだよ
何がポチをそうさせてるの?」
質問を質問で返されたから質問で返してやった
それがポチにとっては戸惑ってしまう要因になってしまったのだろうか…言いづらそうな表情になった
「…いや、無理して言わなくていいよ
ポチはいつも仕事で忙しいから疲れているだけなんだと思う
わざわざライスの話を聞くために特殊部隊の部屋から衛生科のエリアまで遠いところを頑張って来たんだからさ…」
それは地図を見て気づいたこと、私達が普段活動している特殊部隊のオフィスは衛生科のエリアとかなり距離がある
そこをポチは徒歩で移動したんだ…しかも私を探しながら
「ポチ…私を見つけてくれてありがとうね」
私はなんてことをしたんだ
ごめんなリューコ
お前よりも大人になんなきゃいけないのにさ
私の方がよっぽどガキだ
ポケットの中で震える手をぎゅっと握り拳を作るとすぐに緩めた。
落ち着け…リューコもライスも研究に関する話をしただけだ
それなのになぜこんなにも苛立っているんだ?
いや、わかっているだろ私
勝手に過去と結びつけている私は本当に大人なのか疑ってしまうよ
過去にとらわれている間にもリューコは…娘は成長している
それなのに私と来たら…
「…ごめんなリューコ
勝手に苛立ってた…もう苛立たないよ
お前が憧れる大人になるためにも…」
少しだけ心が穏やかになってそれを表に出すことにした
申し訳なさを混ぜ込んだその声と共に震えの止まった手で娘の頭を優しく撫でる
「今は…言えないけどさ
いつかお前に私の過去を教えるよ」
「…!
………待ってる」
そう言ってくれて助かったよ
さあ早く帰ろう
ありがとうね、灯
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